豪華な著名人たちを講師陣に揃えたオンライン学習サービスのマスタークラス(Masterclass)が、ここ2カ月ほどAmazonのDSPを使って、オーディエンスセグメントのテストを実施している。短尺の動画広告や、バナー広告やスポンサー広告など、さまざまな出稿形式をテストしているという。
豪華な著名人たちを講師陣に揃えたオンライン学習サービスのマスタークラス(Masterclass)が、ここ2カ月ほどAmazonと連携し、Amazonのデマンドサイドプラットフォーム(以下、DSP)を使ってオーディエンスセグメントのテストを実施している。短尺の動画広告や、バナー広告やスポンサー広告など、さまざまな出稿形式をテストしているという。
マスタークラス自体はAmazonで製品を販売していないが、ある種のカメラや写真撮影用の照明器具など、特定の趣味を持つ人しか購入しない機材のAmazonでの購入履歴をもとにターゲットを絞り込むことで、その趣味について教えるクラスの潜在的なオーディエンスを見つけやすくなる。
「いまはまだテストの段階だ」と、マスタークラスのCMO、デイヴィッド・シュライバー氏はAmazonとの取り組みについて語る。「ここで結果が出れば、そのまま消費者にリーチするための投資を増やしはじめられるだろうと考えている」。
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これまでの結果は良好
これまでのところ、結果は「良好」だという。だが「新しいメディアチャネルをテストするブランドはどこもそうだと思うが、クリエイティブ面で学ぶべき点が多い」と、シュライバー氏は付け加えた。同社はロン・ハワードが教える監督術、ゴードン・ラムゼイが教える料理、そして最新作である、アナ・ウィンターが教えるボスになる方法など、65人の著名講師陣が教えるクラスを、比較的長い予告動画を使ってアピールしていることで知られるブランドだ。そうした動画は、Facebook、インスタグラム(Instagram)、YouTubeといったソーシャルメディアチャネルで高い成果を上げているという。
「だが、3分間の動画はAmazon環境内での売り込みには向かない」と、シュライバー氏はいう。「効果の高いクリエイティブがどんなものかが、徐々に分かってきた。答えを知りたい人たちのためにヒントを伝えよう。当たり前だと思うかもしれないが、ソーシャルメディア以外のデジタルプラットフォームで人々にリーチする最適な方法は、メッセージを明確かつ簡潔に、最初の数秒間で手短に伝えることだ」。
Amazonの広告プラットフォームが成熟を遂げつつあるなか、マスタークラスやアリー・ファイナンシャル(Ally Financial)といった、Amazonで製品を販売していない企業からの広告購入への関心も高まってきている。その理由は、Amazonが持つデータとオーディエンスのターゲティング機能にある。そうメールで解説してくれたのは、デジタルエージェンシー、メトリック・デジタル(Metric Digital)でCEOを務めるケヴィン・サイモンソン氏だ。同氏はさらに以下のように続けた。「誰かが何かを学ぼうと本を買えば、AmazonのDSPを使い、Amazonの内外でその人たちに向けて広告を打てる。我々も一部の(eコマース)クライアントのために、そうした施策を行なっている」。
「GoogleとFacebookで狙えるのと同じオーディエンスに、Amazonネットワークの内外でリーチできる」と、D2Cデジタルコマースエージェンシー、デジタル・オペレティブ(Digital Operative)の共同創業者でCEOのBJクック氏は、メールでそのように述べる。「Amazonは、膨大なデータ、ロイヤルティの高い顧客、オーディエンスセグメントにターゲティングできる能力を持っており、Amazonで製品を販売していない『非エンデミック(参考)』なブランドも、今後はその甘い蜜を活用するようになるだろう」。
メディア支出の内訳
マーケティングリサーチ会社のカンター(Kantar)によれば、マスタークラスの2018年度メディア支出は190万ドル(約2億円)と、2017年度の200万ドル(約2.2億円)からわずかに減少しているという。また、2019年度前半6カ月間のメディア支出が13万7000ドル(約1490万円)であることもわかっている。マスタークラスが予算の大部分をどのソーシャルメディアに費やしているかは測定されていない。
マスタークラスのメディア予算は、Amazon以外の部分はほぼ、Facebook、インスタグラム(Instagram)、Google、YouTubeといったソーシャルメディアチャネルに集中的に投下されている。シュライバー氏は、実際の予算感や、各チャネルにどう予算を割り当てているかについては公表できないとした。「65人の講師それぞれに大きく異なるマーケティングプランを取っている」と、同氏はいう。「おそらく今年の年末までには何らかの集計が出て、それぞれの数字も検討できると思われる。だがそれも、天気の平均を説明するようなものにしかならないだろう。いまはテスト段階で、(どこに予算を使うのかは)非常に急速に進化している」。
この9月、新たに講師陣に加わったアナ・ウィンターによる最新クラスをスタートさせるにあたっては、Facebook、インスタグラム、LinkedIn(リンクトイン)、Twitter、YouTubeといったソーシャルチャネルでのキャンペーンへの支出は通常と同程度に抑えられた。ただ、全体的なメディア予算は倍増させ、先述のソーシャルプラットフォームに加え、屋外広告やデジタルチャネルへの出稿も行っている。ヴォーグ(Vogue)、ティーン・ヴォーグ(Teen Vogue)、グラマー(Glamour)、ヴァニティ・フェア(Vanity Fair)、ボナペティ(Bon Appetit)、ニューヨーカー(The New Yorker)、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)のデジタル版、紙版、ポッドキャストのデイリー(The Daily)といったメディアへの出稿には、メディアエージェンシー、エクスバラス(Exverus)の協力を得たという(通常、マスタークラスはインハウスでソーシャルチャネルの購入を行なっている)。
ポッドキャストへの出稿も
総じてマスタークラスは、一般的なFacebook、YouTube、インスタグラム、Google以外のメディア購入テストも実施している。Amazonでのテスト以外に、ポッドキャストへの広告出稿テストも行なっており、今後その分野での出稿をさらに増やしていく可能性が高いと、シュライバー氏は語る。ポッドキャストを聴きながら学びたい人たちと、マスタークラスの動画で講師から学びたい人たちとのあいだには、オーディエンスとして共通する部分があるという。
「現在、私たちがテストしているチャネルの多くは、特別な関心事のあるオーディエンスを見つけるための非アルゴリズム的な方法を持っているところだ」と、シュライバー氏は語り、Amazonやポッドキャスト、ある種の趣味を持っている人たちを対象としたWebサイトなどから、特定の関心事を持つ人たちにリーチできていると言い添えた。「Facebookプラットフォームでのアプローチとは、少し異なるやり方だ」。
Kristina Monllos (原文 / 訳:ガリレオ)
Photo by Masterclass