Clubhouse(クラブハウス)がユーザーのあいだで人気を集めているが、このオーディオベースのプラットフォームをソーシャルメディア戦略の中心に据えているブランドは、まだいない。ワクチンの接種が進み、消費者の習慣が変化する可能性もあるなかで、ブランドはこのチャネルを実験的な空間とみなしている。
Clubhouse(クラブハウス)がユーザーのあいだで人気を集めているが、このオーディオベースのプラットフォームを、ソーシャルメディア戦略の中心に据えているブランドはまだいない。ワクチンの接種が進み、消費者の習慣が変化する可能性があるなか、ブランドはこのチャネルを実験的な空間とみなしている。
それでも、オーディオベースのプラットフォームは勢いを増している。実際、そのほとんどがまだベータ段階であるにもかかわらず、多くのブランドが参入を試みている。また、既存のプラットフォーマーたちも、オーディオコンテンツへの参入を図っているようだ。たとえばTwitterは2021年初頭、ClubhouseのTwitter版ともいえる、スペース(Spaces)を立ち上げた。加えてFacebookも、同様の製品をまもなく発表する予定だと、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)が報じている。
オーディエンスが集まる場所には、製品について知ってもらうチャンスがある。カーパーツ・ドットコム(CarParts.com)やレストラン・ブランズ・インターナショナル(Restaurant Brands International:バーガーキング[Burger King]、ポップアイズ[Popeyes]、ティム・ホートンズ[Tim Hortons]の持ち株会社)といったブランドは、Clubhouseのアプリを利用して投資家会議を開催している。また、ドッグフードブランドのペディグリー(Pedigree)は最近、クリエイティブエージェンシーのBBDOニューヨーク(BBDO New York)の協力を得て、ペットの里親探しを目的としたClubhouseのルームを設けている。
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加えて、「ブランドのマスコットがディスカッションに登場するといった斬新なユースケースや、スポンサードチャットを使った実験的な取り組が見られている」と、デロイト・デジタル(Deloitte Digital)で、シカゴスタジオの戦略責任者を務めるネイサン・ヤング氏は述べる。「ただし、ブランドが大規模な施策を実施する例はまだない」。
まだ「様子見」のブランドたち
ドッグフードブランドのペディグリーは2021年3月、Clubhouseで3人のモデレーターと提携して、ペットを持つことが心身の健康にもたらす影響について、ディスカッションイベントを開催。イベントのあいだ、オーディエンスは犬のプロフィール画像をクリックすると詳しい情報を確認可能なほか、里親に応募することもできた。ペディグリーの親会社、マース・ペットケア(Mars Petcare)で、マーケティング担当バイスプレジデントを務めるクレイグ・ニーリー氏によれば、このキャンペーンのおかげで、4匹の犬が安住の地を手に入れたという。
しかしいまのところ、ペディグリーはこのキャンペーンを再び実施する計画はない。
「我々は、Clubhouseがどのように成長していくのか楽しみにしている。また、ペットのホームレスをなくすというミッションを果たすために、今後も新たな機会やプラットフォームを模索していくつもりだ」と、ニーリー氏は語った。
アクティブウェアブランドのセット・アクティブ(Set Active)も、2021年はじめにブランドの舞台裏を消費者に紹介するClubhouseのルームを開設している。ルームで取り上げたられたトピックは、インフルエンサーマーケティングの裏話や新商品開発のクリエイティブプロセスなど、多岐にわたっていた。
セット・アクティブにとってClubhouseは、コミュニティとつながるための新たな手段なのだという。創設者のリンジー・カーター氏は、顧客から寄せられる質問に「きわめて正直かつ誠実な態度」で応えることで、彼らと親密に交流できたと振り返る。同社はこれまでに合計5、6回のイベントを開催し、成果も上がっているように思われた。しかし、コミュニティからのフィードバックを受けてこの取り組みを終了している。
Clubhouseはリアルタイムの音声プラットフォームであり、会話の録音を保存することができない。カーター氏はそう指摘したうえで、「スケジュールが合わない人に対する訴求力は、それほど大きいとはいえないため、この取り組みから手を引くことにした」と説明した。同社はその代わりに、ブランデッドポッドキャストの制作や、最大3人のゲストを招待できるインスタグラム(Instagram)の新機能「ライブルーム(Live Rooms)の研究に舵を切っている。
「インスタグラムやTwitterのような大規模なソーシャルメディアは、インフラが整備されている」とカーター氏はいう。「インフラがあるおかげで、トレンドに合わせていつでも方針転換できる」。
ニーズは存在する
Clubhouseは登場からまだ日が浅く、明確な収益化戦略や広告活用の手段がない。ヤング氏は、新しいソーシャルプラットフォームについてクライアントにアドバイスするとき、いつも様子を見るよう勧めているが、Clubhouseに関してもやはり同じだ。
ヤング氏は、TwitterのスペースがAndroidとiOSの両方をサポートしている点や、ベータサービスの終了後には、1億9200万人のアクティブユーザー全員に開放される点を指摘する。「私なら、マルチデバイスに対応し、幅広い基盤を持つプラットフォームの方に大きな力を注ぐ」。
また、新しいプラットフォームを試そうとするブランドには、データの誠実な取り扱いと、倫理的な視点が求められる。ワンダーマン・トンプソン(Wunderman Thompson)でデータ分析・技術部門のディレクターを務めるティファニー・ジョンソン氏は、「特に大切なのは、データ収集やスポンサードコンテンツに関する透明性の担保だ」と述べる。そんな同氏がマーケターに送るアドバイスは、ヤング氏と共通する点が多い。
「まずは、そのプラットフォームがどのようなものなのか、しっかり感じ取って欲しい。よくできたアプリとはいえ、大抵は修正すべき点がある」とジョンソン氏は指摘した。
ライブ音声プラットフォームがブームになったのは、パンデミックのさなかにあって、消費者が人とのつながりを求めていたからだと、ヤング氏は話す。パンデミックの収束後もそのような状況が続く可能性は十分にある。
「スクリーン疲れが広がるなかで、ライブオーディオはますます時代に適した存在になっている」とヤング氏は述べたうえで、次のように語った。「このようなコンテンツを好むオーディエンスは確実に存在する。問題は『ブランドが効果的に関わるにはどうすればいいのか』ということだ」。
[原文:No major plays yet: Why Clubhouse has yet to become part of the brand social playbook]
KIMEKO MCCOY(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:村上莞)