オンラインストアは、いまやアディダスにとってもっとも重要な店舗だ。オンラインでの売上高は、この9カ月間で前年同期比76%の増加。また、2020年には、オンラインでの売上高が40億ユーロ(約5143億円)に達すると、同社は予測している。なお、現時点での第3四半期の総売上は、58億ユーロ(約7457億円)だ。【※本記事は、一般読者の方にもnoteにて個別販売中(480円)です!】
アディダス(Adidas)が、ブランド認知度を高める手段としてだけでなく、販売チャネルとしてeコマースに力を入れている。そして、実際に成果を上げているようだ。
オンラインストアは、いまやアディダスにとってもっとも重要な店舗だと、CEOのカスパー・ローステッド氏は、11月7日に行った第3四半期決算発表の場で語った。アディダスのオンラインでの売上高は、この9カ月間で前年同期比76%の増加(昨年は前年同期比で57%の増加だった)。また、2020年には、オンラインでの売上高が40億ユーロ(約5143億円)に達すると、同社は予測している。すべての販売チャネルを合わせた第3四半期の売上高は、58億ユーロ(約7457億円)だった。
この1年間に、アディダスは327の店舗を閉鎖する一方で、9億ユーロ(約1157億円)の資金をデジタル事業の強化に注ぎ込んだ。2年前には、四半期ごと、または月ごとにしかeコマースサイトの売上データを確認していなかったが、いまでは毎日データを監視しているという。
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大きくシフトする販売戦略
これは戦略の変化だ。かつてのアディダスは、どちらかといえばeコマースを認知度を高める手段とみなしており、売上を拡大する場とは考えていなかった。
同社はチャネルごとの収益を発表していないが、これまでの結果が示しているように、eコマースでの販売が短期間で増えた時期ほど、利益率が拡大している。「当社はeコマースに取り組む人材に重点的に投資しており、データの活用度をより一層高めて、動的価格設定などの機能を実現することに注力している」と、ローステッド氏は話す。
アディダスは現在、検索広告、アフィリエイト広告、動画広告、ディスプレイ広告などのオンライン広告を利用して自社サイトのトラフィックを拡大するため、その分野に詳しいエキスパートで構成された専任のチームを作ろうとしている。このチームの責任者は、広告担当グローバルメディアディレクターと協力しながら、すべてのデジタル広告支出をとりまとめ、最適なマーケティングミックスを導き出す仕事に取り組むことになる。これには、GoogleやFacebookといったプラットフォームでの広告パフォーマンスを調べたり、ほかのチャネルとの競合状況を調べたりする仕事も含まれる。
アディダスが求める人材
アディダスでは、eコマースの人材に対する需要が高い。LinkedIn(リンクトイン)の求人広告によれば、同社はマーケティングチームで256名の人材を募集しているが、そのうちの30人がeコマース担当者だ。
また、アディダスは新しいロイヤルティプログラムの担当者も募集している。このプログラムは2017年に米国で開始したもので、今後はほかの国にも拡大する予定だ。メンバーシッププログラムのナイキプラス(NikePlus)と同じように、アディダスはこのプログラムの参加者に対して、製品情報をいち早く知らせたり、限定商品を提供したり、スペシャルイベントに招待したりする。今後は、店頭プロモーション、サイトでのプロモーション、およびショッピングアプリと歩調を合わせる形で、このプログラムを実施する計画だ。
「四半期によっては、売上が拡大することもあれば減少することもあるだろう。『話題を呼ぶ製品の投入』をどれくらいの頻度で、どれくらいの規模で手がけるかによって変わってくる」と、ローステッド氏はいう。「我々はひとつの製品を3年以上販売しており、製品の大衆化を進めながら、その人気を維持しようとしているのだ」。
「話題を呼ぶ」製品の意味
「話題を呼ぶ」製品の投入は、短期間でオンライン販売を拡大するために欠かせないものだ。たとえば、ミュージシャンのカニエ・ウェスト氏とのコラボレーションコレクション「YEEZY BOOST(イージーブースト)」を投入したときは、売上が前四半期から15%以上急増した。
この製品の投入により、「数百万人」がアディダスのサイトを訪問し、期待以上の売上が得られたと、ローステッド氏は振り返る。
とはいえ、顧客への直接的な働きかけを強める動きは、小売店との関係に疑問をもたらすことにもなる。アディダス、ナイキ(Nike)、アンダーアーマー(Under Armour)といったブランドがeコマースを重要視するようになって以来、フットロッカー(Foot Locker)やスポーツダイレクト(SportsDirect)などの小売業者は、自社で販売している製品のメーカーがライバルになってしまっている。
小売業者に役立つ取り組み
しかし、アディダスは小売業者にとって役立つ取り組みを計画している。ローステッド氏によれば、自社のプラットフォームから得られたインサイトを活用して、小売パートナーを支援する予定だという。また、ホールセールマーケティングの予算の一部をオンラインに移行するチームを、既存のパートナーと共同で作っているところだと、ローステッド氏は語った。
Seb Joseph(原文 / 訳:ガリレオ)