オンライン小売業者マイテレサにとっては、洗練された世界観はビジネスの中心である。マイテレサのCEO、マイケル・クリーガー氏はGlossyPodcastで、「ビジネスの真のラグジュアリー部分を大切にしている。ラグジュアリーだと考えられるのは一握りのブランドしかない」と語った。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。
ラグジュアリーファッションは、ハリウッド黄金時代に代表されるようなグラマーは姿を消し、スニーカーやナイロン製ベルトへと急速に変貌した。しかし、オンライン小売業者のマイテレサ(Mytheresa)にとっては(ハリウッドの)洗練された世界観はいまだに同社のビジネスの中心なのである。
マイテレサのCEO、マイケル・クリーガー氏は今週のGlossyポッドキャストで、「(ファッション)ビジネスの真のラグジュアリーの部分を大切にしている。ラグジュアリーだと考えられるのは一握りのブランドしかない」と語った。
Advertisement
マイテレサのルーツは、1987年にオープンしたミュンヘンのブティックである。2020年にメンズウエアカテゴリーを立ち上げ、1月にはIPOを行うなど、ラグジュアリーの変遷とともに進化してきた。同社は、ヴァレンティノ(Valentino)、プラダ(Prada)、グッチ(Gucci)などの「伝統的な」ラグジュアリーブランドや、「ガーデンパーティ」のようなイベントにフォーカスし続けているが、パンデミックのあいだに加速して変化する顧客の好みに応じて「ジャックムス(Jacquemus)のようなクールな新規ブランド」も取り扱うようになっているとクリーガー氏は言う。
ほかのラグジュアリー小売業者とは対照的に、「ラグジュアリーファッション最高の厳選」というタグラインにふさわしくマイテレサの取り扱っているブランドは250以下である。
クリーガー氏いわく、「顧客のジャーニーは製品ではなくイベントを念頭に置いて始まると、我々は絶えず言ってきた」。
パンデミックにより購入客はパーティに行かずに居間のソファで過ごすようになったため、カシミアやニットウェア、スニーカーやスライドシューズの売り上げが急増したときにも、マイテレサのイベントへのフォーカスが揺らぐことはなかった。また、ラグジュアリーの別の側面であるバカンス用の服やフォーマルドレス、パーティ用の服などのカテゴリーも最近になって回復していると、クリーガー氏は言う。
読みやすさのために若干編集してポッドキャストのハイライトを以下に紹介する。
Subscribe: Apple Podcasts | Stitcher | Google Play | Spotify
顧客第一のアプローチ
「『ラグジュアリー企業? 』『デジタル企業? 』『事業会社? 』とよく聞かれるが、答えはどれも『ノー』だ。では、(マイテレサは)どんな会社なのか。我々は、顧客企業だ。顧客の満足を保証するために、倉庫のスタッフや社員は、他社へ出向いてアイテムを選ぶバイヤー、美しい撮影や動画を制作するクリエイティブ、プラットフォームが直感的に(希望どおりに)デザインされていることを確認する技術者と同じように重要なのだ。社員全員が必要とされていて、共同の努力である。最終的に判断を下すのは顧客だ」。
メンズウエアへの参入について
「この2年間は素晴らしかった。我々は(メンズウェアに関しては)後発だった。マイテレサは長年レディースのみを扱っていたが、それが(拡大の)チャンスになった。なぜなら、市場が、成功を収めたストリートウエアから装いに気遣う成熟した顧客に移行したときに市場進出したからだ。トムブラウン(Thom Browne)とヴァレンティノの独占カプセルコレクションをローンチしたが、素晴らしい牽引力が見られた。メンズウェアの男性顧客の85%はメンズウェアの純粋な顧客で、彼らはマイテレサではほかのものを購入しない。つまり、彼らは新しいオーディエンスだということ。レディスウエアと同じように、ユニークで厳選された我が社のポジショニングを改善し続けている」。
持続可能性を重視することについて
「持続可能性は、顧客と投資家だけでなく我が社のチームにとっても重要なトピックだ。『自分が働いている会社が取り組んでいることは何か? 』という要求も社内に存在する。我々はヴェスティエール(Vestiaire)パートナーシップを開始し、新シーズンの2022年春に毛皮を使わないこと、また、今会計年度中にカーボンニュートラルになることにも取り組んでいる。最大のカーボン源は荷物の出荷と配送だ。我々のプラットフォームで商品を購入して米国に配送する場合、カーボンオフセット(のコスト)は約40ユーロセント(約51円)。会社としてそれを引き受けている。また、顧客にオフセットの機会も提供するが、(そのような選択肢を提供することは)企業が行うことを超えたものだ。我が社は顧客に会社の仕事をしてくれとは言わないが、自分も何かしたいと望んでいる顧客もいる。持続可能性は旅路であり、終わりはない。そして、企業は毎年向上していかなければならない」。
[原文:Mytheresa’s Michael Kliger on competing for luxury shoppers: ‘In the end, the customer is the judge’]
NITYA RAO(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)