より多くの買い物客がオンラインショッピングにシフトする中、老舗百貨店JCペニーも歩調を合わせるようにオンライン販売に力を入れている。JCペニーは2022年、広告戦略についてSNS、検索エンジン、インフルエンサーを介したデジタル環境で買い物客を引き付ける形にシフトしている。
より多くの買い物客がオンラインショッピングにシフトする中、老舗百貨店JCペニー(J.C. Penney)も歩調を合わせるようにオンライン販売に力を入れている。JCペニーは2022年、広告戦略についてSNS、検索エンジン、インフルエンサーを介したデジタル環境で買い物客を引き付ける形にシフトしている。
「これによって、より柔軟に、消費者の購買のタイミングに合わせることができる」と、JCペニーのマーケティング担当バイスプレジデントのビル・カニンガム氏は述べる。「メディア購入に縛られることが少なくなり、デジタル環境でメッセージを様々な場所から発信できるので、顧客が買い物をする気持ちになったときに、確実に対応できるようになった」。
カニンガム氏によると、この1年でJCペニーはデジタルマーケティングをより積極的に推進するようになり、広告予算の少なくとも4分の3を、従来型のテレビや新聞の広告ではなく、パフォーマンスマーケティング、ペイド・サーチ(広告連動型検索)、SNS、インフルエンサー、レコメンドエンジン等の購買支援に特化した比較検索サービスに費やしている(ただしカニンガム氏は、JCペニーのメディア支出に関しては、それ以上の詳細は明らかにしなかった)。
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実際、JCペニーはブラックフライデーのショッピング(毎年どんどん早く始まるようになっている)を前に、メディアミックスから新聞広告を完全に排除した。カニンガム氏は、「私たちはこれについては非常によく検討し、新聞広告にエネルギーを注ぐよりも、デジタル広告にエネルギーと努力を注ぐことにフォーカスした」と述べ、「これまでは販売シーズンのピーク時に、新聞広告をメインに据えるのが当社の戦略だったのだが」と付け加えた。
このJCペニーの取り組みは、オンラインショッピングの客の一部を取り込み、2020年のパンデミック発生以来、EC販売の売上が着実に上昇している世界のトレンドに追いつくための試みである。調査会社イーマーケター(eMarketer)によると、2023年までに世界の小売売上に占めるEC販売の割合は、2022年の19.7%から20%になると予測されている。
イーマーケターの報告によれば、2019年には世界の小売売上におけるEC販売が占める割合は14%だった。ただ、JCペニーがEC販売に力点をシフトするには様々な問題を抱えている。特に、同社は売上で競合他社に遅れをとっている。2020年にパンデミックが始まって間もなく経営破綻し、多額の負債を抱え続けているからだ(同社が業績回復に向けて、2019年にどのような取り組みをしたかについては、こちらを参照)。
カニンガム氏は、通常より早くホリデーマーケティングを開始し、またデジタル戦略に注力した結果、買い物客の関心とエンゲージメントも早まったと話す(売上やウェブサイトの指標など、それ以上の詳細は明らかにしなかった)。
マーケティング・アナリティクス企業のカンター(Kantar)によると、2022年1月から6月にかけて、JCペニーは広告に1億6100万ドル(約225億4000万円)以上を費やしており、前年の同時期に費やした約1億1300万ドル(約158億3000万円)よりも増加している。一方でアナリティクス企業のパスマティクス(Pathmatics)によると、JCペニーは2022年これまでに少なくとも3500万ドル(約49億円)をデジタルメディアに費やしており、これは2021年に費やした約3800万ドル(約53億2000万円)をわずかに下回る数字だった(カンターはパスマティクスのようにSNSへの支出を追跡していない)。
JCペニーのような老舗ブランドにとって、デジタルファースト戦略は、オンラインコミュニティを利用するだけでなく、独自のコミュニティを構築し、ブランドの認知度と関連性を高めることができると、マーケティングエージェンシーのプロバーブ(Proverb)のブランド戦略家、レベッカ・シソン氏は言う。
「デジタルをメインに据える戦略は、様々な成長段階にあるブランドにとって有効な手段となる。収集した有益なデータがあれば、十分に強力なツールとなり、これによってどのブランドもデジタルへの投資を価値あるものにすることができる」とシソン氏はeメールで述べる。
例えばターゲット(Target)は、ユーザー生成コンテンツを通じてオーディエンスを集め、YouTubeの「ターゲット・ショップ・ウィズ・ミー(Target Shop with Me)」のようなコンテンツの力を活用することで成功してきたと、シソン氏は付け加えていた。
少なくとも2021年から、JCペニーは買い物客との直接的なコミュニケーションを図るため、オンラインチャネルへの投資を着実に増やしてきた、とカニンガム氏は話す。さらに、2023年にJCペニーはブランド認知を高めて、買い物客を購買とエンゲージメントに向かわせ、年内にオンラインショピングにおいて最も多くの注目が集まるようにしたいと、カニンガム氏は抱負を語る。
「私たちは、1対1の形でお客様にアプローチし、最も心に響くアイテム、商品、メッセージをお客様へ向けて送ることに真剣に取り組んでいる」と同氏は付け加えた。
[原文:No more newspaper ads: Why J.C. Penney is going digital-first this holiday season]
(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)