取り引き手数料の最適化は必要、だがそれだけでは不十分:プログラマティック広告の最新事情

プログラマティックオークションで勝つには一番高い入札額を提示すればいいわけではないことに、広告主が気づき始めたようだ。

入札額だけが問題なら、もっとも入札額が高い大手広告主がインプレッションを落札できないという事態は起こらなかったはずだ。また、この厳しい時期に予算をより有効活用するための新たな手段を探っている広告主にとっては、敗北を勝利に転じる方法を見つけ出すことが重要になる。

そんななか、SSP(サプライサイドプラットフォーム)の手数料がキャンペーンのパフォーマンスに間接的な影響を及ぼすという前提に立って、SSPによる入札の割合を減らすことに膨大な時間を費やすというやり方に、一部の広告主が疑問を持ち始めている。

「元来、アルゴリズムは速度を優先」

これまでは、アドテクベンダーの取り分を減らせば、実際の入札でインプレッションを落札できる可能性を高める余地が生まれるという考え方が支配的だった。たとえば、SSPがテイクレートを20%から10%に下げれば、今まで落札できなかったインプレッションを獲得できるようになるというわけだ。だが今、この通説が一部の広告主によって覆されようとしている。

実際、この記事のために話を聞いた6人のプログラマティック担当幹部によると、入札価格を大幅に変更しても、オークションで勝てる見込みがそれほど変わらないことはよくあるという。そのため、彼らの全員が取引手数料の引き下げに意味があるとしながらも、その効果はある程度限られるうえ、入札戦略のバランスが取れたキャンペーンでしかうまくいかないようだ。広告主が高額の手数料を埋め合わせようと、インプレッションに対して大量の入札を行ったり、パブリッシャーさえ把握していないオークションでインプレッションを購入したりしても、キャンペーンの投資利益率(ROI)にもたらされる影響は微々たるものだと、その幹部たちは語っていた。

「元来、プログラマティックオークションを管理するアルゴリズムは速度を優先するように設計されており、すばやく行われた入札のほうが、金額が一番高くてもオークションへの参加が遅かった入札より考慮される」と、アドテク企業のインフォリンクス(Infolinks)でCEOを務めるボブ・レギュラー氏はいう。

手数料の最適化の影響はわずか

プログラマティックコンサルティング企業のジャウンス・メディア(Jounce Media)は8月、アレクサ(Alexa)が公開しているトップ500サイトのひとつでバナー広告を購入した際に、オークションを処理するエクスチェンジが手数料を引き下げても、インプレッションを獲得できる可能性にはわずかしか影響が及ばないことに気づいたという。落札できたインプレッションの割合が、広告を5ドルのCPMで購入した場合でおよそ36.0%、20ドルの場合で39.1%だったからだ。これは、入札時のCPMを4ドルから5ドルに引き上げても、わずかなメリットしか得られないことを意味する。

「インプレッションを獲得できる可能性を高めるためにマーケターが取り組める問題がひとつあるとすれば、それは手数料以外のことになるだろう」と、ジャウンス・メディアの創設者であるクリス・ケーン氏はいう。「手数料の最適化は、プログラマティック広告において必要な取り組みではあるが、十分な効果が得られるわけではない」。

入札の規模を別にすれば、広告主がインプレッションを獲得できるチャンスに影響を与えているのは、さまざまな技術的問題だ。たとえば、入札が行われる前にオークションが終了してしまったり、特定のオークションで特定のアドテクオークションの入札がほかの入札より優先されたりするといった問題がある。

DSPも気を利かせるわけではない

また、広告主に代わってDSP(デマンドサイドプラットフォーム)が入札するというやり方でも、取引手数料の減少によって得られるメリットを十分に高めてくれるわけではないことに、オムニコム・メディア・グループ(Omnicom Media Group)は最近気づいたという。

「制御された状況で何度かテストしてみた結果、DSPに組み込まれている入札アルゴリズムには、SSPのテイクレートが減ったことによるメリットを活かせるほど、価格変動に対して十分な感度を備えていないことことがわかった」と、オムニコムでマーケットプレイスインテリジェンス担当マネージングディレクターを務めるベン・ホバネス氏は述べている。

同氏によれば、SSPに支払う手数料を減らしても、DSPが入札行動を調整するわけではなく、インプレッションの総コストにわずかな変化しかもたらさないため、インプレッションの落札数を増やせる可能性は高くならないことがテストによってわかったという。

プログラマティック購入では、エージェンシーのDSPがインプレッションの入札額を1ドルに設定し、SSPがそこから15%を抜き取れば、残りの85セントがパブリッシャーのオークションに送られてインプレッションの獲得に利用される。この場合、SSPの取り分を10%に減らせば、DSPが1ドルの入札額を95セントに変えてくれるのが理想的だ。だが現実には、SSPの手数料の小さな変化に合わせてDSPが自動的に入札額を調整することはできない。

「SSPの取引手数料と実際に削減できるメディア支出が直接リンクしていると主張する人が市場にいても、広告主は大いに疑うべきだ」と、ホバネス氏は語った。

証拠を見つけるのはエージェンシー

一部の広告主は、以前からこのようなテストを行っているが、決定的な証拠を見つけ出しているのはメディアエージェンシーだ。

たとえば、メディアエージェンシーのグループエム(GroupM)では、SSPの手数料を最適化する試みの一環として、取引手数料の影響を数値化している。その結果、適切な提携先が増えるにつれて、手数料の安いSSPから購入することがクライアントにメリットをもたらすという感触を得られるようになっているという。

「価格は今も(オークションにとって)一番の決定的な要素だ。クライアントにプラスの影響をもたらすためにできることは、どんなことでも追求する価値がある」と、グループエムのプログラマティックパートナーシップ担当ディレクターを務めるマイク・ムーア氏はいう。「ただし、取引手数料を下げさえすれば、適切な入札戦略、オーディエンス戦略、インベントリー(在庫)戦略がプログラマティックキャンペーンで不要になるということではない」。

手数料に関する議論が増えた背景

取引手数料に関する議論が以前より増えた背景には、プログラマティックの世界で幅広い変化が起こっている状況がある。オムニコムやグループエムは、少数の広告主とともに、アドテクベンダーがキュレートするインプレッションへの関与を強めており、そうすることで、さまざまなプラットフォームで、パフォーマンス、広告料金、インベントリーを詳細に把握できるポジションを築いている。

「オークションに勝てるかどうかという点に関して、テイクレート、データ、アトリビューション、インベントリーの質といった要素は、どれも個別に作用しているわけではない」と、グッドウェイ・グループ(Goodway Group)で欧州部門のCEOを務めるポール・フランプトン氏はいう。「広告主には、こうした要素をすべてまとめて、適切に管理できる能力が必要になる。オークションのダイナミクスは複雑だからだ」。

[原文:‘Necessary, but insufficient:’ Advertisers are starting to question the value of low exchange fees

Seb Joseph(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:長田真)