ナイキ (Nike)の第2四半期決算報告で、経営陣はサプライチェーンの継続的な問題が同社の短期的な売上増加の障害となっていることを認めた。しかし、フットウェアとアパレルの小売業者である同社は2022年、NFTの助けを借りて、消費者のロイヤルティとデジタル販売を拡大することを視野に入れている。
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ナイキ(Nike)の第2四半期決算報告で、経営陣はサプライチェーンの継続的な問題が同社の短期的な売上増加の障害となっていることを認めた。しかし、フットウェアとアパレルの小売業者である同社は2022年、NFTの助けを借りて、消費者のロイヤルティとデジタル販売を拡大することを視野に入れている。
9月に行われた同社の第1四半期決算説明会で、経営陣は、サプライチェーンの問題から、業績予想を引き下げ、通期の売上高は1桁中盤の成長にとどまると予測した。あらゆるブランドの障害となっていた港湾の混雑に加え、ナイキの生産の多くはベトナムで行われており、現地では年間を通したコロナウイルスの流行波の関係で各工場が操業維持と、十分な作業員の雇用をめぐる問題を抱えていたためだ。
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ダイレクトビジネスは堅調
サプライチェーンのボトルネックが続くなかで、ナイキは物理的な商品以外のものに成長の余地を見いだそうとしている。同社はデジタルビジネスへの投資に注力しており、もっとも新しいものではデジタルスタジオのRTFKT(「アーティファクト」と読む)の買収を行っている。同社はドロップにおいてアーティストたちとのコラボレーションを行っており、その多くは物理的な商品とNFTの両方の販売が含まれている。エグゼクティブバイスプレジデントで最高財務責任者を務めるマット・フレンド氏は、ナイキの第2四半期の決算発表と同時に発行された声明で次のように述べている。「当社は短期的な供給難を克服するにあたって、長期的な財務見通しを改善するため、コンシューマー・ダイレクト・アクセラレーション(Consumer Direct Acceleration)戦略の実行に集中していく」。
ナイキの収益は第2四半期に前年比で1%増加し、114億ドル(約1兆3100億円)になった。しかしナイキのプレスリリースによれば、在庫量は「継続的なサプライチェーンの停止によるリードタイムの延長によって輸送中の在庫が増えたため」、前年比で7%増加した。
最新の決算発表でナイキは、ダイレクトビジネスの収益がウェブサイトと自社店舗のもの両方を含めて前年比で9%増加したことを、同社が依然として需要のあるブランドであることを示す兆候だと言及し、サプライチェーンの問題にもかかわらずさらに売上を伸ばすことが可能だとした。ナイキのダイレクトビジネスによる第2四半期の売上は合計で47億ドル(約5410億円)だった。また、同四半期における利益は13億ドル(約1500億円)で、前年比で7%増加した。
「ナイキは強く切望されているブランドだ」と、ジェーン・ハリ・アンド・アソシエイツ(Jane Hali & Associates)の小売調査アナリストを務めるジェシカ・ラミレス氏は述べている。同氏は、ナイキが商品ドロップにより人々を盛り上げ、希少性をあおることで知られているブランドであるとしながらも、同社がある意味「現時点ではサプライチェーンの問題により偶然に供給が限られている商品」により需要を生み出しているとも語っている。
RTFKT買収がナイキにもたらすもの
この数年間、ナイキはデジタルビジネスに多くの投資を行い、より多くのユーザーにナイキ+アプリ(Nike+app)や、スニーカードロップアプリをダウンロードしてもらおうと試みてきた。
この目標に向け、ナイキは2021年12月初めにRTFKTを買収したことを発表した。ただし同社はこのスタジオを使用して何を行おうとしているのか明確に公表せず、ただ「RTFKTブランドに投資する」計画があるとしか明かしていない。RTFKTは仮想商品ドロップとNFTに特化しており、これらは本質的にはデジタル芸術作品で、ブロックチェーンで取引可能なものだ。
「この買収は、ナイキのデジタル変革を加速し、スポーツ、クリエイティビティ、ゲーム、カルチャーが交差するアスリートやクリエイターにサービスを提供できるようにするための新たな手順だ」と、ナイキのプレジデント兼CEOを務めるジョン・ドナホー氏は買収の発表時の声明で述べている。
デジタル戦略におけるNFTの価値
デジタル商品代理店のワーク・アンド・カンパニー(Work and Co)のパートナーであるオリバー・ドーレ氏は、RTFKTがさまざまな形でナイキのビジネスに適合可能だとしている。
「私は、ブロックチェーンテクノロジーを活用して真正性や出所を確認できることは、ナイキのブランドを推進するためますます重要な部分になっていくと考える」とドーレ氏は述べている。同氏の代理店はこれまで、ナイキに加えて、IKEAやEtsyなどの大手ブランドとも仕事をしてきた。同氏はまた、ナイキはRTFKTを使用してロイヤルティプログラムのメンバー向けにNFT関連のドロップを行えるとも付け加えた。競合のアディダス(Adidas)は2021年12月17日、ボアードエイプヨットクラブ(Bored Ape Yacht Club)、ジーマネー(gmoney)、パンクスコミック(Punks Comics)と提携し、NFTプロジェクトを実施した。アディダスが協力したNFTグループの保有者やそのほかの関係者に最初のアクセス権が与えられ、わずか数時間で2200万ドル(約25億3000万円)相当のNFTを売り上げた。
メイシーズ(Macy’s)などほかの小売業者は自社独自のNFTのリリースに参入しており、ナイキはNFTの分野で企業を獲得した最初の大手小売業者となる。これは、NFTと仮想商品のドロップが、小売業者の今後のデジタル戦略を進めるために、より重要な部分となっていく可能性を示しているとも考えられる。
ドーレ氏は次のように述べている。「これまで私は、NFTの分野、特にコレクティブルに関するものはコミュニティや機会に関して、どちらかというとニッチなものだと考えていた。ナイキがRTFTKを買収したことは、この分野に多くの可能性があることの証明だと私は考える」。
[原文:Nike is leaning on digital goods as supply chain challenges slow growth]
Anna Hensel(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)