デジタル動画のコモディティ化は、さまざまな新しい文化を生んだ。ユーチューバーにFacebookライブ動画など、これまで存在していなかった慣習が、いまや立派な市民権を得ている。「ビデオリリース」は、そうした新しい文化の一種となるはずだ。このプロダクトを運用する株式会社NewsTVの代表取締役・杉浦健太氏に伺った。
デジタル動画のコモディティ化は、さまざまなニューカルチャーを生んだ。ユーチューバーにSnapchat(スナップチャット)の消える動画、そしてFacebookのライブ動画など、これまでに存在していなかった慣習が、いまや立派な市民権を得ている。
「ビデオリリース」は、そうした新しい文化の一種となるはずだ。マーケティング分野の動画制作/配信を手がける企業NewsTV(ニュースティービー)が提供するこのプロダクトは、動画広告花盛りとなった現代に一石を投じる。
「弊社のビデオリリースは基本的に、プレスリリースの素材、つまりテキストや画像を動画に焼き直したもの。そのため、スピーディに制作でき、当てたい人だけに当てることができます」と、同社代表取締役の杉浦健太氏は説明する。「また、制作費用は完全無料。配信費用をご希望の量だけ、クライアント様に請求することになります」。
動画広告との差別化を熱弁する杉浦氏の言葉には、PRマンとしての自負がにじみ出る。NewsTVのビデオリリースが目指す、PRビジネスの新しい仕組みについて話を聞いた。
――ビデオリリース、制作費用が無料とは思い切りましたね。
かつてネットバブルのころ、レクタングルバナーのクリエイティブ制作費が数十万円という時代がありました。いまからすると、考えられないことですよね。
動画制作がコモディティ化した現代、いずれそのクリエイティブ制作費もそうなります。だとしたら、いっそのこと、そこは無料にして、「当てたい人にしっかり当てる」というディストリビューションに価値をつけた方がいいと思ったのです。
――確かに……。では、ビデオリリースと動画広告の違いは?
デジタル化の時代、スピードも欠かせない要素です。動画広告を作るとしたら、何回もミーティングを重ねて、チェックも複数回必要ですよね。それをやっていたら、あっという間に数十日を費やしてしまいます。
ビデオリリースは、あくまでプレスリリースの動画版。そのため、素材はプレスリリースで利用されたテキストや画像がメインです。取材もしますが、それも記者会見や店舗内観といった、「すでにあるもの」が中心となります。PR会社が母体ですのでクライアント様のメッセージとユーザーが知りたいことを掛け合わせて作成する能力に優れていると考えています。
なので、製作工程はほんの数時間。事前にPR文脈なども理解したうえで制作しているので、クライアント様のチェックも最低限で済みます。たとえ、お昼に記者会見が開催されても、当日の夕方にはその様子をビデオリリースとして公開・配信することができます。
――それは合理的だ。配信面も異なるのでしょうか?
そうですね。その点でも、やはりプレスリリースの動画版としてポリシーをもっています。というのもまず、プレロールやミッドロール、エンドロールといった動画面に差し込むことはしません。それは、あくまでテレビCMの領域だからです。
テレビCMの存在は、もちろん否定はしませんし、テレビCMのクリエイティブはプレロールなど、ユーザーが観たい動画の前に挿入される形式でも非常にマッチする手法と考えております。ただ、我々のプロダクトはあくまでプレスリリースの動画版。だから、フィード枠やインリード枠など、あくまでネイティブな掲載面にこだわっています。ちなみに、弊社で作ったビデオリリースをプレロール配信したいというオーダーがあっても、オススメしていません。
――徹底していますね。もちろんターゲティングも?
はい、そこが特に重要です。記者発表会という手法は情報の最大化させるにはもっとも優れた施策なのですが、何百万円をかけて記者発表会を用意し、影響力の大きいテレビの情報番組やデジタルニュースメディアに取り上げられても、ちゃんとターゲットに当たっているという保証はありませんよね。
ですが、ビデオリリースは違います。プレスリリースを動画コンテンツにしたもので、広告枠に配信するため、きちんとターゲットに当てることができます。メッセージを届けたかった対象に、しっかり伝えられるというのは、従来のプレスリリースを凌駕する機能といってもいいでしょう。
企業が本当に伝えたいことは、プレスリリースや記者発表会の1時間のなかにあります。それをビデオリリースを通して、ユーザーに直接伝えられるんです。

「ビデオリリースはターゲットに確実に届けられる」と杉浦氏
――納得です。ちなみに社内体制は?
2015年8月の立ち上げ期は、2人だけでした。それが現在では、20人体制となっています。
この体制で、1日に制作しているのは平均して1〜2本、多い日は6本くらいあります。月に制作しているのは40〜50本。これまでに、累計500本ほどに携わらせていただきました。これだけの量をすべてワンストップで制作から配信・運用までこなしている動画会社は、とても珍しいと思います。
ちなみに、制作チームと運用チームは、クリエイティブのアナリティクスを一緒に行っています。その分析結果を新規案件に活かすようにしているんですね。
――まさにデータオリエンテッドな体制ですね。
ええ、独自の動画配信・分析基盤があるから実現していることで、配信後は1秒単位で視聴率を見ています。特に重視しているのは、ユーザーの離脱ポイント。このデータをもとに、好かれる要素・嫌われる要素が見えてくるからです。一番わかりやすい例でいえば、食べ物に関するネタは、冒頭にシズル感のある画をいくつか一定の秒数入れておくと、離脱率を抑えられるんですよね。
また、A/Bテストも実施。たとえば、冒頭の5秒だけ3パターン作成し、その3つを同時に配信して、一番視聴単価が高いもの、完全視聴率が良いものに運用を寄せていくというものです。もちろん、ディレクターの感性も欠かせない重要な要素でしょう。ですが、データも同じように重要だと思っています。
――データを活用するシーンは、さらに増えそうですね。
実は現在、人工知能を利用した分析を進めているところなんです。いずれ、運用だけでなく編集の自動化まで対応できるといいですよね。
というのもプロモーションビデオなどとは異なり、ビデオリリースにはある程度固まったフォーマットがあるのです。たとえば、記者発表やハウツー、イベント、インタビューなど。動画のどの情報が完全視聴率や、態度変容などに寄与しているか、早々に人工知能でまとめることが可能ではないかと睨んでいます。
――なるほど。ところで、特に印象的な成功事例は?
コナカ様が青山にオープンした、次世代オーダースーツブランド「DIFFERENCE」のプロモーションは、良い事例になりました。PRとオンラインの施策だけを行なうということで、東京都の20〜30代男性ビジネスマンだけに配信した結果、1カ月以上も予約が8割くらい埋まっている状況になったそう。
動画を観てきた来店者や、ビデオリリースを配信したメディアの記事を観てきた来店者が多かったようですね。現在計画されている、大阪と名古屋の新店舗でも、オープンの際には同じように動画を展開しています。青山店同様、各地域限定のターゲット配信を行っています。
――クライアントにとっても、費用対効果は良かったと?
はい、基本的には。ビデオリリースは認知や理解促進、マーケティングファネル上部を担うプロダクトだと思っています。KPIは何人に動画を観られたかです。1分半の完全視聴単価は50円から150円のあいだ。100万円の出稿をいただいたとき、1分半の動画が1万回観られたら、1回あたり100円というレポートを最後に提出します。それが、だいたい50円から150円のあいだに収まっている感じです。
クリックして実際に観られたかわからない1クリック50円のバナー広告と、1分半の動画を観せるのが同じだとしたら、「こっちがいいよね」と思うクライアント様はいます。あわせて、動画に何人接触できたかというデータも取れる。その辺を評価いただいています。あとは、実際にプロダクトの売上が向上したという事例も数多く出来ています。
――クライアントの費用の出どころはどこでしょう?
ビデオリリース活用に際して、クライアント様の費用の出どころは、PR費よりも広告・宣伝マーケティング費が多いです。さらに雑誌と同様の値段で、ご出稿いただくことが可能です。
雑誌広告もテレビCMも制作費がかかりますが、弊社は制作費が無料なので、トライアルしようと思うクライアント様は多いです。何十回とリピートしてくださっているクライアント様もいるほど。
――そうなんですね。ユーザーに受け入れられている実感は?
もちろん、あります。ビデオリリースというフォーマットが、コンテンツになっているとからです。企業が発信したい情報が、広告じゃないコンテンツに変わっている。
調査会社と協力し、数十案件ほど動画にタグを入れて配信したところ、動画が当たったユーザーと当たっていないユーザーにアンケートを取った結果、動画が当たっている人の認知率や購買意欲のポイントが、ほぼすべて2桁アップしています。これは、テレビCMでやると数ポイントしかアップしないといわれているため、ユーザーへの効果は出ています。コンテンツになっているから、そのような変化があるのではないかと思いますね。
――今後のNewsTVの目指す目標を教えてください。
PRは情報拡散させるレバレッジ力においてはもっとも優れているのですが、課題としてはパブリシティが限られて、当日と翌日だけヤマができて話題が継続しないこともあります。NewsTVのビデオリリースは2週間くらい配信するので、PRに掛けた予算を資産にして継続的な情報価値に変えていくことができます。ビデオリリースはコンテンツ商品なので、それを正確に届けていくことがNewsTVの使命です。
また、企業がなにか新商品やサービスを発表しようとするときに、やらなければいけないことがあります。プレスリリースを配信して、記者会見を用意して、キャンペーンページを制作して、SNSプロモーションをして、というようなことですね。そのなかのひとつに、ビデオリリースが入ってくる時代がすぐそこに来ています。まさにデジタルマーティングの慣習を変えられる力がある。それを実現することが当座の目標ですね。
▼杉浦健太
株式会社NewsTV 代表取締役
早稲田大学法学部卒。株式会社ベクトルに入社後、大手インターネット広告代理店の子会社の立ち上げを経て、2010年に独立。独立後は複数社の経営を行う。2014年にベクトルとマイクロアドの合弁会社ニューステクノロジーの立ち上げに伴い再度ベクトルにジョイン。2015年よりNewsTVの経営に携わる。
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Photo by 渡部幸和