イタリアの高級ブランド「モンクレール」は2月末の収支報告にて、大幅な成長を示した。昨年の売上高は27%増加し、27.5億ドル(約3,733億円)に達した。特筆すべきは、第4四半期だけで10億ドル(約1,360億円)を超える収益を計上したことだろう。
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イタリアの高級ブランド「モンクレール(Moncler)」は2月末の収支報告にて、大幅な成長を示した。昨年の売上高は27%増加し、27.5億ドル(約3,733億円)に達した。特筆すべきは、第4四半期だけで10億ドル(約1,360億円)を超える収益を計上したことだろう。
モンクレールの最高コーポレート&サプライ責任者を務めるルチアーノ・サンテル氏は、収益の成長は同社が「通年ブランド」となるべく、フットウェアなどのカテゴリー開発によるのだと、収支報告にて述べた。
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同社は昨年8月にフットウェアカテゴリーのリローンチを発表し、9月には新作スニーカー「トレールグリップ(Trailgrip)」をリリースした。トレールグリップは同ブランドにとって最大となるフットウェアのローンチであり、直販と卸売の両方で収益の2桁台の比率を占めるまでになったとサンテル氏は述べた。
アウターウェアに焦点を当てたモンクレールの冬のランウェイコレクションとは異なり、新たに開発したフットウェアカテゴリーは年間を通じて収益をもたらすことを想定したものだ。トレールグリップの発表前は、同ブランドのフットウェアといえば冬用ブーツかサンダルのみで、どちらも季節性が高い。だが、トレールグリップは1年中履けるスニーカーという同ブランド初の試みだ。モンクレールはこの話題についてのコメントを控え、収支報告で発表した声明について保留した。
過去3年間で、特定の時期に特化した製品のブランドが、年間を通して収益を上げられる製品カテゴリーを続々と発表してきた。その動機のひとつは、サプライチェーンの世界的な混乱の緩和だ。カナダグース(Canada Goose)やルルレモン(Lululemon)は、これを最近の戦略の中核に位置付けている。カナダグースでは2023年度の第二四半期(2022年7~9月)に春と秋のコレクションでマーケティング施策を増やし、ダウン製品以外の売上を46%伸ばした。年間を通していつでも製品を販売できれば、もっと多くの原材料を前もって注文でき、輸送遅延の問題も軽減される。
「サプライチェーンはいま誰にとっても大きな課題」と、語るのはコロンビアスポーツウェア(Columbia Sportswear)の商品部門マネジャー、アンドレア・ケリー氏だ。同社ではショートパンツなど、一年中売れ続けるカテゴリーに注力することで対応している。「5月に冬用ジャケットを提示するのは良いことではない」。
モンクレールのアプローチは昨年の収益増には貢献したが、関連する在庫コストを押し上げる。同社の2022年末の在庫レベルは「著しく高かった」とサンテル氏は認めており、2023年に販売する製品を2022年末により多く生産したことが原因だと述べた。季節を問わない在庫はリスクが少ないものの、前四半期にアジアで経験したような需要の落ち込みによって、在庫が売れ残る可能性がある。
「ここ5年間で数々のブランドがシーズンレスについて理論的に語ってきたが、実際に完全移行するとなると非常に困難」と語るのは、メーカーサイツ(MakerSights)の設立者であるマット・フィールド氏だ。同社は消費者データを分析し、製品の在庫管理などを請け負っており、メイドウェル(Madewell)などのブランドと提携している。「生産のスケジュール、卸売のバイヤー、そして消費者からの期待のすべてが季節性を強めるため、必ずしも簡単ではない」。
サンテル氏は、中国で需要が回復すれば、新しい戦略による在庫コスト増は克服できると自信を見せた。
「あらゆる地域、特に1月と2月の中国で、景気動向が好況であることを考慮すると、在庫は問題ではない」と同氏は述べた。
[原文:Moncler’s relaunched footwear has made it a ‘year-round brand’]
DANNY PARISI(翻訳:田崎亮子/編集:山岸祐加子)