カナダのケイエヌシー・ビューティ(KNC BEAUTY 通称KNC)は、この7月、日本のアイコニックなストリートウェアブランドのア・ベイシング・エイプ(A Bathing Ape、通称BAPE)とコラボレーションを展開した。ビューティとストリートウェアのクロスオーバーは以前よりも一般的になりつつある。
最近、ストリートウェアとのクロスオーバーを行ったビューティブランドが、クリステン・ノエル・クロウリー氏が立ち上げたカナダのケイエヌシー・ビューティ(KNC BEAUTY 通称KNC)だ。KNCは日本のアイコニックなストリートウェアブランドのア・ベイシング・エイプ(A Bathing Ape、通称BAPE)とコラボレーションを展開した。
7月10日にローンチした7点のコレクションには、BAPEにインスパイアされたリップバームやリップマスク、そしてKNC x BAPEのパーカーやクロップドトップスが含まれる。この製品ラインはBAPEの米国内における全4店舗と、BAPEとKNCのそれぞれのオンラインストアで販売される。米国外のBAPE店舗のうちロンドンとバンコクの2店舗ではアパレルのみとなり、ビューティ製品は扱わない。今回のコラボ商品の価格帯は25ドル(約2800円)から250ドル(2万8000円)となっている。
ストリートウェア全般が好きだというクロウリー氏はBAPEの長年のファンで、KNCが2016年に初めてローンチした製品には、特にBAPEにインスパイアされたというカモフラージュのプリントを使用したものもあった。彼女の夫であるドン・C氏は、ラッパーのカニエ・ウエスト氏の元マネージャーでストリートウェアデザイナーである。彼女は、BAPEのデザインやプリントを公式に使用できるようになり「それをKNCビューティの理念に適用したことはすばらしく満足のいく経験だった」と語っている。
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KNCとBAPEは、それぞれのインスタグラムでこのコラボレーションを宣伝している。インスタグラムのフォロワー数は、両者合わせて約500万人だ(そのうちBAPEのフォロワー数が約470万人)。
ジェンダーレス化する市場
ビューティもストリートウェアも、かなりジェンダー化された典型的なカテゴリーである。男性のあいだでスキンケア製品への関心が高まっているにもかかわらず、ビューティプロダクトは昔から女性向けに大きく偏って市場に出されてきた。逆にストリートウェアや特にスニーカーは常に男性向けに販売されており、スニーカーデザイナーが女性向けのシューズを作るときの定番の戦略は「小さくしてピンクにしろ」という陳腐なジョークもあるほどだ。
しかしここ数カ月でその状況は少しずつ変化しつつある。スニーカーマーケットプレイスのストックエックス(StockX)が2月に発表したレポートでは、2020年1月から2021年1月にかけて同サイトを利用した女性ユーザーが130%増加している。4月にサービスを開始したスニーカーのサブスクリプションサービスのキックス・ワールド(Kyx World)では、ユーザーの4分の1以上が女性であり、CEOのブライアン・ムポ氏がローンチ前に予想していた10~15%を大きく上回っていることが判明した。
「スニーカーの多くは女性には手にが出ないほど法外な価格だ。ナイキダンク(Nike Dunk)のようなシューズは、サイズ12(日本の約30cm)で400ドル(約4万4000円)だが(男性用の)サイズ5(日本の約23cm)を見ると700ドル(約7万7000円)くらいする。これは歴史的に見ても女性にとって不公平だ。しかしそれにもかかわらず、ストリートウェアやスニーカーに対する女性の関心はまだまだ高まっている」と、ムポ氏は語る。
女性用ストリートウェアが成長している一方で、男性用ビューティ製品も成長している。グランドビューリサーチ(Grand View Research)によると、3月の資生堂メンや2018年のボーイドゥシャネル(Boy de Chanel)など新規のローンチによって活気づいたメンズビューティ市場は、2027年までに190億ドル(約2兆828億円)近くになると予想されている。NPDによると、2021年4月の男性用スキンケアの売上高は、前年4月の女性用スキンケアの売上高を上回っている。
タッグを組む異業種ブランド
ビューティとストリートウェアのクロスオーバーは確かに以前よりも一般的になりつつある。スニーカーやウェアのブランドであるキス(Kith)は2019年に化粧品ブランドのエスティローダー(Estée Lauder)と提携し、コレクションを発表した。2020年にはアパレルのトラヴィス・スコット(Travis Scott)がフレグランスブランドのバイレード(Byredo)と、ストリートウェアのシュプリーム(Supreme)が化粧品ブランドのパット・マクグラス(Pat McGrath)と組んだ。この3月には、ストリートブランドのオフホワイト(Off-White)が韓国の化粧品メーカーのアモーレパシフィック(Amorepacific)と提携してアジア市場での独占販売を行っている。
両方のカテゴリーが盛り上がるなか、それぞれの世界に属するブランドがコラボレーションを模索するのは理にかなっている。BAPEのブランド・パートナーシップ・マネージャーのケヴィン・リー氏は、メールでの声明のなかで、KNCとのコラボレーションによって同ブランドは「我々のサポーターにビューティとファッションは連携できるということを見せたかった」と述べている。
[原文:New KNC x BAPE collaboration further blurs the lines of streetwear and beauty]
DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)