NBAでは、数名のスタッフで構成された(具体的に何名なのかは明らかにされていない)TikTok専門チームが、1日あたり5〜6本の動画を380万人のファンに向けて投稿している。同リーグによれば、オールスターウィークエンドの期間中、NBAのTikTok動画は4400万回以上の再生回数を稼ぎ出したという。
エージェンシー各社がいまだTikTok(ティックトック)戦略の試行錯誤を重ねている一方で、この口パク動画作成アプリに当初から注力してきたあるブランドがある。
NBAでは、数名のスタッフで構成された(具体的に何名なのかは明らかにされていない)TikTok専門チームが、1日あたり5〜6本の動画を380万人のファンに向けて投稿している。同リーグによれば、オールスターウィークエンドの期間中、NBAのTikTok動画は4400万回以上の再生回数を稼ぎ出したという。また、NBAが用意した「#ハッシュタグチャレンジ(#HashtagChallenge)」に動画を投稿したユーザーは3000人以上にのぼった。通常、ユーザーたちが同じ曲に合わせて踊るなどして互いの動画を真似しあうこの#ハッシュタグチャレンジは、広告商品であり、TikTokユーザーたちが自然にはじめた行動でもある。NBAもこの#ハッシュタグチャレンジにステフィン・カリー選手のダンク動画などを投稿。この動画は8万2000の「いいね」を集めている。
「まだ新しい取り組みだが、#ハッシュタグチャレンジはTikTokというプラットフォームのなかで大きな部分を占めている。カイリー・アービング選手のボールさばきをまとめたハイライト動画などがうまく行き始めているので、自信につながっているところだ。NBAファンや新しいファンに、こうした選手たちがどんな人物で、どこがすごいのかを知ってもらいたい」と、NBAソーシャル・デジタルコンテンツ担当VPのボブ・カーニー氏は述べた。
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NBAとバイトダンスの契約
NBAは以前からソーシャルメディア活用に熱心で、うまく使いこなしていることで知られている。Twitterが2016年にサービス終了させた6秒動画のVine(ヴァイン)でも人気を博していたほか、Snapchat(スナップチャット)でも何度か限定コンテンツを公開している。またインスタグラム(Instagram)にも3500万フォロワーを抱えており、ブリーチャー・レポート(Bleacher Report)が運営するインスタグラムアカウント「ハウス・オブ・ハイライツ(House of Highlights)」が人気を集めている主な理由も、NBAのハイライトにある。
そんなNBAにとってTikTokは最新のハマりものにすぎないが、かなりはっきりとした参入意欲をみせていた。カーニー氏によれば、NBAはTikTokの前身であるMusical.ly(ミュージカリー)で、すでにもっとも人気のあるブランドだったという。2017年11月に中国のテック企業バイトダンス(Bytedance)がこのMusical.lyを買収し、それをリブランドして2018年8月から展開をはじめたのがTikTokである。このブランド変更はNBAに好都合だった。バイトダンスはグローバル規模の企業であり、同社が中国でサービスを提供している姉妹アプリの抖音(Douyin/ドウイン)のNBAアカウントには熱狂的なファンがついている(NBAのTikTokアカウントはフォロワー数が380万人なのに対して、抖音のフォロワー数は490万人)。
NBAとバイトダンスは2018年11月に複数年契約の締結を発表している。この契約には、バイトダンスのツールへのアクセス改善や、アプリ内でのプロモーションを盛り上げるために、NBAが同社のプラットフォームで一定したパブリッシングを行うといった内容も盛り込まれている。NBAオールスターウィークエンドの特集がTikTokの検索ページに掲載されていたのもそのひとつだ(NBAは契約内容の公開を拒否している。TikTokからは、本記事公開までに米DIGIDAYのコメント要請に対する反応を得られなかった)。
これまでと違うオーディエンス
カーニー氏は、NBAがMusical.lyに興味を持つようになったのは2016年10月のことで、理由としては同サービスのユーザー層が若い女性に偏っていたからだと語っている。TikTokのオーディエンスも、やはり同じように偏っている。TikTokの媒体資料を見ると、月間アクティブユーザー数は米国内で2650万人、そのうち60%が16〜24歳で、63%が女性だ。
「影響力の大きいアプリが出てきたら、利用すべきかどうかを必ず判断している。(Musical.lyの)ユーザー層が非常に若くて女性が多かったのと、コンテンツを見て、これまでとは違うオーディエンスにエンゲージできそうだと考えた」と、カーニー氏は話す。
TikTok側としては、NBAの活動によって、これが真っ当なアプリであることが、ほかのブランドや広告主に宣伝されるという利点がある。LinkedIn(リンクトイン)に掲載されている求人情報を見ると、バイトダンスは現在、ロサンゼルスオフィス勤務のスポーツパートナーシップディレクターを募集している。さらにはNFLも、さまざまな選手のARステッカーを制作するなどしてTikTokの活用を模索している。
NBAは当初1日2〜3回の投稿を行い、もっともエンゲージされるコンテンツは、スタジアム内でのマスコットの様子やほかのアリーナでの一瞬を捉えたものなど、楽しかったり笑えたりするものだということを発見した。この法則は、いまでもTikTokで通用している。NBAアカウントで再生回数320万回のある人気動画は、ナショナルケーキデーにマスコットたちが人々の顔めがけてケーキを投げつける様子を集めたものだ。また、マスコット・マンデー、タレント・チューズデー、ワークアウト・ウェンズデーなど、曜日ごとにテーマを決めてのコンテンツ投稿も行っている。
プラットフォーム連携はしない
だがNBAでは、オーディエンスを増やすためにTikTokのチャンネルをほかのプラットフォームで宣伝することはしていないという。
「我々が目指しているのは、各プラットフォームのオーディエンスとその場でエンゲージしていくことだ。ほかのプラットフォームに彼らを送り込もうとは必ずしもしていない」と、カーニー氏は語る。「ただ全体として、すべてのソーシャルプラットフォームはテレビでの試合視聴を促し、宣伝するためのものなので、そこは唯一の例外と言えるだろう。だが、TwitterのオーディエンスをTikTokに移行させようとはしていない」。
Kerry Flynn(原文 / 訳:ガリレオ)