ケンダル・ジェナーを起用した、ペプシの最新広告は大きな批難を浴びた。昨今の政治状況を理解していないと認識されたのだ。このクリエイティブは、ペプシのインハウスエージェンシーによって制作されたものだった。そのため、批判相手を探す業界の矛先は、ブランドの社内スタジオに向けられている。
インハウスのコンテンツスタジオが業界のトレンドになっている。
だが、ケンダル・ジェナーを起用した、ペプシの最新広告は大きな批難を浴びた。写真撮影を飛び出したジェナーが、街頭デモに参加し、警官にペプシを手渡すという内容は、昨今の政治状況を理解していないと認識されたのだ。
このクリエイティブは、ペプシのインハウスエージェンシー「クリエイターズリーグ(Creators League)」によって制作されたものだった。そのため、批判相手を探す業界の矛先は、ブランドの社内スタジオに向けられている。
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エージェンシーからコンテンツのコントロールを取り返すため、そしてコストをコントロールするため、ブランドはますます自社持ちのクリエイティブスタジオに傾倒しはじめていた。そんななかでペプシの失態が槍玉に挙げられたのだ。
チャールストンで開催されたDIGIDAYブランドサミット(DIGIDAY BRAND SUMMIT)において、マリオット、フェンダー、アヴネット、ハローフレッシュといったブランドのシニアマーケティングエグゼクティブたちに、クリエイティブを社内に持ち込むことについて意見を聞いた。以下はその回答である。読み易さのために若干の編集を加えてある。
トレンドに変化は起きない
アマンダ・ムーア氏
マリオット・インターナショナル ソーシャル・デジタルマーケティング部門シニアディレクター
ペプシの一件が私たちの社内クリエイティブに対するアプローチに大きく変化を与えるとは思わない。普通はコンテンツを公開する前にフォーカスグループで人々の反応を調べて、内容を調整するという作業をするからだ。
私はソーシャルをマネージメントするための6人編成のチームを抱えており、私たちのコンテンツスタジオは通常テレビCMではなく短編のフィルムを制作する。そのため、いくつかのキャンペーンでは、外部のエージェンシーを雇うことは、まだあるのだ。
たとえば先日、Snapchat(スナップチャット)の「ディスカバー(Discover)」向けの5つのエピソードを制作しようとした。しかし、我々のチームが制作した最初のエピソードは、納得できる出来ではなかったため、そのアイデアを実現するためには、外部に助けが必要だと気付いたのだ。
そのため、コンセプトは内部でデザインされたが、ストーリーボードに1社、プロダクションに1社、エージェンシーを雇った。
バランスの良い中間点が必要
ケビン・セラーズ氏
アヴネット 最高マーケティング責任者
どんな企業であれ、いきなりインハウススタジオを導入するのは、大きな間違いだと思う。縦に特化した業界にいる人々は、横に広がる視線を持つ人たちと、エンゲージすることができないからだ。外部エージェンシーを雇っていれば、ペプシは例のCMの失敗も防げただろう。
我々も小規模なコンテンツチームを擁しているが、そこでは主にビデオやソーシャルに対応している。テレビ向けプロダクションに関しては、いまだにエージェンシーを雇っている。
自社でエージェンシーを抱えることのメリットは、多くのコンテンツを早く、安く作れることだ。すべてのコンテンツを外部エージェンシーに委託してしまうと、コンテンツに対するコントロールを失ってしまう。ソーシャルメディアのような回転率の高いものは、特にそうだ。
ブランドが探すべきなのは、バランスの良い中間点だ。
外部リソースは使い方次第
マシュー・フィッツジェラルド氏
ハロー・フレッシュ マーケティング・バイスプレジデント
私たちは、いままさに自社でコンテンツを作るプロセスの最中だ。これは我々が属しているカテゴリが、リアルタイムで常にオンの状態であることを求められるもので、プロダクションのニーズが存在しているからだ。
たとえば、この1月には雑誌を発行したし、毎週レシピカードを出している。そのため内部でチームを擁してプロダクションの均一化を図る必要があるのだ。
また、私たちは消費者と直接やり取りをする企業で、内部のクリエイティブスタッフも毎日買い物客とコミュニケーションを取り、彼らからフィードバックを受け取っている。消費者との近さはサードパーティに委託することはできない。
しかし、だからと言って、エージェンシーを雇う可能性を全く排除しているわけではない。テレビCMといった大きなプロダクション力が必要なものであれば、外部エージェンシーを雇っている。ペプシのように強力なプロダクション能力を持っていたとしても、トレンドを確認するために、毎月外部エージェンシーとの接点を持つべきだと思う。
エージェンシーはいつも複数のオプションを提示する。少なくともひとつは、自分たちのアプローチに疑問を投げかけるような物があるはずだ。
リソース内容によって変化する
BJ カレッタ氏
フェンダー デジタルブランド・マーケティング部門バイスプレジデント
問題の回答はブランドによって、またそのブランドが何をリソースとして抱えているかによって完全に変わる。我々に関して言うと、社内に極めて優れたクリエイティブチームを持っているのに加えて、我々が「フレンドリーズ(仲の良い人たち)」と呼んでいる外部のエージェンシーとは、毎日一緒に仕事をしている。
ときおり、外部のエージェンシーにプロジェクトを委託することはあるが、結局はブランドのマネージメント、顧客にメッセージを送ること、そしてフェンダーにとってベストなものを私たちが把握することにおいて、私たちの責任へと戻ってくる。
Yuyu Chen(原文 / 訳:塚本 紺)