ヒュージ(Huge)に、レイザーフィッシュ(Razorfish)のベテラン、ピート・スタイン氏が新リーダーとして加わることになった。同氏は、グローバルCEOとなり、デジタルエージェンシーと、それと同じようなサービスを提供しているコンサルティング会社との競争が激化しているなかで、ヒュージの舵取りを担う。
IPG(Interpublic Group)のデジタルエージェンシーであるヒュージ(Huge)に、レイザーフィッシュ(Razorfish)のベテラン、ピート・スタイン氏が新リーダーとして加わることになった。スタイン氏は、グローバルCEOとなり、デジタルエージェンシーと、デジタルエージェンシーと同じようなサービスを提供しているコンサルティング会社との競争が激化しているなかで、ヒュージの舵取りを担う。
そうは言ってもスタイン氏には、ヒュージの競争力を高めるためにメディアバイイングやPR機能を追加するつもりはない。インスタグラム(Instagram)にせよ実店舗にせよ、各ブランドがブランドのタッチポイント全体を通じて顧客に一貫性のある体験を提供する手助けをするエージェンシーになることで、ヒュージには成長の可能性があるとスタイン氏は信じている。
米DIGIDAYはスタイン氏にインタビューを行い、成長の機会がどこにあるか、カンヌでの計画、新技術の利用にヒュージが慎重な姿勢をとる理由を尋ねた。
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――現在、デジタルエージェンシーにとってコンサルティング会社が手強い競争相手になっている。彼らとどのように戦うつもりか?
我々がいる空間は、ブランドシンキングとともにプロダクトシンキングというふたつの核となる機能がひとつにまとめられる場所であり、コンサルティング会社がこれを行っていることは明らかだ。しかし、会社の合併・吸収を通じてそれを行うのは難しい。本当に大変だ。別々の会社をひとつにして、一緒に仕事をしていくことは容易ではない。社風もまるで違う。コンサルティング会社の仕事の中心は、話し合いをするための素晴らしい席を用意することだ。彼らはビジネスを知っている。だが、本当のところは、彼らはクリエイティブではないし、彼らの企業文化もクリエイティブではない。ヒュージの驚くべき点のひとつは、そもそもそうした機能が確立されていて、それらがまさに我々の中核をなしていることだ。
――エージェンシー各社は競争力を高めるために提供するサービスを追加している。クリエイティブとメディア、デジタルエージェンシーの境界線がぼやけてきているなかで、ヒュージが進化できるのはどの部分だと思うか?
デジタルなものの見方は残るだろう。我々がいま持っているもののなかでは、ここが進化するかもしれないが、それよりも我々自身はブランド体験エージェンシーであると考えている。従来型メディアとデジタルメディアの境目が曖昧になっている。我々は、ブランドと顧客体験両方について深い専門知識を持ち、それをひとつにまとめてくれる誰かを探しているクライアントにとって、主要パートナーでありたいと思っている。メディアプランニングやメディアバイイングに傾倒するつもりはないし、PRに深入りするつもりもない。これらの領域に踏み込む気はまったくない。だが、何かを「創る」ことに関しては、テレビの生中継で流れるスポット広告であれ、消費者が毎日使う製品であれ、それを行う能力が我々にはある。
――ヒュージの未来についてどのようなビジョンを持っているか?
我々はいま、それを考えているところだ。できるまでに、あと90日か100日はかかるだろう。我々は、消費者の生活やビジネスに大きなインパクトを与えたいと思っている。プロダクトとデザインについての考え方を組み合わせて、強力なブランドのコミュニケーション力に変える我々の能力があれば、我々はビジネスの未来に影響を与えるユニークな地位に立つことができると思う。
――ブランドの世界でもっとも注目している点は?
目下の計画は、オールバーズ(Allbirds)やキャスパー(Casper)のようなD2C(direct-to-consumer)ブランドをイメージしている。顧客体験を重視し、データをよく分析し、強力な製品体験を暮らしのなかにもたらし、明確な使命と価値を持つブランドの創り方を知っていれば、スケールを拡大し、消費者に愛されるようになれると、彼らが教えてくれた。他とは違う我々独自の強みは、老舗ブランドが直販ブランドへと移行していく手助けをし、直販ブランドがさらなるスケールアップと成長を目指す手助けができるという点だ。
――ヒュージはデータを利用するデジタルエージェンシーだ。消費者は、彼らに関するデータがどのように使われているか、以前より意識するようになってきた。気味悪がられることなく、消費者を対象としたパーソナライゼーションにどのように取り組むつもりか?
我々は、デジタル世界だけでなく物理世界でもたくさんの仕事をしている。顔認証技術は、店に入ってくる誰かを毎日繰り返し見て認識できる場所には導入されはじめている。我々はアトランタでコーヒーショップをやっているが、そこでは(顔認証技術を使って)客を認識し、バリスタに来店を伝えるシグナルを出して飲み物を作りはじめるようになっている。だが、人間という要素を考慮しなければならない。気味が悪いと思われるか、便利だと思われるか? この世の中の難しいところは、人間は一人ひとり違う、文化も、年齢も、考え方も、価値観も千差万別ということだ。ある人はそれを素晴らしい付加価値だと思うかもしれないが、別の人は不気味だと感じるかもしれない。我々はそうした空間で活動し続けるが、同時に、そこでは常に保守的な視点を持ち続けることにもなるだろう。
――コーヒーショップは、あなたの指揮下でも実験の場として残るのか?
もちろん。今後数週間のうちには、新バージョンの店舗がオープンすることになっている。いまの店舗をリニューアルした。ここを利用し続け、いろいろ学べることに興奮を禁じ得ない。実際には私はまだそこを見たわけではないが、再来週アトランタへ行くので、じっくり見てくるつもりだ。
――カンヌまであと2週間だが、ヒュージは何をする予定か?
Amazonとともに、サステナビリティやアースデイ(Earth Day)に焦点を絞ったハッカソンを行うことにしている。我々は、タンポンのディスペンサーを作って、カンヌでそれを披露する予定だ。
――現時点でのヒュージの弱点は何か?
私が就任してまだ3日ということだ。
Kristina Monllos(原文 / 訳:ガリレオ)