[ DIGIDAY+ 限定記事 ]Facebookはこの2年間、広告主の懸念に対処してきた。その懸念とは、Facebookのネットワーク(Audience Network)を利用してパブリッシャーのサイトやモバイルアプリに広告を表示するエージェンシーに対し、透明性や広告の配信先に対するコントロール性を十分に提供していないというものだ。
[ DIGIDAY+ 限定記事 ]Facebookはこの2年間、広告主の懸念に対処してきた。その懸念とは、Facebookのネットワーク(Audience Network)を利用してパブリッシャーのサイトやモバイルアプリに広告を表示するエージェンシーに対し、透明性や広告の配信先に対するコントロール性を十分に提供していないというものだ。
エージェンシーのアドバイヤーは、Facebookの努力を認めながらも、クライアントに対しては、Facebookの広告ネットワークのインベントリー(在庫)を購入しないようアドバイスしていることが多い。透明性やコントロール性がまだ十分ではないからだ。なかでも問題なのは、広告の配信先を特定のパブリッシャーのサイトやアプリに制限できるホワイトリストオプションがないことだ。
しかし現在、Facebookがホワイトリストオプションの追加の可能性を検討していると、この機能についてFacebookと協議している4人のエージェンシー幹部は述べている。Facebookの広報担当者は、何社かの広告主とホワイトリスト機能について話し合っていることを認めたが、まだ検討をはじめたばかりであり、近い将来にこれをリリースする計画はないと語った。
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グループ・エム(GroupM)は、クライアントから大規模なキャンペーンの要請がない限り、インベントリーソースとしてオーディエンスネットワークを利用することを見合わせていると、マネージングパートナー兼ソーシャル担当グローバル責任者のキーリー・テイラー氏はいう。別の大手メディアエージェンシーの幹部も、透明性とコントロール性の問題があるために、オーディエンスネットワークへのクライアントの投資は、「0とはいわないまでも低い」額にとどまっていると語った。さらに別のメディアエージェンシー幹部は、「透明性を欠いてきたこれまでの経緯を考えると、オーディエンスネットワークの利用には大いに抵抗がある」と述べている。
アドバイヤーたちにとって、オーディエンスネットワークのもっとも大きな問題は、広告を表示させたくないサイトやアプリのリストをパブリッシャーが手作業で管理しなければならない点にある。また、広告主向けの「ホワイトリスト」機能がないため、広告を配信するパブリッシャーを指定したり、そのパブリッシャーのサイトやアプリでのみキャンペーンを展開したりすることができないことも問題だ。特に後者の問題は、広告主がYouTubeのブランドセーフティ問題への対抗策としてホワイトリストに飛びつくなかで、ますます重視されている。
「ブロックリストを使えるのは知っているが、(オーディエンスネットワークのパブリッシャーは)かなりの数がプレミアムパブリッシャーであり、我々としては(ブロックリストの利用を)避けたい。理想的な形は、ホワイトリスト戦略を簡単に管理できるようになり、ブランドにとって安全な場所に広告を表示できるようになることだ」と、独立系エージェンシーのPMGでソーシャルアカウントスーパーバイザーを務めるカーリー・カーソン氏は話す。
「増え続ける大企業広告主にとって、(ホワイトリストがないうえに)我々がコントロールを獲得できないというのでは、話にならないといえるほどだ」と、テイラー氏は語った。
インベントリーの質に関する懸念
また、オーディエンスネットワークを利用したことがある広告主でさえ、利用を中断せざるを得なくなるような問題が起こっている。それは、インベントリーの質だ。
デジタルエージェンシーのデジタス(Digitas)は2018年、音楽アプリのクライアントから大規模なキャンペーンを依頼され、オーディエンスネットワークなどを利用して、ダイレクトレスポンス広告による大規模なキャンペーンを展開した。そう話すのは、当時デジタスに所属し、いまはカットウォーター(Cutwater)でメディアディレクターを務めるリジー・ライアン氏だ。だが、デジタスはこの6週間のキャンペーンをはじめてから2週間で、オーディエンスネットワークを除外せざるを得なくなったという。相当な数のインプレッションがもたらされたものの、「コンバージョンがまったくなかった」からだ。その後、このキャンペーンの広告の配信先をFacebookとインスタグラム(Instagram)に制限したところ、コンバージョン率は「はるかに高くなった」とライアン氏は述べている。
デジタスがオーディエンスネットワークをキャンペーンから外したところ、Facebookの営業担当者がやって来て、ブロックリストで広告配信先パブリッシャーを選別する方法をアドバイスしたという。「彼らは我々に(オーディエンスネットワークを)使ってもらいたがった。我々が1日にかなりの金額をそのプラットフォームにつぎ込んでいたからだ」と、ライアン氏はいう。実際、オーディエンスネットワークを除外する前にクライアントが費やしていた金額は、配信先をFacebookとインスタグラムに限定したときより5倍多かった。
プレースメントレポートとブロックリスト
Facebookがブロックリストオプションを広告主に提供したのは、2017年6月のことだ。これは、グループ・エムとデジタスなどの大手アドバイヤーが、透明性への懸念を理由に、オーディエンスネットワークのインベントリー購入を控えるようクライアントにアドバイスしたことを受けた措置だった。さらに当時、Facebookは配信先パブリッシャーリストをキャンペーン開始前に広告主へ提供する計画も明らかにした。広告主が不要なパブリッシャーをブロックリストに追加できるようにするためだ。また、広告の実際の配信先を知らせるプレースメントレポートをキャンペーン開始後に提供するとも述べていた。このプレースメントレポートが広告主に広く提供されるようになったのは、2018年になってからだ。
「プレースメントレベルのレポートは、我々が強く求めていたもののひとつだ」と、テイラー氏はいう。同氏はこのレポート機能を、オーディエンスネットワークの透明性とコントロール性を高める取り組みにおいて、「大幅な改善」が行われた分野のひとつとして評価する。
手作業でのブランドセーフティ管理
だが、Facebookのプレースメントレポートとブロックリストを利用するにあたっては、得られるメリット以上の作業が必要になることがある。まず、ブロックリストの編集はすべて手作業だ。広告主かエージェンシーがプレースメントレポートをくまなくチェックし、ブロックしたいパブリッシャーを見つけ出さなければならない。しかも、Facebookがオーディエンスネットワークにパブリッシャーを次々に追加するため、この手作業はますます複雑になる。広告主やエージェンシーは、そのたびにブロックリストを手作業で更新する羽目になるのだ。
「キャンペーン前に提供される透明性リストに登録されるパートナーの数は、急速に増加している」と、デジタルエージェンシーのアイプロスペクト(iProspect)でペイドソーシャル担当副ディレクターを務めるライアン・サマルティーノ氏は話す。「広告主はおおむね、このレベルの透明性が確保されることに満足してきた。しかし、いまのレベルの透明性はやりすぎだ。(オーディエンスネットワークに含まれる)5万近く(のサイトやアプリ)をくまなく調べたいとは思わない」。ひとつのキャンペーンで1万しかサイトやアプリをブロックできないので、ホワイトリストがあれば、広告主は大いに助かるだろう。ブロックリストの管理を自動化するツールもそうだ。
Facebookはいまのところ、オープンスレート(OpenSlate)などのブランドセーフティベンダーに対し、広告主とエージェンシーのブロックリストの管理を自動化する手段を提供していない。Facebookの広報担当者は、サードパーティベンダーが広告主のブロックリストを自動管理する目的で接続できるAPIを開発している最中であることを認めたが、その詳細は明らかにしなかった。
Facebookがオーディエンスネットワークにホワイトリスト機能を追加し、広告主のブロックリストを自動管理できるブランドセーフティベンダー向けツールを提供しても、アドバイヤーが求めるコントロール機能は終わりではない。ホワイトリスト以外で、複数のエージェンシー幹部が求めているものは、キーワードでサイトやアプリをブロックできるオプションだ。これがあれば、ニュースパブリッシャーのサイトに広告を配信する広告主が、特定の分野のニュースを除外したい場合に、その特定のキーワードを含む記事に自社の広告が表示されないようにできる。
「透明性に関する一連の対策は明らかに役に立っている。我々はブロックリストを使うことも、広告の配信場所を見ることもできるのだ。ただし、ブランドが(オーディエンスネットワークの)インベントリーに本当に満足できるようになるには、まだやるべきことが多いと思う」と、カーソン氏は語った。
Tim Peterson(原文 / 訳:ガリレオ)