テレビドラマ「クローズ(Claws)」の監修を手掛けるネイルアーティストのグレイシー・J氏は、事業をパンデミックに適応させてきた。美容業界ではまだそれほど一般的ではない、NFT(非代替性トークン:ブロックチェーンを活用して価値を担保するデジタル作品)にも取り組んでいる。
テレビドラマ「クローズ(Claws)」の監修を手掛けるネイルアーティストのグレイシー・J氏は、事業をパンデミックに適応させてきた。ほかのトップネイルアーティストのように、自身のネイルデザインを家庭で楽しめるネイルチップの販売を始めたのだ。それ以外にも、美容業界ではまだそれほど一般的ではない、NFT(非代替性トークン:ブロックチェーンを活用して価値を担保するデジタル作品)にも取り組んでいる。
NFTで作品を販売するビジュアルアーティストやブランド、著名人の数は増えてきた。さまざまなアーティストがデジタル作品を数百万ドルで販売するように、彼女もNFTプラットフォーム「ラリブル(Rarible)」で作品をミンティング(ブロックチェーンに登録してデジタル資産に変えること[鋳造])した。
購入者は、ネイルアートが施された手のGIFアニメのほか、限定版ネイルチップも入手できる。NFTは今まさにブームであり、ファッション業界はすでに参入しているが、美容業界で早々から取り組むクリエイターのひとりが、グレイシー・Jなのだ。
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「この場所はとても刺激的で魅力的。特にクリエイターにとって、作品が永遠に生き続けること、そして作品が売れれば販売額の一部を永続的に受け取れることにはワクワクする」と、同氏は語る。
インフルエンサーにも伝播
エミリー・ラタコウスキー(モデル)やカーラ・デルヴィーニュ(モデル/女優)などのセレブリティがNFTで作品を販売するようになり、インフルエンサーたちもこれに続こうと熱い視線を送っている。インフルエンサーマーケティング企業のG&Bは最近、同社に登録しているトラベルインスタグラマーとeスポーツインフルエンサーのためにNFTを作り、その収益を寄付するようにした。G&Bの創業者兼CEOであるカイル・ジェルメセス氏は、同社に多く登録する美容系インフルエンサーを含む「我々のインフルエンサーの全員が、NFTで作品を販売したり、ミンティングすることを望んでいる」と語る。
「我々のところの人材、つまりインフルエンサーたちが投稿するたびに行っているのは、デジタルアートの一種だ」と同氏。NFTによって「デジタル作品の真正さを、多かれ少なかれ証明することができる」という。
さらに「インフルエンサーもそうでない人も、作品をマーケットに出品し、ファンや誰からでも入札してもらうことができる。そして購入者はその作品の所有権を、取引しない限りは永遠に所有することができるのだ」。
香水ブランドもNFTに参加
NFTには、香水ブランドも参加している。ジョーダン・カツァロフ氏(ルック・ラボ創設者)は、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)を使って、デジタル版の香水「サイバー・オー・ド・パルファム(Cyber Eau De Parfum)」を制作。触れるとラベルが点灯するコレクターズエディションボトルに収めた香水を、NFTに10点出品している。現在の最高入札額は0.4WETH(ラリブルは仮想通貨で運用)で、これは原稿執筆時点で1618ドル(約17万6000円)に相当する。通常版のボトルに入った香水は、今週から500点を同社直販サイトにて298ドル(約3万2400円)で発売予定だ。
ヘンケルのビューティーケア部門を経て、2020年夏にルック・ラボ(Look Labs)を立ち上げたカツァロフ氏は設立当時、NFTのことを念頭に置いてはいなかったというが「テクノロジーには常に目を配ってきた」。2020年末にNFTハッカソンに参加し、特別版のデジタルフレグランスを発売することを決めた。
フレグランスのNFT化を「実験」と表現する同氏だが、NFTは今後ビューティーの領域でさまざまな用途に活用できると考えている。「美容関連のサプライチェーンがあれば、材料の調達をNFTで認証できる」。NFTは取引において膨大なエネルギーを消費するため、サステナビリティは大きな課題だ。同氏は、エネルギー使用量が少ないブロックチェーンの技術「レイヤー2(セカンドレイヤー)」を現在検討している。
NFTバージョンの香水の購買動機を、同氏は「映画『ブレードランナー』のような体験に、コレクションできる要素が加わったようなもの」と説明する。
「物理的な世界とデジタルの世界に存在し、その両方で所有できるもの」に対する需要もあるのだと同氏は語る。
[原文:NFTs make their way to beauty]
LIZ FLORA(翻訳:田崎亮子/編集:長田真)