今年初め、ラグジュアリーオンライン小売業者のマイテレサ(MyTheresa)は、世界的なラグジュアリー市場の深刻な縮小により、年内の同社の収益は減少する可能性が高いと発表した。 だが、9月14日に発表された通期決算では、 […]
今年初め、ラグジュアリーオンライン小売業者のマイテレサ(MyTheresa)は、世界的なラグジュアリー市場の深刻な縮小により、年内の同社の収益は減少する可能性が高いと発表した。
だが、9月14日に発表された通期決算では、それは当てはまらなかった。マイテレサの売上高は過去1年間で11%増となり、同社が今年初めに予想した9%増を上回っている。ファーフェッチ(Farfetch)やザ・リアルリアル(The RealReal)などほかの多くのラグジュアリーオンライン小売業者が黒字化に苦戦している時期に、マイテレサは利益を維持している。
すでに数多く購入している顧客を獲得する
マイテレサのCEO、マイケル・クリーガー氏はGlossyとのインタビューで、収益性を維持できたのは、要約すれば年に1、2点しかラグジュアリー商品を購入しないようなラグジュアリーへの憧れが強い購入者ではなく、もっとも裕福な消費者に注力したからだと語った。前者のような顧客の方が数は多いが、過去1年で世界市場が経験したような経済的混乱に対してはるかに脆弱だ、とクリーガー氏は言う。
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「顧客に頻繁に購入してもらうのは難しいので、すでに数多く購入している顧客をつかまえろ、というのが、私の持論のひとつだ」とクリーガー氏は述べた。「言い換えれば、当社で2足目の靴を購入する人よりも、15足目の靴を購入する人を獲得するほうがずっと簡単だということだ」。
ラグジュアリーを気楽に購入できる層に焦点を絞る必要性は、顧客獲得コストのバランスにも及ぶ。クリーガー氏によれば、顧客獲得コストが高いため、同社が顧客獲得に見合うだけの利益を得るには、顧客1人当たり平均80回の購買が必要だという。つまり、顧客獲得コストが上昇すればするほど、憧れの強い顧客はさらに魅力を失うことになる。
富裕層を狙ったマーケティング
マイテレサは過去1年でマーケティング費用を約500万ドル(約7.4億円)増加させた。この費用は、通常はブランドとの提携による主に上位買い物客に向けた大規模イベントに費やされた。ローマで行われたヴァレンティノ(Valentino)のアーカイブツアーや、ドルチェ&ガッバーナ(Dolce & Gabbana)と共にポルトフィーノで行った5月の限定カプセルコレクションを記念した3日間のアクティベーションなどがそれに該当する。後者は、マイテレサにとって今年最大のイベントとなった。
このような富裕層の消費者は、お買い得商品には惹かれないので、こうしたイベントは新規顧客を呼び込むひとつの方法だとクリーガー氏は言う。憧れの強い買い物客は、気に入ったものを見つけると、できるだけ安い価格を求めて、多くの場合はリセールや中古ショップを利用するという。だが、裕福な買い物客は、欲しいものを欲しいときに買う。クリーガー氏いわく、裏を返せば、裕福な買い物客は優れたサービスや品揃えに惹かれる可能性があるのだ。
マーケティングやテクノロジーへの支出を増やす
クリーガー氏はまた、特にラグジュアリーでは支出削減だけが収益達成を可能にする方法ではないと語った。実際、マイテレサはマーケティングやテクノロジー等への支出を増やして、今年、裏方の技術スタック全体を全面的にアップグレードし、フルサイズの新規倉庫をオープンして9月上旬から稼働している。
マイテレサは、来年1年間も収益性は維持されると見込んでいる。
「当社のビジネスモデルや市場でのポジショニングには、中期的に過去数年間に経験した収益性のレベルの達成を妨げるような構造的な障壁はない」とCFOのマルティン・ベーア氏は述べている。
だが、富裕層も市場の混乱から完全に逃れられるわけではない、とクリーガー氏は言う。現在、マイテレサの状況は好転しているが、ラグジュアリー全体としては、世界的な金融市場のさらなる混乱に対しては今もなお脆弱だ。
「株式市場が暴落すれば、間違いなく突然、私たちの顧客にも影響が及ぶだろう」とクリーガー氏は言う。「顧客の富の源泉は株式市場や不動産価格といったもので、ありがたいことに現在はかなりうまくいっている。しかし、その環境にはリスクがつきものなのだ」。
[原文:MyTheresa CEO Michael Kliger on how the brand is staying profitable despite luxury contraction]
DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)