世界大手の採掘会社で構成されるダイヤモンド・プロデューサーズ・アソシエーション(DPA)は、インスタグラムでマーケティングに取り組むにあたり、ポップカルチャーを前面に出している。愛や約束はいまも重要だが、ダイヤの購入意欲を直接高めてくれるものではないからだ。ミレニアル世代向けにポップ感を全面に押し出している。
ミレニアル世代は厄介な存在だ。銀行やシリアルからゴルフやビールにいたるまで、さまざまな業界を急速に衰退させている。そして、「消滅リスト」に入っている次なる業界が、宝飾(ジュエリー)業界だ。宝飾業界はこの流れに抗うためにある場所へと向かわざるを得なかった。インスタグラムだ。
世界大手の採掘会社で構成されているダイヤモンド・プロデューサーズ・アソシエーション(Diamond Producers Association:以下、DPA)は、インスタグラムでマーケティングに取り組むにあたり、昔ながらの婚約指輪や結婚指輪ではなく、ポップカルチャーを前面に出すことを要としている。「愛や約束はいまも重要だ。だが我々は、さらに視野を広げて、ダイヤモンドの購入意欲を高めてくれるものを探している」と、DPAで最高マーケティング責任者(CMO)を務めるデボラ・マルクワルト氏はいう。DPAがポップカルチャーを戦略に採り入れているのはそのためだ。
ポップなインスタ戦略
ある日、マルクワルト氏はテイラー・スウィフトが『ルック・ワット・ユー・メイド・ミー・ドゥー(Look What You Made Me Do)』という新曲のミュージックビデオをリリースしたとき、スウィフトがたくさんのジュエリーを身にまとい、高価な宝石であふれた「バスタブに浸かっている」シーンがあることを小学生の娘から教えてもらった。
Advertisement
マルクワルト氏はそのシーンを詳しく調べた結果、スウィフトはハリウッドの人間が好むニール・レーン(Neil Lane)の本物のジュエリー製品で埋め尽くされたバスタブに浸かっていたことがわかった。DPAはすぐにこのシーンのスクリーンショットを撮影し、写真をインスタグラムに投稿。現在、この投稿はDPAにとってインスタグラムで最大のヒットとなっており、1000件近い「いいね!」やコメントを獲得している。
#FBF:@TaylorSwiftの新しいミュージックビデオ#LookWhatYouMadeMeDoでバスタブ一杯にあふれている宝石は、@NeilLaneJewelryの本物のジュエリー製品です。てっきり、彼女が入っていたバスタブの中身が本物のダイヤとは思っていなかった。#FancyFriday #RealisRare (via @elleusa)
「我々は、ダイヤモンド業界に末永く持続可能な未来をもたらす必要がある。それには、40歳以下の消費者をもう一度取り込むことが必要だ。この10年間、この世代は基本的に、ダイヤモンドのマーケティングの対象になっていなかった」と、マルクワルト氏は語っている。ミレニアル世代は、DPAにとって振り向かせるべき重要なグループだ。
「身近な存在」にすること
彼らはいま、婚約や結婚でダイヤモンドを買う可能性が高いライフステージにいる。ほかの宝石や合成ダイヤモンドがダイヤモンドの売上を少し奪いつつあるが、若い消費者はダイヤモンド購入者の41%を占めている。
このような認識の下、DPAは2016年後半に、この10年ではじめてとなる業界キャンペーンをスタートした。「リアル・イズ・レア(Real is Rare:本物は滅多にない)」と名付けられたこのキャンペーンの目的は、ダイヤモンドを婚約指輪としてだけでなく、最新のジュエリー製品としてミレニアル世代の生活に浸透させることだ。
インスタグラムは、この取り組みで大きな役割を果たしている。1月以降、DPAのインスタグラムアカウントは、フォロワーが54%増えて8000人となり、「いいね!」とコメントの数も87%増加した。
DPAの狙いは、ダイヤモンドを「身近な存在」に感じてもらうことだ。そのため、スウィフトの写真のほかにも、オオカミの形をしたダイヤモンドの指輪で人気の写真や、ダイヤがちりばめられているメガネをかけたファッション界の重鎮のひとり、アイリス・アプフェル氏の写真などを取り上げている。「インスタグラムの面白いところは、世界で指折りの美しい製品を載せれば、人々がその製品を話題にしたがるところだ」と、マルクワルト氏は話す。「我々はインスタグラムを、そのような熱狂を活用する手段と考えている」。
ハネムーンに欠かせないもの:おしゃれなフラットシューズ、大きめのトートバッグ、そしてもちろん、ダイヤモンド。#WeddingWednesday #RealisRare (?via @ohreverie ft. @ringconcierge ?)
コストを掛けない運用
DPA自体はダイヤモンドを売っているわけではないため、コンバージョンを気にする必要はない。彼らがダイヤモンドをフィーチャーしたポップカルチャーを見つけ、取り上げることにフォーカスできるのはそのためだ。たとえば、ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のシーズン最終作が放映された日には、ドラゴンの頭が付いたダイヤモンドのネックレスの写真を、#khaleesiや#gotといったハッシュタグを付けて投稿している。
また、ソーシャルメディアの「ダイヤモンドスター」と、マルクワルト氏が呼ぶ人たちを活用。たとえば、「ジュエリーインサイダー」として、インスタグラムで約20万人のフォロワーを抱えているカテリーナ・ペレス氏などインフルエンサーの写真や、ロサンゼルスに本拠を置くセレブ御用達のジュエリーブランド、シェイファインジュエリー(Shay Fine Jewelr)の写真を繰り返し投稿している。
DPAはソーシャルにプロモート予算をつぎ込めないため、オーガニックな手法に頼る必要がある。指輪をした手でパスポートを握っている写真や、ダイヤモンドのタトゥーをしている人の写真など、「すでに出回っている」ダイヤモンドの写真を必要に応じて再利用しているのはそのためだ。マルクワルト氏は、ポップカルチャー的な写真や非常にユニークな写真を重視している。「このようなシーンには具体的なテーマがある。すでに話題になっているテーマを利用する必要がある」と同氏は語った。
Shareen Pathak(原文 / 訳:ガリレオ)