新興の消費者ブランドが毎日出現しているように感じられる。そんななか、新しい企業やサイトが、拡大するD2C(Direct to Consumer:直販)市場を買い物客と創業者の両方が理解するのを支援することに機会を見出している。
新興の消費者ブランドが毎日出現しているように感じられるなか、新しい企業やサイトが、拡大するD2C(Direct to Consumer:直販)市場を買い物客と創業者の両方が理解するのを支援することに機会を見出している。
こうしたサイトの開設者によると、消費財産業の分野で働く者でも、単一カテゴリーにどれだけの製品が存在し、どれがいちばん良いのか理解するのは困難だという。これにはふたつの要因があげられる。そのひとつは、市場に非常に多くの新ブランドが存在することにある(たとえば、オンラインマットレス企業は現在、推定で175社存在する)。こうしたブランドの多くは似たり寄ったりでもある。レッド・アントラー(Red Antler)や、パターン(Pattern)に社名変更したジンレーン(Gin Lane)のような、同じブランディングエージェンシーを用いたところがあるからだ。
また、こうしたブランドの多くは、Facebookやインスタグラム(Instagram)の有料広告の組み合わせや、有料でブランドのレビューを行うインフルエンサーとのパートナーシップを通じて知名度を増しているので、企業が金を払って好意的なレビューを書かせているのではない製品レビューを見つけるのが困難な場合もある。
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インスタグラムでレビュー
目につく新サイトのひとつは、似つかわしいことにインスタグラムに誕生したレビュープラットフォームのシングテスティング(Thingtesting)だ。同サイトは、ロンドンを拠点とする新興企業専門の投資家、ジェニー・ギランダー氏が、コンシューマー分野での「大規模なアンバンドリング」と見なすことに取り組む目的で、4月に開設した。P&Gやユニリーバ(Unilever)のような複合企業は、消費財分野を依然として支配しているが、デオドラントやシャンプーのようなひとつ製品でスタートするブランドが増えており、消費者にとって選択肢となるブランドがこれまで以上に多くなっている。
シングテスティングのインスタグラムのアカウントは、4万人近くのフォロワーがおり、ギランダー氏が、主としてサマーソルト(Summersalt)やマジック・スプーン(Magic Spoon)、ハウス(Haus)のようなD2Cブランドの製品について、約350語のレビューを投稿している。
シングテスティングは、ギランダー氏のサイドプロジェクトとしてスタートしたが、同氏は最近、同プロジェクトを企業化するため、ブランドレス(Brandless)の共同創業者であるティナ・シャーキー氏などの投資家から30万ドル(約3200万円)の資金を調達した。ギランダー氏は、製品のレビューでブランドから金を受け取っておらず、アフィリエイト手数料も取っていない。その代わりに、シングテスティングの成長促進を目指して会員制モデルに目を向けている。
年間100ドルの会員制度も
ギランダー氏はまず、インスタグラム上にあるシングテスティングの「親しい友達(Close Friends)」リストのメンバーになるのに100ドル(約1万800円)の年間手数料を徴収しはじめた。このメンバーになると、限定コンテンツにアクセスできるようになる。現在、「親しい友達」リストへの登録待ちの会員が600人いる。ギランダー氏は、インスタグラムを超えてシングテスティングを拡大させる方法にも目を向けていると語る。
会員から寄せられる意見のなかでもっとも多いのは、ブランドが金を払っていないレビューをオンラインで見つけるのが難しいので、シングテスティングを気に入っているというものだと、ギランダー氏は述べている。シングテスティングのフォロワーは、レビューを行ってほしいブランドに関するインスタグラムの投稿のコメント欄で、ギランダー氏にタグを付けることが多いという。
マッセ(Masse)のような、この1年間にリリースされた一部の買い物アプリも、アプリでピアツーピアのレビューだけを可能にして、この問題に取り組もうとしている。
「まずはカミソリで、次がマットレスだった。いまは、圧倒的な量のブランドが存在する。皆にとって問題だ」と、ギランダー氏は述べ、消費者とベンチャー投資家の両方がシングテスティングの会員になっていることに言及した。
新CPGブランドをリスト化
製品マネージャーのジェシカ・シェフト-アソン氏とデザイナーのデビッド・マクギリブレイ氏も、同様の問題を抱えていた。特定のサブスクリプション製品やペットケアブランドがどのようなマーケティングを行っているのかを知りたがっている顧客の質問に答えるために、消費財(CPG)ブランドの手近なディレクターを求めていたのだ。
そこで、ふたりは3月に、CBD(カンナビジオール)やペットケア、食品といった分野の新しいCPGブランドをリスト化したCPGディレクトリ「Consumer Packaged Goods Directory」を立ち上げた。ユーザーは、ブランドをこのリストに追加するよう要請できる。調理器具のD2Cブランド、ポットラック(Potluck)の創業者でもあるシェフト-アソン氏によると、CPGディレクトリに3月以降に寄せられた提案は300件を超えたという。リストに掲載されるためにブランドが満たさなければならない基準は設定されていない。また、ブランドが金を払ってCPGディレクトリに追加されることはない。
CPGディレクトリはいまのところ、サイドプロジェクトにとどまっている。シェフト-アソン氏によると、マクギリブレイ氏とともに、ポッドキャストや求人情報掲示板の開設といった、CPGディレクトリをマネタイズする方法についていろいろ検討中だが、まだ何も決めていないという。
「この1、2年のあいだに成長してきたコミュニティがある。新しいブランドを発見するのにターゲット(Target)に行くとは限らず、オンラインやインスタグラムにアクセスする人たちのコミュニティだ」と、シェフト-アソン氏は語る。
D2Cだけが最良ではない
小売専門コンサルティング会社ルーズ・スレッド(Loose Threads)の創業者であるリッチー・シーゲル氏は、大半の消費者はD2C製品だけを求めて買い物するわけではないと指摘する。D2Cブランドだけに注力するサイトは、D2C製品かどうかに関係なく最良のマットレスやカミソリを誰かに教えてもらいたいと思っている買い物客を逃す恐れがあるという。
ギランダー氏も、こうした需要を目にしてきた。ごく最近レビューを行ったブランドのひとつに、アーバン・アウトフィッターズ(Urban Outfitters, Inc.)の新しいレンタルサービス、ヌーリー(Nuuly)があるが、これはレンタルサービスが台頭しているからだ。将来的にはふたつの製品のもっと「直接的な」比較を行うことも検討しているという。
「全体的に見ると、コンシューマー分野では、こうした大規模なアンバンドリングやバンドリングが起きている。これはかなり周期的なもので、どの業界でも起きている」と、ギランダー氏は指摘する。
Anna Hensel(原文 / 訳:ガリレオ)