10年を経て、テレビ広告 へ回帰した 米・就職/転職サイト:モンスター・ドットコムの決断

就職/転職サイト、モンスター・ドットコム(Monster.com)が10年を経て、テレビ広告に再び目を向けている。

ドットコム企業の草分け的存在モンスターは、トップ・オブ・ファネルのブランド広告を10年ほど止めていた。だが、その隙に、インディード(Indeed)やジップ・リクルーター(Zip Recruiter)といった競合他社が進出。同社は就職/転職サイト界の首位から陥落した。

そこで、トップの座を奪い返し、若年層の顧客を取り込むべく、モンスターはメディア費の10~20%を再びテレビに注ぎ込むことを決めた。マーケティング企業カンター・メディアの発表によれば、2018年度、モンスターのメディア費は1290万ドル(約14億円)。ただ、同社CMOジョン・ビーマー氏は、具体的な数字こそ明かさなかったものの、そうした報道は従来型の広告費しか追っておらず、誤りだと語る。

「この10年間、我々はロウアー・ファネルの広告に入れ込んでいた」と、ビーマー氏。「メディア費の大半をいわゆるナビゲーショナルメディアに費やしていた。職探しに多少なりとも関心のある人々を見つけ、熾烈な戦いを勝ち抜き、彼らをモンスターに引き込めないかと、やきもきする日々。正直、非常に厳しい10年だった」。

「丸々1世代を失った」

この10年あまり、定評のあるブランドにとって、ブランド構築広告から、より容易に手に入るメトリクスを備えた諸々――モンスターの場合、それはダイレクトレスポンスであり、ほかのジョブボード(求人掲示板)とのトラフィックパートナーシップであり、ある種のディスプレイ広告だった――への移行が持つ可能性は、きわめて魅力的だった。ところが、この移行は実際、ブランドが思うほど単純なものではなかった。

「この流れは、ブランドのあいだで、いまや一大トレンドとなっている」と、独立系総合エージェンシー、ピーター・マイヤー(Peter Mayer)のメディア&コネクションプランニング部ディレクター、ジェレミー・ブラウド氏はeメールで回答した。「アッパーファネルを捨て、ロウアーファネルのメトリクスに主軸を置いた結果、総売上と市場シェアが減少していたことに、プロクター&ギャンブル(Procter & Gamble)をはじめ、多くが気づいている」。

効果が即時にわかるメディアを重視する広告戦略は、名の通ったブランドには有効になりうる。だが、この類のマーケティングは一般に、消費者のなかにブランドへの愛着を生まないため、結果として、ブランドと若年層とのあいだに情緒的なつながりを構築できない可能性があると、クリエイティブショップであるマッドウェル(Madwell)のCCO クリス・ソニカ氏はeメールで回答した。

「アッパーファネルのブランドマーケティングを止めていた期間が長すぎたのは、明らかだ。その結果、我々は丸々1世代を失ってしまった」と、モンスターのビーマー氏も認める。「ミレニアル世代だ――ブランドメトリクスに顕著なとおり、我々は[20代前半から30代半ばに比べ]はるかに、35歳以上に強い。これは非常に危険な状況だ。[我々が弱い年齢層は]広告を止めていた時期と見事に合致している」。

従来型広告への回帰

モンスターは現在、メディア費の約80%をパフォーマンスマーケティングに、10%をプログラマティックに割いている。

従来型広告への支出増を決めたブランドは、無論、モンスターだけではない。Facebookといったプラットフォームの利益を手早く享受したD2C(Direct to Consumer)ブランド勢でさえ、 従来型広告への支出を増やしている。

「従来型メディアは、ターゲッティングに関しては無駄が多いが、消費者の心に入り込むという点では、[デジタル]より優れている」と、ブランド氏は指摘する。「デジタルメディアを介して個人を狙い撃つ広告は、多くの消費者が共有する、いわゆるブランドアイデンティティを創造しない」。

「インターネットへの不信感が蔓延する世界において、大規模な従来型広告は、ブランドの規模を指し示すものとして、ひいては高い信頼性の証として、消費者の心に映りうる」と、マッドウェルのソニカ氏は指摘する。「そしてそれは、いわばデジタル畑で収穫できる作物の種蒔きになる」。

情報提供方法の多様化

モンスターはさらに、顧客を取り戻すべく、従来型広告に再び目を向けるだけでなく、就職/転職情報の提供方法の多様化にも努めている。5月第5週、同社は人事部が仕事内容を詳細に説明する動画制作の一助となる新アプリ、モンスター・スタジオ(Monster Studios)のローンチを発表した。

「ジョブディスクリプション(職務記述書)はこれまで、文字情報が主だったが、今後は若年層の嗜好に合わせ、もっと動画を取り入れていく」と、ビーマー氏は語る。また、ブランドであると同時に、ほかのブランド勢が広告を打つ場所でもあるモンスターは、業界では稀有な存在だと、氏は言い添える。「生き残るには、市場の片側だけでなく、両側を構築していく必要がある」。

モンスターはさらに、テクノロジースタック構築に向けての増資も行なっている。Facebookやインスタグラムといったプラットフォームにおけるディスプレイ広告をより動的なものにし、モンスターを宣伝する一般広告に留まらず、ジョブディスクリプションに合致する候補者に向けた、就職/転職情報の新たな提供法を探っていくという。

Jessica Davies(原文 / 訳:SI Japan)