フォックストロット(Foxtrot)は、2014年にシカゴで誕生したコンビニだ。これまでの8年で2倍の規模にまで成長しており、共同創業者のマイク・ラビトラ氏によると、今後2年で50店舗のオープンを計画。ニューヨーク、オースティン、ボストン、マイアミ、ロサンゼルス、ヒューストンに展開する予定だという。
フォックストロット(Foxtrot)は、2014年にシカゴで誕生したコンビニだ。これまでの8年で2倍の規模にまで成長しており、共同創業者のマイク・ラビトラ氏によると、今後2年で50店舗のオープンを計画。ニューヨーク、オースティン、ボストン、マイアミ、ロサンゼルス、ヒューストンに展開する予定だという。
コロナ禍の最中でも、その成長は衰え知らず。シカゴ、ダラスおよびワシントンDCに計13に上る店舗を擁し、ほかのコンビニと同様、売上を大きく伸ばしている。また2020年のオンライン売上は前年比3倍、店舗売上も28%の増加を達成した。さらに2021年に入ると、1月から7月までの売上が前年比2倍増、オンライン収益も同22%増しと右肩上がりが続く。
フォックストロットは今後、実店舗を大幅に拡充していく予定だという。かつ、新サービスの導入も検討しており、たとえば注文から30分以内での商品配達や、5分以内の店舗受取サービスの提供など、迅速なフルフィルメントの実現、さらにライバルと差別化するため、各地元の商品を幅広く取りそろえていくことを計画している。
Advertisement
もともとフォックストロットは、配送のみを行う「ダークストア」モデルのコンビニとして生まれた。「コロナ禍でも、オンライン販売で大きな成長を達成できたのも、そういったバックグラウンドがあるためだ」と、ラビトラ氏は話す。2016年には実店舗の開設に加えて、注文から5分以内に店舗受取できるサービスを提供している。
迅速な配達サービスが起源
同社はウェストループをはじめ、シカゴの住宅密集区域において迅速な配達サービスを提供することをその起源とする。その後、サウスポートなどのシカゴ周辺地区にまで拡大。さらに2019年6月にはダラス、2021年3月にはワシントンDCへと対象地域を広げていった。現在、シカゴに9店、ダラスに2店、ワシントンDCに2店を展開している。
コロナ禍によりフォックストロットはオンライン販売を伸ばし、その売上は実店舗にほぼ肩を並べるほどになった。しかし今後2年は、実店舗販売に再び力を入れようと態勢を整えている。
「2020年は、必然的に通販事業がメインとなった。もちろん我々にとって通販事業は重要だが、コロナ禍が終われば、消費者は人と直接会おうとするなど、再び外出が増えるはずだ」。
フォックストロットの新店舗
フォックストロットの新店舗は既存店よりも面積が広く、店内で食事を提供する。しかも、地元のレストランや店舗から選りすぐりの料理や商品をそろえるなど、メニューも豊富だ。今では既存店でも同様に、地元の選りすぐりの商品をならべ、その数は全体の4割を占める。他社と比較した際に、フォックストロットの特色のひとつとなっている。また食事スペースでも趣向を凝らし、ランチやディナーの食事にとどまらず、エスプレッソバーや夜にはワインバーも提供している。そこでもアイスクリームのジェニー(Jenni)や、CBDブランドのノットポット(Not Pot)のようなD2Cブランドに加えて、ポテトチップス、グラノーラ、ポップな色のタンブラーなどのプライベートラベル商品も置いている。
このように、まさに「モダンな」コンビニ色が強い同社だが、ラビトラ氏は「楽しさだけでなく、価格とのバランスが重要だ」と強調する。
「単なるコンビニではなく、それ以上の価値提供ができる店であることを証明したい。しかし一方で、極端に高い値段をつけた、気取った店にするつもりはない。ミレニアル世代だけを考えたり、普段遣いできないような商品を置いたりしようとは考えていない。利便性を失えばもはやコンビニではない」。
フォックストロットが取りそろえる比較的安価な商品には、プライベートブランド以外にも、オレオ(Oleo)などの有名ブランドや実店舗での販売経験が少ないD2Cスタートアップの商品が含まれる。ラビトラ氏は、D2Cアプリやウェブサイト上で、「地域や店舗ごとに提携ブランドや商品を変えることは物流の面で大きな困難を伴う」としつつ、「これはフォックストロットの方針であり、今後も変えるつもりはない」と述べる。
新たな便利さの提唱
コロナ禍の到来により、米国のコンビニ業界ではさまざまな破壊的イノベーションが広まった。ガソリンスタンドを買収したセブンイレブン(Seven-Eleven)やローフエンジャグ(Loaf N’Jug)などもその一例だろう。一方、調査会社CBインサイト(CB Insights)のアナリストのジャッキー・タブズ氏は、一部のデジタルファーストのスタートアップも勢いを強めていると指摘する。
「オンライン専門のコンビニのスタートアップは、2021年上半期だけで2020年の6.5倍を超える資金調達を行っている。特にゴーパフ(goPuff)が2021年3月に行ったシリーズGラウンドの11.5億ドル(約1270億円)の資金調達は抜きん出ている。「この種のスタートアップの多くは、価格競争力を売りにしている。また配送を迅速化して、より多くの物を運ぶべく、ギグワーカーではなく専任の配達スタッフを雇用していることが多い。これらは最終的に送料を低く抑えるか無料化を実現する、消費者にとって付加価値の高いオペレーションを組み上げている」。
しかしラトビラ氏は、「これらの動き(コンビニ業界に広まったさまざまな破壊的イノベーション)によって、我々の注文から30分以内での配達や、5分以内の店舗受取サービスが何か影響を受けることはない」と、強気の姿勢を崩さない。
「創業時から配送事業を展開してきた企業として、この業務は我々のDNAに深く刻まれている。実際、これまでに構築してきた技術の8割はバックエンドの内容が中心だ。ピック&パック用ソフトウェアの開発や在庫商品の管理方法など、消費者の目に触れない部分に対するノウハウこそが、ユーザーエクスペリエンスの向上をもたらす。店舗開設にあたり、人口の密集度が高い地域において適切な店舗立地の確保さえできれば、運用面では大きな懸念事項はない」。
「地域密着した存在を目指す」
フォックストロットは将来的に都市部だけではなく、郊外にも新規店舗のオープンを予定しているという。ラビトラ氏は、いずれの店舗もECの成長とシンクロする形を想定していると話す。
「店舗設置は常に人口密度の高い都市部からスタートしているが、郊外への進出にも大きなチャンスを見込んでいる」と同氏は話し、次のように締めくくる。「ECチャネルを成長させるにあたり、各地の商品を取りそろえ、地域密着した存在を目指すことが重要だ。併せて、各地域の消費者に愛される店舗運営を行うこと。これらを適切に進めることが、フォックストロットのEC戦略である」。
[原文:Modern convenience store Foxtrot plots national expansion]
Maile McCann(翻訳:SI Japan、編集:長田真)
Photo from Foxtrot