話題のデジタル資産「NFT」がファッションの世界にも入ってきた。ブランドはこの新しいトレンドに夢中になっているが、一般的に暗号通貨は環境コストが高いものであり、NFTはその負担に「貢献」している。サステナビリティを目標のひとつに掲げているブランドがNFTを活用すれば、偽善者のように見えるリスクがある。
話題のデジタル資産「NFT」がファッションの世界にも入ってきた。
当初は仮想通貨業界で人気のニッチなアイデアだったが、Clubhouseでの会話で多く話題にされて広く知られるようになったこともあり、この「代替不可能」なデジタル資産形態は音楽やアート、さらにはファストフードの世界でも急速に注目を集めている。現在、ファッションブランド各社はNFTブームに乗りたいと躍起になっている。
確かにNFTはファッションブランドに利益をもたらす可能性があるが、かなりのコストがかかることも事実だ。一般的に、暗号通貨は環境コストが高いものであり、NFTはその負担に「貢献」している。今の時代性を象徴するような魅力で人々を惹きつける一方で、サステナビリティを目標のひとつに掲げているブランドがNFTを活用すれば、偽善者のように見えるリスクがある。
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環境負荷の大きい暗号通貨
暗号通貨は、ブロックチェーンを構成する各部を継続的に検証するために、毎秒大量の計算を行うコンピュータによって「マイニング(採掘)」される。これらの計算は、新しいトークンの作成を改ざんしにくくするために、意図的に大量の電力消費が必要となっているのだ。ビットコイン(Bitcoin)のマイニングだけでも、1年間でアルゼンチンの国全体よりも多くのエネルギーを消費している。
ほとんどの場合、NFTはイーサリアム(Ethereum)やビットコインなどの暗号通貨を使って売買されている。NFTを批判する人々が説明しているように、その環境負荷は膨大だ。
しかし、ファッション業界におけるNFTの人気はますます高まっている。決済プラットフォームであるアフターペイ(Afterpay)のCMOジェフ・シーリー氏は、ファッション業界がNFTの後を追い続けることは避けられないと考えていると述べた。
「(ファッション業界がNFTを取り入れる可能性について)実現は保証する」とシーリー氏は言った。「私たちはすでに、特にスニーカーやストリートウェアといった分野など、至るところでそれを目にしている。スニーカーカルチャーはNFTのような超限定的なものを推進している。私たちのような企業にとっては、カルチャーが向かっている方向を常に把握することが仕事であり、今後も流行に乗って成長していくと確信している」。
避けられないNFTの台頭
NFTのコンセプト自体に懐疑的な人々でさえ、NFTの普及が避けられないことを認めている。
スニーカーのデザイナーで、ステープル・デザイン(Staple Design)の創業者であるジェフ・ステープル氏は、「私にとっては、(NFTの台頭は)ほとんど悲しいことだ」と語る。「私はアナログ派だ。額縁入りのアートとビニールレコードが大好きだ。すべてをバーチャル化したくはない。しかし、物事は確かにその方向に向かっており、NFTはその大きな部分を占めている」
グッチ(Gucci)、LVMH、チャンピオン(Champion)などの企業は、すでにNFTをリリースしているか、将来リリースする計画を表明している。その一方で皮肉なことに、これらの企業はすべて、サステナビリティに関するコミットメントを公に発表している。
グッチの10年間のサステナビリティプランのように具体的な目標を掲げているところもあれば、持続可能なコレクションを通して取り組んでいるところもある。チャンピオンはアースデイを記念してサステナブルコレクション(sustainable collection)を開始している。
持続可能なNFTも存在するが
広く使用されているわけではないが、NFTをより環境コストの低い方法で活用する方法もある。ヴァージ(The Verge)によると、NBAのNFTマーケットであるトップショット(Top Shot)では、ブロックチェーン認証の代替的な形態を利用しており、ユーザーは暗号通貨を(分散型ではなく)集中型ネットワークに接続する。これは、イーサリアムやビットコインで採用されている、電力を大量に消費するプルーフ・オブ・ワーク(proof of work)プロセスとは対照的に、プルーフ・オブ・ステーク(proof of stake)と呼ばれる。
後者は前者のプロセスよりも二酸化炭素排出量ははるかに少ないが、報道によるとNFTの大部分はプルーフ・オブ・ワークのイーサリアム・ブロックチェーンの一部だという。
3月にデジタルアートを6900万ドル(約75億円)で販売したビープル氏をはじめ、NFTの世界には、NFTをより持続可能なものにすることを支持する人々もいる。しかし、今のところNFTの環境負荷は大きく存在しており、ブランドたちはその環境負荷をどう正当化するのかについて、ほとんど沈黙している。
[原文:NFTs are the next fashion craze, but their environmental impact looms large]
DANNY PARISI(翻訳:塚本 紺、編集:分島 翔平)