新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、いまゲーム人気はうなぎ登りだ。にもかかわらず、ゲーマーについて、あるいはゲーマーとブランドの関係については、マーケターとメディアバイヤーの頭のなかには、ま […]
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、いまゲーム人気はうなぎ登りだ。にもかかわらず、ゲーマーについて、あるいはゲーマーとブランドの関係については、マーケターとメディアバイヤーの頭のなかには、まだ誤解が見られる。
「主要なステークホルダーのあいだに、まだ時代遅れなマインドセットがあるのは否めない。いまだに、ゲームは『フォートナイト(Fortnite)』で遊ぶキッズにリーチするだけだと思っているのだ」と、ゲーム内広告ネットワークを展開するアドバーティ(Adverty)で、営業担当ディレクターを務めるアレックス・ジン氏は指摘する。「もはや、そんな時代ではない」。
現代のゲーム業界は、10年前、いや5年前と比べても劇的に変化した。プレイヤー層は幅広くなり、女性ゲーマーや高めの年齢層が加わって、ゲーマーに対する従来のステレオタイプは崩壊しつつある。
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昨今、ゲーム業界には潤沢な資金があり、多くの投資が行われている。実際、2021年末までに、世界のゲーマー人口は29億人に達し、業界に1750億ドル(約19兆8600億円)をもたらすだろうと、ニューズー(NewZoo)の2021年度版世界ゲーム市場レポート(2021 Global Games Market Report)は予測する。
業界が急速に活気づくなかで、ゲームへの参入を躊躇するブランドは、利益獲得のチャンスを逃しかねない。以下に、ゲーマーやゲーマーとブランドの相互作用に関する、よくある誤解を4つにまとめてみた。
誤解1:典型的ゲーマーは地下室ぐらしのティーンエージャーだ
そう遠くない昔、ビデオゲームはニッチな趣味で、両親の家の地下室に住む汗臭いオタクやインセル(不本意な禁欲主義者)の領域だとみなされていた。しかしここ10年で、平均的ゲーマーの様相は大幅に変化した。市場調査会社GWIの2021年のレポートによると、あらゆるジャンルとプラットフォームにおいて、現在のゲーマーの平均年齢は30歳を大きく超えている。また同レポートによれば、ゲーム人口はもはや男性に偏ってはおらず、どのプラットフォームでもゲーマーの約半数は女性だ。「いまだに多くのブランドが、ゲームは寝室にこもって朝3時までゲームに熱中する情緒不安定なティーンエージャーのものだと考えているが、もはやそれは事実ではない」と、ジン氏はいう。
誤解2:ゲーム空間ではゲーム関連ブランドしか成功できない
プレイヤー層の変化により、ゲームに特化していないブランドにも、ゲーム内アクティベーションを通じて見込み顧客にリーチする機会が自然と生じた。こうした変化をけん引するのは、ファッション・美容業界だ。今年、バレンシアガ(Balenciaga)はラグジュアリーなアパレル商品の一部を、フォートナイトの世界で展開した。セフォラ(Sephora)、ベネフィットコスメティクス(Benefit Cosmetics)、ロクシタン(L’Occitane)といったビューティブランドも、ストリーマーのスポンサーにつき、Twitch(ツイッチ)チャンネルを開設し、カスタムブランドのゲームの開発にまで乗り出している。
非ゲームブランドの一部は、eスポーツ組織やその他のゲーム業界人の助言を得つつ、ゲームがますますメインストリームへと進出していくなかで、業界に深く入り込もうとしている。ここ最近でも、ホリスター(Hollister)はフォートナイトのチームを発足させた。リーダーは2019年のフォートナイト・ワールドカップ優勝者であるブガ(Bugha)こと、カイル・ギアスドーフ氏だ。「我々は彼ら(フォートナイトのチーム)と、きわめて長期的な共生関係を構築した。このアイデアは、彼(ギアスドーフ氏)と何度も対話を重ね、パートナーシップを通じてどのように一緒に成長していきたいかを考え抜いた末に結実した」と、ホリスターのブランドマーケティング戦略シニアディレクター、ジェーシー・スカウラー氏はいう。「ホリスター自体のパーパスに立ち返り、ティーンエージャーの日常をどうサポートすべきかを考えることにつながった」。
誤解3:ゲーマーはゲーム空間でブランドを見ると嫌悪感を示す
ゲーマーは、ゲーム内ブランドアクティベーションに対して懐疑的、あるいは反感をもっているという考えは依然として業界にはびこっている。これはゲーム業界に参入しようというマーケターにとって、もっとも危険な誤解かもしれない。ゼロコード(Zero Code)のマネージングディレクター、ダリオ・ラシティ氏は、2021年10月にマイアミで開催されたのDIGIDAYメディアバイイング・サミット(Digiday Media Buying Summit)でのセッションで、この話題に言及した。「ゲーム業界には、eスポーツやインフルエンサーなど、ブランドが柔軟な姿勢で参入できるような機会が豊富にある」と、ラシティ氏は述べている。
ブランドが大切にすべきは、ゲームの世界に自らを無理にねじ込むのではなく、自然に溶け込んでいくことだ。そうしたアクティベーションであれば、ブランドをゲーマーの眼前に提示すると同時に、ゲームの世界をよりリアルで日常に近いものに感じさせる効果があり、そこに携わる誰もが利益を得られる。
ジン氏は、エンドレスランナータイプのモバイルゲーム『サブウェイ・サーファーズ(Subway Surfers)』で、アドバーティが手掛けた実際のブランドの広告を、ゲーム内に提示した例に言及した(このキャンペーンに参加したブランドパートナーは、2週間で1400万インプレッションを獲得した)。
アドバーティは、このゲームの舞台は都会の地下鉄のトンネルで、実在しない商品の偽広告がたくさん掲示されている。単純にこの偽広告を本物の広告に置き換えるという形で、ブランドパートナーをここに引き入れたのだ。「我々はAppStoreのフィードバックをチェックし、開発者のフィードバックも確認した」と、ジン氏はいう。「ネガティブなものはひとつもなかった。目にしたのは、ゲームのなかにペプシやユニリーバの商品が登場することのはとてもクールで、ゲームのリアリティが増すという褒め言葉ばかりだった」。
誤解4:ゲームにも多様性がある
先述の29億人という数字にはインパクトがあるが、だからといって30億人近くがレブロン・ジェームズの格好でフォートナイト世界を走り回っているわけではないし、30億人近くのリーグ・オブ・レジェンド(League of Legends)ファンが、ワールドチャンピオンシップに熱狂しているわけでもない。現実には、「ゲーマー」というのはさまざまにタイプの異なる消費者の総称だ。したがってブランドは、ゲーム内広告への参入準備の段階で、各ゲームタイトルのターゲット層を考慮する必要がある。「キャンディークラッシュ(Candy Crush)をときどき10分くらいプレーする人と、コール・オブ・デューティ(Call of Duty)をプレーする人をひとくくりにはできない。活動パターンがまったく異なるからだ」と、ゲーム内広告企業アドミックス(Admix)のCEO、サミュエル・フーバー氏はいう。「スナッカブル(隙間時間で遊ぶ)ゲーマーの行動は、むしろソーシャルメディアを楽しむユーザーの行動に似ている」。
ゲーマーのゲームに対するアプローチが多様であることは、ブランドにとってもマーケターにとっても朗報だ。モバイルゲーム内のバーチャル広告から、ラグジュアリーなフォートナイトのスキンまで、どんなブランドにも、あらゆるタイプのゲーマーにリーチできる効果的な戦略が存在する。重要なのは、正しい方法をとることだ。「結局のところ、ゲーム体験がすべてなのだ。(ゲーマーは)ゲーム体験を台無しにする広告を望まない」と、ジン氏は述べた。
[原文:Myth buster: Misconceptions about the relationship between gamers and brands]
ALEXANDER LEE(翻訳:的場知之/ガリレオ、編集:村上莞)