カウントダウンタイマー:いまこそ試したい、eコマースの「販売促進」手法

高級バッグブランドのピークデザイン(Peak Design)は4月第3週にセールを行った。ブラックフライデーを除けば同社では初の試みだ。現在の異常な状況を表すように、この割引には「奇妙なタイムセール(weird times sale)」という名前がつけられている。1週間前からはじまった告知サイトでは、カウントダウン表示とともに期間限定で20%から40%の割引が発表された。

これは細かい変化とはいえ、ECに携わる各社がとりつつある決定を反映したものだ。この2カ月で世界は激変した。ブランド各社は敬意と力強さを表現しながら、売り上げを伸ばす方法を見出そうと取り組んでいる。特別サイトで宣伝を行っているのはピークデザインだけではない。アルコール飲料配達サービスのソーシー(Saucey)や、専門性の高い食品を扱うグローベリー(Goldbelly)も、一部宣伝用に特別サイトを展開している。エージェンシーのシュアフット(Surefoot)の共同創業者、ローラ・スチュード氏は「ブランドは迅速に方針転換しなければならない」と語る。

鬱陶しいながら確かな心理効果

カウントダウンは鬱陶しい印象を与える一方で、確かな心理効果がある。これまでも長年にわたり、ホテルのウェブサイトが旅行者向けに「最後の空き部屋」と表示したり、バミューダ諸島の旅行パッケージを悩むまもなく決めさせたりといった場面で同様の手法が用いられてきた(いずれも悲しいことに現在では使われていないが)。

ブランドも、取引において精算時に制限時間を設けて、確実に販売に結びつけようとつとめてきた。そして各社はデジタルとの相性に応じた程度の違いはあれ、視覚にうったえるコンテンツを活用してきた。ブラックフライデーのセール時にカウントダウンを行う企業もあれば、毎週のように「本日限定セール」をひたすら送り続ける小売業者もある(古い企業に多い)。そして世界が不安に包まれ、消費者の行動が一気に変化したいま、カウントダウンタイマーは小さな機能ながら大きな影響をもたらす可能性を秘めている。

特にスチュード氏は、オンラインブランドがいかに新しいデジタルキャンペーンを求めているか目の当たりにしてきた。「多数のブランドと提携して、1日や2日でこういった体験を提供してきた」と、同氏は語る。現在、大半の企業は売上高の変化への対応とサプライチェーンの問題に追われている。そしてチームメンバーが減っていることも珍しくはない。

こうしたなかで、新しい販売キャンペーンを短期間で行えるだけの社内リソースは残されていない。スチュード氏は、これによって「間違いなくデジタルキャンペーンの決定に厚みは失われ、監視の目も行き届かなくなる」と指摘する。

即座に購入するいまの消費たち

ソーシーは、過去2年にわたり一部の宣伝にカウントダウンタイマーを用いてきたが、その効果が今年3月に入って特に大きくなっていることに気づいたという。創業者兼CEOのクリス・ボーン氏によれば、同社のコンバージョンはかつて平均14日から21日だったのが、3月には1日にまで短縮した。「はじめて購入する顧客が急激に増えた。2度目の顧客も同様だ」と、同氏は明かす。ソーシーの場合は30分のカウントダウンタイマーを表示していたが、これが即座に購入する傾向にあるいまの消費者にとって特に重要なツールとなったようだ。

コロナウイルスによる大きな変化のなかで、同社はキャンペーンの見直しに迫られた。「消費者の動向に合わせたより適切な対応が必要だった」と、ボーン氏は語る。さらに同社が送るメッセージの頻度も変化した。以前はカスタマーに送るメールは週に1通程度だったが、需要が劇的な変化を見せるなかで、その頻度を増やし、新製品の宣伝を行っている。

ソーシーはCRMを手早くアップデートし、米国において振り子のように変化を続ける消費者動向にあわせたキャンペーンを運用している。「消費者の動向に完全に一致するように、あらゆるメッセージを変えた」と、同氏は語る。一番大きな変化は、消費者は外出しないという点だ。そしてオンラインでの購入が増えていることにあわせた販促や広告も重要になる。たとえば火曜日の夜にNetflixで何を見ているかを尋ねるようなメールは意味がない。いまや毎日のように見られているからだ。

「状況に合わせた判断をすべきだ」

現在の市場には、こうした即応性のある思考と対応力が求められている。ピークデザインのマーケティングディレクター、アダム・サラセノ氏は「状況に合わせた判断をすべきだ」と述べている。ブランド各社は現在の騒乱に巻き込まれすぎていると、同氏は指摘する。「COVID-19に関するメールをいまだに受け取る」と、同氏は語る。「だが、たとえば当社のニュースレターに登録している方は、当社のバックパックが欲しいから登録しているのだ」。

これを指針として、同氏とシュアフットは1週間の「奇妙なタイムセール」をローンチした。このカウントダウンにはメッセージが込められている。現在の状態はおかしなものであり、このタイムセールのようにいつまでも続くわけではないということを示しているのだ。この試みはうまくいった。「当社でもっとも販売に結びついたキャンペーンだ」と、サラセノ氏は語る。

同氏は成功の要因に、カウントダウンタイマーや全体的なユーザー体験を挙げている。「ほかにも企業を全面に押し出さずに販売を行ったことも効果的だった」と、同氏は語る。いずれにせよ、現在の厳しい情勢下でブランドは生き残りをかけてあらゆる手を尽くしている。

以前、同社が迫られた難しい決定について語ったサラセノ氏だが、これによって同社に「かなりのキャッシュフローが生まれ、少しだけ余裕のある状態になった」という。だが、当然ながらこの優位性もいつまでも続くわけではない。

Cale Guthrie Weissman(原文 / 訳:SI Japan)