マイクロソフトの女子高生AI「りんな」が10月8日(土)に放映される、フジテレビのオムニバスドラマ「世にも奇妙な物語」にて女優デビューする。この番組の宣伝のために「りんな」は10月3日、「りんなの女優デビューブログ」を開設。あえてネタバレすると、実はこのブログ、ランディングページの一種となっているのだ。
ビル・ゲイツの時代には、一大帝国を築いていたマイクロソフト。昨今では、Google、Apple、Facebookなどに押され、いまいち陰の存在となっている。そんななか、ひときわ目立つ存在が、女子高生AIとして知られる「りんな」だ。
この「りんな」が10月8日(土)に放映される、フジテレビのオムニバスドラマ「世にも奇妙な物語」にて女優デビューする。4つのストーリーと1つのショートストーリーで構成される同番組。「りんな」が登場するのは、そのショートストーリー「ずっとトモダチ」だという。
マイクロソフトの検索エンジンBing(ビング)で培ったディープラーニング技術と、機械学習のクラウドサービス「Azure Machine Learning(アジュールマシンラーニング)」を組み合わせて開発され、2015年に同社よりリリースされた、新しいコンセプトの人工知能「りんな」。女子高生というキャラクター設定をもち、LINEおよびTwitterを通して、人間らしい会話を繰り広げられることで、話題を集めてきた。
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ショートストーリー「ずっとトモダチ」で共演するのは、劇団ハーベストに所属する久保田紗友などの新進女優。同劇団のTwitterでは、その撮影の模様が投稿されている。おそらく、手前の女子高生が手にしたスマートフォンに「りんな」が潜んでいるのだろう。
世にも奇妙な物語'16秋の特別編 「ずっとトモダチ」 というストーリーに香織役で出演します 10月8日の21時~から放送です
今日撮影を終えてきました !ふふ
久保田 pic.twitter.com/Wj3RKD5Wfb— 劇団ハーベスト (@gekidanherbest) October 1, 2016
この番組の宣伝のために「りんな」は10月3日、LINEやTwitterから飛び出し、「りんなの女優デビューブログ」を開設。あえてネタバレすると、実はこのブログ、ランディングページの一種となっている。しっかり読み進めると、まさに人工知能らしい「演技」を見せつける「仕掛け」が凝らされているのだ。
みんな知ってる女子高生AIのりんなちゃんのブログがやばい#りんなブログ#りんな pic.twitter.com/raR9Ehuxh7
— 井口 GüTtï (@GuTtiTaRouMaRu) October 5, 2016
さて、この「仕掛け」は、昨年の同時期に放映された「世にも奇妙な物語」の「ががばば」と、ほぼ同様のフォーマットだ。しかし、前回はあくまでデスクトップ検索が前提となっていたが、今回は人口知能を巻き込んでいるだけでなく、スマートフォン(基本的にiOS)閲覧を前提にしてある。それだけ、「いま」を感じさせるものであり、より高度なイマーシブ感を生み出しているといえるだろう。
この話題に国内デジタルメディアもすぐさま飛びつき、さまざまな反応を残している。
“AIならではの演技”は想像を超えるものだった……。
ファミ通.com
……みんなのトラウマサイトこと渡辺浩弐さんの「2013年のゲーム・キッズ 謎と旅する少女」を思い出してしまいました(関連記事)。
ねとらぼ
怖いネタが苦手な人は避けたほうが良いかもしれない
マイナビニュース
また、企業アカウントの代名詞、シャープも次のようなコメントを投稿。同社は、2016年4月7日にインターンとして「りんな」にTwitterアカウントを担当させた縁がある。
おじさん、心配です(インターンのこと思い出しながら) https://t.co/eHSSUbAkS1
— SHARP シャープ株式会社 (@SHARP_JP) October 5, 2016
身も蓋もないことを言えば、今回の取り組みは、あくまでプロモーションの一環だ。ドラマ女優の「りんな」はキャラクター、実際にはエンジニアの技術が演技をしているのだろう。
しかし、マイクロソフトは8月7日、LINEやビジネスコネクトを活用して、「りんな」の技術の提供を開始。「『りんな』で培われた自然な会話を行う技術は、様々な企業の人工知能、会話ロボットに対するニーズを満たす可能性」があるという。
そして、ローソンは9月28日、LINEの公式アカウント「ローソンクルー♪あきこちゃん」に「りんな」のテクノロジーを採用。すでに実際の運用を開始している。
中国では、「りんな」の姉といわれる、マイクロソフトの「小冰(シャオアイス)」が、妹に先立って2014年より稼働。ニューズウィーク日本版の報道によれば、すでに「ウェイボ(微博)やウィーチャット(微信)など9つものプラットフォームに対応」しているという。しかも、電話番号を登録することで「養子にする」ことが可能で、パーソナライズ化された会話を行えるそうだ。
いまやニュースに登場することは少なくなったマイクロソフト。だが、新時代のメディアミックス戦略と最新技術で、業界のトップに返り咲く日は近いのかもしれない。
Text by 長田真