「ミレニアルピンク」は、洋服や食品、コスメ、さらには家庭内の装飾品や自動車に至るまで、さまざまなところで使われているほど、人気だ。だが、この「ミレニアルピンク」という名前は、2016年に付けられたものであり、色そのものは新しいわけではない。この色が1950年代から、どんな変遷をたどってきたか年表にまとめた。
もしもミレニアル世代を虜にしてきた色があるとすれば、それは彼ら自身を象徴する名前のついた色だろう。「ミレニアルピンク」は、洋服や食品、コスメ、さらには家庭内の装飾品や自動車に至るまで、さまざまなところで使われている。
SNSのトラフィックを調査するイギリスの企業、ブランドウォッチ(Brandwatch)のデータによると、風船ガムよりは淡く、パステルカラーよりは濃いこの色は、2017年の上半期だけでもオンラインで3万2000回以上もメンションされたという。だが、この「ミレニアルピンク」という名前は、2016年に付けられたものであり、色そのものは新しいわけではない。
下記は、その色が象徴するものが、1950年代の典型的な主婦から、現代の性的中立性を重んじる女性へと変化していく様子を示した年表だ。
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1950年代:パステルピンクの家電製品が流行の兆しを見せる。ジェネラルエレクトリック(General Electric)や当時のケルビネーター(Kelvinator)といった会社も、ピンク一色の冷蔵庫やトースターなどの家電を販売。
1957年:ブランドは、女の子にはピンクを、男の子には青をマーケティングしはじめる。鉄道模型メーカーのライオネルが発売したピンク色のおもちゃの列車は失敗に終わる。これは、女の子が本当に欲しかったのは、実物らしい見た目の列車だったからだろう。
1967年:映画『トゥー・ウィークス・イン・セプテンバー(Two Weeks in September)』で、ブリジット・バルドーがシャンパンピンクのウィッグを着用。
1986年:映画『プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角(Pretty in Pink)』で、女優のモリー・リングウォルドが淡いピンクのポルカドット柄のドレスを着用。
1991年 秋:スーザン・G・コーメン乳がん基金(Susan G. Komen Breast Cancer Foundation)のイベント「レース・フォー・ザ・キュア(Race for the Cure)」で、はじめてピンク色のリボンが参加者に配られる。これ以降、ピンクリボンは世間での乳がんの認知のシンボルとして広まった。
1999年:写真家のユルゲン・テラーが、赤紫色の髪の毛を枕のうえに広げながらベッドに横たわる、ケイト・モスの有名な写真を撮影。
2003年:パリス・ヒルトンが自身の番組「ザ・シンプル・ライフ(The Simple Life)」で、ピンク色に溢れたライフスタイルを紹介。
2005年:ファッションデザイナーのポール・スミスが、ネオンピンクに塗られた店舗をロサンゼルスにオープン。現在、その建物は数え切れない数の写真のバックドロップとなっており、ロサンゼルスでもっとも「インスタ映えする壁」のひとつだ。
2007年:スウェーデンのファッションブランド、アクネ(Acne)、ピンク色のショッピングバッグを紹介。
2011年10月:イギリスの高級車ブランドのベントレー(Bentley)、スーザン・G・コーメン基金の募金活動の一貫で「パッション・ピンク」のコンチネンタルGT(Continental GT)をデビュー。パリス・ヒルトンはそれをすぐさま購入した。
2013年6月:ケイト・ミドルトン(ケンブリッジ公爵夫人)が、イギリスで毎年行われている「トルーピング・ザ・カラー(Trooping the Colour)」のセレモニーで、アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)の薄いピンクのコート着用したことが話題となる。
2013年10月:フランスのファッションブランド、カルヴェン(Carven)、セリーヌ(Céline)、そしてデザイナーのジョナサン・サンダーズ(Jonathan Saunders)がパリコレクションでピンク色のコートを発表。また、スージー・メンケス氏は「かわいい、霞んだ色が来ている」と、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)に寄稿している。
2014年1月:ノーマン・コペンハーゲン(Normann Copenhagen)など、スカンジナビア出身のデザイナーの影響もあり、Pinterest(ピンタレスト)で「スカンジナビアンピンク」が流行。コペンハーゲンのウェブサイトでは、「モノクロのスタイルとピンクは、2017年のインテリアやデザインのトレンドとなると信じている」と書かれている。
2014年3月:ウェス・アンダーソン監督の映画『グランド・ブダペスト・ホテル(The Grand Budapest Hotel)』のムービープレミアが公開。
2014年5月6日:アメリカの小売店、ナスティ・ギャル(Nasty Gal)の創設者、ソフィア・アモルーソ氏が発行した最初の著書『#ガールボス(#Girlboss)』のカバーで、薄いピンク色が背景色として使われた。
2014年12月:ピンクに関連したものとして、「#palepink」がTumblr(タンブラー)でもっとも有名なハッシュタグとなる。ユーザーのシェア数があまりにも多くなったため、この色は「タンブラーピンク」と呼ばれるようになった。
2015年6月:ロンドンの美術館テート・モダンが、淡いピンクや青を基調とした作品で知られるアメリカの画家、アグネス・マーティンの回顧展を開催。この巡回展は、パントン(Pantone)の「カラー・オブ・ザ・イヤー2016」の決定材料の一部となった。
2015年 夏:「ファット・ジュー(The Fat Jew)」という名前で知られる、インスタグラムで人気のジョッシュ・オストロフスキーが、オリジナルの「ホワイト・ガール・ロゼ(White Girl Rosé)」というワインのラベルを制作。
2015年9月:AppleがiPhone 6sのカラーバリエーションとしてローズゴールドを発表。
2015年10月:アメリカの下着メーカーのシンクス(Thinx)が、生理用ショーツの発表のキャンペーンで、ほとんどプラムに近い柔らかい色合いの背景に、皮が剥かれたグレーブフルーツの写真を使用。
2015年12月:パントンは「2016年の色」として、落ち着いた色合いのセレニティブルーとともに、ローズクォーツ(Rose Quartz)を選定。
パントンカラー研究所のエグゼクティブディレクター、リートリス・アイズマン氏は、この色は「強さと優しさのバランスを表したものだ。人々はみな、自分の強さと同時に、愛情を示したいのだ」と語っている。
2015年7月:ミュージシャンのドレイク(Drake)は、自身のアルバム「ホットライン・ブリング(Hotline Bling)」のアルバムカバーに、落ち着いた色合いのピンクの背景に白地で「1-800-HOTLINEBLING」と書かれたデザインを採用。
2016年1月:高級スニーカーのブランド、コモン・プロジェクツ(Common Projects)が、ユニセックスの「アキレス(Achilles)」のパステルピンクのモデルを紹介。
2016年2月11日:ニューヨークコレクションに出演したモデルの爪に、淡いピンクの色合いのマニキュアが施される。アメリカのファッション誌『Wマガジン(W Magazine)』によると、この色を使うようにランウェイを歩くモデルたちにリクエストしたのは、デザイナーのアレキサンダー・ワン本人だったという。
2016年9月:ピンク一色のレストラン、ピエトロ・ノリータ(Pietro NoLita)が、そのニューヨーク店のオープンにあたり、その装飾に合わせて「クソみたいにピンク(Pink as Fuck)」という言葉をプリントしたTシャツとマグカップを使用。
2016年9月28日:シンガーのリアーナが、パリコレクションでフェンティ(Fenty)とプーマ(Puma)とのコレクションでピンク色のサテンボイラースーツを着た男性モデルを採用。それは間もなく売り切れた。
2016年12月:美容ブランドのグロッシアー(Golssier)が、そのブランドの象徴とも言えるペールピンク一色に塗られた第1号店をオープン。この色を使った意図は、ピンクという色を女性のイメージから切り離し、より中性的な印象を与えるためだ、とブログに書き込んでいる。
2016年2月:フランスのル・クルーゼ(Le Creuset)が、ハイビスカス色のキッチンウェアである「オアシス(Oasis)」コレクションを発表。
2017年1月:パリコレクションでは、シャネル(Chanel)が発表したピンクのツイードスーツなど、ほとんどすべてのデザイナーがベイビーピンクをあしらった作品を発表。
2017年1月4日:高級パフュームやコスメ関連製品を手がけるフランスのランコム(Lancôme)が、「アブソリュートリー・ローズ(Absolutely Rose)」という化粧品のコレクションを発表。
2017年4月10日:スターバックスが、非公開だった「ピンクドリンク(Pink Drink)」を公式にレギュラーメニューとして追加。
2017年4月22日:マーケティングリサーチ会社ニールセン(Nielsen)によると、ワイン市場ではそのほかの種類のワインと比べて、ロゼワインが「前代未聞」の売れ行きだという。2017年4月だけを見ても、売り上げは70%増の20億7000万ドル(約2300億円)。
2017年5月:ブランドウォッチによると、女優のゾーイ・クラヴィッツが世界最大のファッションイベント、メットガラ(Met Gala)に行ったときに着ていたオスカー・デ・ラ・レンタの肩を露出したミレニアムピンクのドレスが、SNS全体で1800回メンションされた。
2017年6月:ピンク色に染まった湖の写真がインスタグラムで大流行。オーストラリアの観光客がその「ピンク湖」だけを特集したWebページを開設。
2017年7月19日:ナイキが「クロムブラッシュ」という23製品のスポーツウェアのコレクションを発表。
2017年7月26日:女優のカイリー・ジェンナーが手がける有名な化粧品ブランド、カイリー・コスメティクス(Kylie Cosmetics)が、8月に発表されるミレニアルピンクコレクションを1390万本もの花とともにインスタグラムで予告。
2017年7月27日:Pinterestが「2017年の新学期」の調査で、「ミレニアルピンク」が一番多かった(昨年比で100%増)検索ワードだったことを明かした。
2017年 夏:ノードストローム(Nordstrom)、クレート&バレル(Crate & Barrel)、またケイト・スペード(Kate Spade)などのブランドが目をつけたことにより、フラミンゴはこの夏、金の匂いがする。