ラグジュアリーファッションブランドとストリートウェアのコラボレーションは、アジアで(ラグジュアリーファッションブランドが)Z世代との関連性を保つための人気の方法として登場した。同様の手法が、ビューティ分野でも台頭している。
ラグジュアリーファッションブランドとストリートウェアのコラボレーションは、アジアで(ラグジュアリーファッションブランドが)Z世代との関連性を保つための人気の方法として登場した。同様の手法が、ビューティ分野でも台頭している。
その最新の例が、ストリートウェアブランドのオフホワイト(Off-White)と、ラグジュアリーKビューティブランドのアモーレパシフィック(Amorepacific)のコラボレーションだ。両ブランドは2021年3月1日、中国と日本において彼らのコラボ製品、「プロテクションボックス(Protection Box)」セットをローンチした。これは同年2月1日に韓国でデビューしている。世界中で、ストリートウェア業界とビューティ業界のコラボレーションが広まっているなか、特にアジアでストリートウェアに夢中になっている、若い世代を中心とした市場で大きなチャンスが生まれている。
オフホワイトのロゴが入ったマスク、スキンケアのためのシートマスク、UV保護効果のエアクッション・ファンデーション、リップクリームが入った特製ボックスのセットになっており、中国ではアリババ(阿里巴巴)のTモールグローバル(天猫国際)を通じて、日本ではオンラインマーケットプレイスのQoo10(キューテン)で販売された。韓国ではアモーレパシフィックのウェブサイト、アモーレパシフィックモール(Amorepacific Mall)、ネイバーショッピング(Naver Shopping)、そしてブランド本社のアモーレストア(Amore Store)やアモーレソンス(Amore Seongsu)、アモーレクァンギョ(Amore Gwanggyo)などの主要な旗艦店で販売。店内では、韓国の伝統的なゲーム「ユンノリ」のオフホワイト独自デザインも販売されていた。価格は約171.70ドル(約1万8670円)で、ランダムな抽選システムを通じて購入の権利が割り当てられた。
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アジアに特化したコラボ
シュプリーム(Supreme)とパット・マクグラス(Pat McGrath)のような、ほかの大手のビューティとストリートウェアのコラボレーションとは異なり、オフホワイトとアモーレパシフィックのコラボレーションはアジアに特化している。「韓国、中国、日本以外の市場に展開する予定はない」と、アモーレパシフィックの広報担当者は述べた。
コンサルティング会社ラブブランド(Labbrand)のイン・ムー氏は、「おそらく、このコラボレーションは製品セレクションの時点ですでに、主にアジア市場をターゲットにしていることを示している。シートマスクとクッション(ファンデ)はアジアの消費者のあいだでより人気がある」と述べた。また、韓国ではよく見られるクッションコンパクトは、アメリカではあまり見られないが、アジアでは女性の「ステータスシンボル」として扱われていると付け加えた。「彼らはこの製品を家で使うだけでなく、家の外で人と会う場面でもタッチアップや会話のきっかけとして使うだろう」。
洗練されたブランディング、アンチエイジング製品、ラグジュアリーな価格帯で知られるアモーレパシフィックは、今回のコラボレーションによってZ世代への訴求力を拡大することに注力していると、ブランドの広報担当者は述べた。同ブランドのことを「これまであまり知らなかった人にも知ってもらうきっかけになる」ことを望んでいるという。ムー氏によると、ラグジュアリービューティ市場の「アジアにおける主要なターゲット消費者は、北米や欧州の(ラグジュアリービューティ市場の)人口構成と比べると少なくとも5歳から10歳若い」という。
ストリートウェアの存在
デジタルマーケティングエージェンシーであるデジタルラグジュアリーグループ(Digital Luxury Group)のパートナー、アイリス・チャン氏は「中国ではストリートウェアの存在は非常に大きく、消費者は伝統的なラグジュアリーブランドから購入する場合でも、よりストリートスタイルの商品に引き寄せられている」と語る。「これは、Z世代とミレニアル世代のあいだで切望されている、個人的かつより表現力のある消費行動を反映している」。
「ストリートウェアブランドとのコラボレーションは、今の市場ではまだ非常に『熱い』ものだ」とムー氏は述べた。特に中国では、2021年の旧正月にディオール(Dior)とショーン・ステューシー(Shawn Stüssy)が行ったカプセルコレクションや、オフホワイトによるラグジュアリーブランドとのコラボレーションなど、ラグジュアリーファッションブランドのコラボレーションが人気を集めている。オフホワイトが初めて中国市場で正式にローンチしたのは、2020年の12月、WeChat(微信)とのコラボレーションによってだった。
多くのオフホワイトのコラボレーションの成功例と同様に、アモーレパシフィックのセットは再販プラットフォーム上で高値で販売されている。メンズファッションを主に扱うリセールサイトのグレイルド(Grailed)では、500ドル(約5万4418円)の値がついていた。
これは初めての事例ではない
これは中国で成功した初めてのストリートスタイルのビューティコラボレーションではない。シュプリームとパットマクグラスの口紅は中国では発売されていないが、「(ラッパーの)トラビス・スコットとバイレード(Byredo)によるスペースレイジ(Space Rage)香水は、好評だった」と、チャン氏は述べた。「同ブランドは北京と上海でイベントを開催し、買い物客は事前にオンラインで商品を購入するために行列番号を取得しなければならなかった。バイレードが中国ですでに非常に強いブランド価値を持ち、消費者に非常に人気のあるブランドであることも助けとなった」。
オフホワイト以外にも、国際的なストリートウェアブランドのなかで「シュプリーム、ステューシー、パレス(Palace)はアジアでは定評があり人気が高い」とムー氏は述べている。彼女はまた、韓国のブランド「アデル・エラー(Ader Error)」や中国のブランド「リ・ニン(Li-Ning)」などアジアのストリートウェアブランドが人気があると指摘した。フィアオブゴッド(Fear of God)のディフュージョン・ラインであるエッセンシャルズ(Essentials)もまた、中国のZ世代でヒットしている。
同社初のストリートウェアコラボレーションに続いて、アモーレパシフィックは将来のパートナーシップに目を向けている。
「最近のブランド間のコラボレーションのトレンドを見ると、業界間の取り組みに関しては、さらに多様性が高まることが予想される」と、アモーレパシフィックの広報担当者は述べた。「我々はビューティカンパニーとして、ファッション業界以外のライフスタイルブランドとのコラボレーションも視野に入れている。それによって我々の価値観を世に伝える、より効果的なチャンネルを得ることができるだろう」。
[原文:Off-White’s Amorepacific collab spotlights beauty’s streetwear opportunity in Asia]
LIZ FLORA(翻訳:塚本 紺、編集:長田真)