消費者がデータプライバシーに関し、それほど不安はないとする業種では(たとえば銀行など)、当然データ収集やオプトインの同意率は平均を上回るはずだ。ところが、オムニコム・メディアグループ(Omnicom Media Group)のOMGシグナル(OMG Signal)部門によると、そうでもないらしい。
消費者がデータプライバシーに関し、それほど不安はないとする業種では(たとえば銀行など)、当然データ収集やオプトインの同意率は平均を上回るはずだ。ところが、オムニコム・メディアグループ(Omnicom Media Group)のOMGシグナル(OMG Signal)部門によると、そうでもないらしい。
OMGシグナルは、2021年前半に設立されたオムニコム・メディアグループの消費者調査部門。データプライバシーを巡る消費者の不安に関して、同年9月に集めた情報を、ソフトウェア企業のソースポイント(Sourcepoint)が2020年に実施した、消費者の同意と業種との関係を調べた調査と突き合わせたところ、先述の銀行・金融業を含めたいくつかの業種で数字の矛盾が判明した。つまり、一部の消費者が言っていることと、実際に行っていることとのあいだに乖離があったのだ。
北米オムニコム・メディアグループのチーフリサーチオフィサー、レネー・カサード氏は「データ収集への同意やオプトインに関しては、不安が障害となる可能性はあるが、不安がないだけでは同意を促すのに十分ではない」と話す。「個人データを渡すからには、それなりの価値の見返りが必要であり、消費者が何に価値を見いだすかはそのときの状況によって異なる」。
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調査の実施方法
OMGシグナルの調査は、Z世代からベビーブーム世代まで、白人、アフリカ系米国人、ヒスパニック系、アジア・太平洋諸島系を含め、米国の人口構成を反映した1000人強の回答者を対象にしている。なお、全体で63%がデータ共有に不安を示し、31%が強い不安があると回答した。年齢が高いほど、不安だという割合も高くなる。
データアクセスを許す相手別では、不安を感じるという回答の多い順から、一般的なWebサイト(79%)、大手テック企業(77%)、アプリ(76%)、政府機関(73%)、ブランド・製品(72%)、小売業者(71%)、銀行(59%)、ヘルスケア(57%)と並ぶ。
カサード氏が率いるチームはこの情報を、消費者の同意率の高い業種を調べたソースポイントの2020年の調査(当時OMGシグナルはまだ設立されていない)と比較。ソースポイントの調査では、3種の同意取得方法を対象としている。具体的には「ロック」方式(同意または同意拒否をしないと先に進めない画面)、「通知」方式(画面はロック方式と同じだが、Xをクリックして画面を閉じることができる)、「画面下の通知」方式(画面の下に、Xをクリックして閉じることのできるメッセージが表示される)。画面を閉じた場合はユーザーが明示的にデータ提供を選んでいるわけではないが、暗黙的に同意したとみなされる。
価値ある見返りの提供が必要
調査結果を見ると、ニュースなど権威あるサイトや信頼感のあるサイトの同意率が76%であった一方で、飲食関連ではさらに平均同意率が高く、86%に上った。これに対し、パーソナルファイナンスなどより専門的なコンテンツを提供するパブリッシャーでは同意率が24%と大幅に低い。カサード氏によれば、特にBIPOC(黒人・先住民・有色人種)の女性のあいだでの銀行、ヘルスケア分野に対する反応が予想を下回ったという。
つまり消費者は、自分の年金がどれだけになるのかという情報より、フラペチーノをもらえる方が簡単にデータを差し出す傾向がある、ということだ。カサード氏は、ここでも年齢が関係すると話す。若い世代より、ベビーブーム世代(24%)のほうが自分のデータを共有することに抵抗を感じているそうだ。
カサード氏は次のように語った。「マーケターは自分の業種に関連して、消費者が目に見える形でも見えない形でも何を期待しているのかを把握し、オプトインを促すに十分な価値を提供することが必要。銀行の場合、それは金融商品に関する情報提供ではなく、消費者が『金銭に対する自分の傾向』を自己評価するためのツールを提供し、お金との関係を築いていくための理解の手助けをする、ということになるかもしれない」。
消費者の期待や態度を分析し、それに合わせてより高い価値を提供するコンテンツやツールを用意することが、データプライバシーを巡る消費者の不安を理解することと同様に重要であり、最終的にはそれが同意を得る鍵となるだろう。
[原文:New research shows consumers’ concerns over data privacy sometimes clash with their actions]
MICHAEL BÜRGI(翻訳:SI Japan、編集:村上莞)