「 Amazonプライム が大変革をもたらした」:ロイヤルティプログラムを見直す小売業者

セフォラ(Sephora)の「ビューティー・インサイダー(Beauty Insider)」プログラムの会員は、毎月受信トレイに不定期に届く、値引きクーポンで割引を受けられる対象ではないことは承知している。だが、現地でのイベントや教室に参加したり、誕生日プレゼントをもらったり、オンラインコミュニティフォーラムでほかのビューティー・インサイダー会員とやりとりしたりすることができる。現在2500万人の会員がいるビューティー・インサイダーは、ロイヤルティ獲得への取り組みの一環であり、顧客のなかに長期的なロイヤルティを芽生えさせるために、ブランドはこうした取り組みを進めている。これは小売業者やブランドが、単なるリピーター以上のものに関心を向けている表れだ。小売業者やブランドは現在、顧客のマインドシェアを求めて競い合い、できるだけ多くのブランドアドボケイト(熱狂的支持者)を生み出そうとしている。

ロイヤルティ担当バイスプレジデントであるアレグラ・スタンレー氏によると、セフォラは常に、割引にとどまらず、顧客がブランドを体験できる複数の機会を提供することを目指してきたという。割引以上のブランドとのつながりに焦点を当てたロイヤルティへの取り組みを行っているのは、セフォラだけではない。リーボック(Reebok)は今月、会員限定イベントやトレーニングセッションへの参加、製品試用の機会によって顧客に報いる新しいロイヤルティプログラムを立ち上げた。フットロッカー(Foot Locker)は3月に、新製品へのアーリーアクセスを提供するAmazonプライム式のロイヤルティプログラムを立ち上げたばかりだ。ルルレモン(Lululemon)は、会費が必要なロイヤルティプログラムを拡大しつつある。このプログラムは、講座やキュレートされたイベント、自己啓発、eコマース注文での無料の速達配送を会員に提供している。

ロイヤルティは変化しつつある。小売業者は、価格で常に競争できるわけではない場合には特に、割引以上に、顧客の注意を引くための体験に焦点を合わせる必要がある、とブランドや小売業者と協働するデジタルエージェンシー、T3のロイヤルティ担当責任者であるショーン・エジソン氏は語る。顧客は、オンラインマーケットプレイスから手頃な価格の商品を購入できるので、確立されたブランドや小売業者は、トラフィック増を促進しようと体験に賭けている。顧客は最良の取引を求めてさまざまなブランド間を行き来するので、これは、顧客の揺れ動きを制限するのが狙いの防衛戦略だ。体験ベースのロイヤルティプログラムはまた、顧客により多くのデータをプロフィールに登録する動機付けとなり、ブランドが顧客体験をパーソナライズして、リピーターになる傾向があるそうした顧客をターゲットにするのに役立っている。

ブランドは2017年以降、着実に体験ベースのロイヤルティの時流に乗ってきた。ガートナーL2(Gartner L2)の最近のレポートによれば、体験型リワードと金銭型リワードの両方を提供するブランドの割合は、2017年には47%だったのに比べて、2018年には61%に達している。製品や販売へのアーリーアクセスを含む体験型リワードが、こうした増加を促していた、とレポートには書かれている。体験ベースのロイヤルティプログラムは最近増加しているが、Amazonプライムの成長によって生じた効果だとエジソン氏は強く主張する。

「Amazonプライムが、すべての小売業者に大変革をもたらした。小売実店舗にとってLPレコードのようなものだと思う。店舗内での体験と体験型リワードが強みであるのは、現金での出費が比較的少なく、割引や値下げに掛かる費用が少ないのも、ひとつの理由だ」と、エジソン氏は指摘する。

感情的なつながりを作る

体験ベースのリワードへの方向転換は、もっとも支出額が多いそうした顧客向けの取り組みの一環で、航空会社のステータスによるリワードを彷彿とさせる。たとえば、セフォラは昨年、ビューティー・インサイダーの「ルージュ(Rouge)」会員(1年に1000ドル以上支出した会員)と「VIB」会員(1年に350ドル以上支出した会員)向けのサービスをアップグレードした。リーボックの場合は、会員限定イベントやパーソナライズされたトレーニングプログラムが、顧客をブランドアドボケイトに転向させる手段となっている。ロイヤルティのランクがもっとも高いリワード会員は、限定版の製品やオンデマンドのトレーニング、無料のフィットネス認定書、イベントやコンサートすべてに参加できるパスの入手や利用が可能だ。

「目標は、主要なパートナーとともに、また、独自の社内イベントを通じて、素晴らしい瞬間を作ることになるだろう」と、デジタル担当責任者であるマット・ブロンダー氏は、リーボックが最近立ち上げたロイヤルティプログラム「アンロックド(Unlocked)」について語った。「一部は、最良の顧客のためのリワードとして招待のみになるだろう。つながるための非常に強力な方法になりうるし、フィットする暮らしやアクティブなライフスタイルのために消費者に報いる、とても強力な方法になりうる」。

ターゲットの顧客に合わせる

一部のブランドは、体験と割引ベースのリワードのバランスを維持して、顧客の需要についていこうとしている。たとえば、ノース・フェイス(The North Face)は、2012年から「VIPeak」会員リワードプログラムを実施してきた。VIPeakは当初、トレッキング旅行やレースへの参加、映画のチケットのような体験に焦点が当てられていた。だが、ノース・フェイスは、顧客がもっと頻繁に商品と引き換えられることを求めるという課題に直面した。その結果、2年前に、金銭的なリワードの証明書と体験ベースのリワードを含んだ混合システムに移行した。

「顧客の意見を通して、顧客がもっと頻繁にリワードを得たがっているのに気づき、特徴のある関わりと割引の恩恵を組み合わせたいと考えた。割引ではなく、購入行動とノース・フェイスに関連する活動の組み合わせに報いることが焦点だ」と、ノース・フェイスの顧客ロイヤルティ管理担当ディレクターのイアン・デューワー氏は語った。

割引はリピーターに対するインセンティブになりうるが、値下げが多すぎると、消費者から見てブランドの価値が下がり、ずっと低い価格を期待されるようになる恐れがある。

「滑りやすい坂道のように、最終的には坂の下に急いで進むことになりかねない。本質的には一種のコモディティ化を進めているのだ。最終収益に影響するので、そうした世界に自らを追い込むようなものであり、あとで体験の費用と体験による開発がさらに困難になり、利用しにくくなる」と、ロイヤルティプログラムの構築で小売業者と協働する顧客体験エージェンシー、ヒーロー・デジタル(Hero Digital)の共同創業者であるオーウェン・フリボルド氏は指摘する。

マーケティングとしてのロイヤルティ

体験ベースのリワードは、ソーシャルメディアやインフルエンサー主導のキャンペーンと、独自のマーケティング戦略のために、ブランドによって別の目的に利用できるコンテンツにも可能性を与える。

「会員の側でデータ共有を増やす動機を与える手段だと常に見なしていた。いまは、社内のデータ構造というだけでなく、外部のマーケティングやソーシャルメディアキャンペーンにも影響すると考えている」と、ガートナーL2のディレクターであるマイク・フロガット氏は語る。「ブランドが、ソーシャルメディアへの投稿や、インスタグラム(Instagram)やFacebookでのオーガニックな投稿にロイヤルティプログラムを組み込んでいると、インタラクション率が高くなる。ブランドがインフルエンサーを採用しているのも目にする」。

結果的に、体験ベースのロイヤルティプログラムは、オーガニックなインフルエンサーの誕生という、単なるロイヤルティやリピート購入を越えた付加的な後続効果がある。リーボックが、ソーシャルメディアでブランド体験を共有する顧客にロイヤルティポイントを付与しているのも、それが理由のひとつだ。ひいては、こうした投稿がブランドに共有され、新規顧客を生み出し、マーケティングのさらなる底上げになる可能性がある。

「ユーザー生成コンテンツを追加すれば、人々が製品を理解するのに役立つため、コンバージョンが大幅に増加するとわかっている。もちろん、体験を消費者にとってもっとリアルなものにするのが狙いだ。これは、特定の製品が自分のライフスタイルにどのように広がる可能性があるか、消費者が理解するうえで重要だ」と、ブロンダー氏はいう。

体験ベースのリワードの展開においては、十分なリソースを投入するのが課題だと、フロガット氏は語る。

「店舗の従業員はすでに飽和状態であり、さらにイベント管理が加わりつつある」とフロガット氏はいう。「イベント管理をうまくやっている多くのブランドには、比較的高いレベルからイベントを管理し、アイデアにこれも盛り込んでいる。たとえば、セフォラには、イベントを管理するチームメンバーのインフラ全体およびロイヤルティプログラムそのものが組み込まれた従来からの優れたロイヤルティプログラムがあり、それによって成功をもたらしてきた」と、フロガット氏は語った。

Suman Bhattacharyya(原文 / 訳:ガリレオ)