デニムのローンチは、ブランドにとってかなりリスキーだ。ひとつには、その返品率がファッションカテゴリーのなかでもっとも高いことにある。しかし同時に、大きなブランドロイヤルティを促進する可能性もある。一度気に入ったデニムのス […]
デニムのローンチは、ブランドにとってかなりリスキーだ。ひとつには、その返品率がファッションカテゴリーのなかでもっとも高いことにある。しかし同時に、大きなブランドロイヤルティを促進する可能性もある。一度気に入ったデニムのスタイルを見つけた顧客は、同じブランドで次の1着を購入する傾向があるのだ。
カンザス州を拠点とするアパレルブランドのメルシー(Mersea)は、この10月にデニムをローンチした。まずは旅行に特化した4種類のデニムのスタイルを各188ドル(約2万8000円)で発売し、2024年には新しいスタイルを発売する。メルシーは10年前に旅行用に作られたラップスタイルのレイヤーを中心にローンチしたブランドで、昨年はより幅広いアパレルラインを発表している。2022年の同社の売上は1500万ドル(約22.5億円)、売上の60%はD2Cのeコマースサイト、40%は卸売りによるものだ。アンソロポロジー(Anthropologie)やランズエンド(Lands’ End)を含む全米1000店舗以上で販売されている。同ブランドはまた小規模な小売店にも注力し、従業員や顧客のフィードバックからかなり多くのことを学んでいる。メルシーはつねにみずからの努力によって利益を上げてきた。
30代から50代の旅行者をターゲットとするメルシーは、旅行に特化したデニムスタイルを販売する唯一のブランドではない。2022年、フレイム(Frame)はボタンやジップのないデニムスタイルのジェットセット(Jetset)を発売した。一方、メルシーのスタイルは、4Wayストレッチと、従来のフロントボタンの代わりにウエストにサイドジッパーが付いているのが特徴である。
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不況時には消費者に人気があるデニム
デニムは耐久性に優れた生地であり、多くの消費者がさまざまなシーンで着用できる長持ちする服を求めることから、不況時に人気がある。業界分析会社テックナビオ(Technavio)によると、2022年の世界のデニム市場規模は271億ドル(約4.1兆円)で、2027年には350億ドル(約5.2兆円)以上に成長すると予想されている。サステナブルデニムやヴィンテージスタイルの台頭がその成長を加速させている。
メルシーはデニムのローンチで、顧客ロイヤリティの向上を目指す。コットン製品の顧客データを追跡しているライフスタイルモニター(Lifestyle Monitor)の2023年5月の調査によると、顧客はレギンスなどほかのどのパンツよりも、デニムを着用している。回答者の34%が、もっともよく履くパンツとしてデニムを選び、82%が来年さらにデニムを購入する予定だと答えた。
「アパレルに本格的に力を入れ始めたとき、デニムはさらに重要になった」と、メルシーの共同創業者であるリナ・ディキンソン氏は言う。「インスタグラムや店頭で、顧客にクローゼットに持っているもので、いつも着ているものは何か聞いたところ、その答えはデニムだった」。
成功のカギを握るのはデニムのフィット感
デニムはブランドによってフィット感が異なるため、フィット感の問題で返品されることが多い。顧客の維持と信頼を築くには、フィット感を学び、デニムのデザインを引き立てることが重要だ。メルシーは、フレイムの元幹部を雇い、同社初のデニムコレクションのデザイン、マーケティング、製造などの方法についてアドバイスを求めた。創業11年のフレイムは、2022年に1億7000万ドル(約254.8億円)の売上を記録した影響力のあるモダンなデニムブランドで、セレブリティやモデルのファンも多い。メルシーでは、半年にわたってさまざまなモデルでスタイルをテストし、デニムのフィット感を開発した。メルシーのデニムは、低い環境フットプリントの維持を重視する製造業者を通じてトルコで生産されている。
「デニムに参入する際には、自分が何をしているのかを知らなければなならない」とディキンソン氏は言う。「私たちがシンプルなアイテムでスタートしたのは、顧客が快適さ、機能性、信頼性を求めているからだ」。ブランドは今回のローンチのマーケティングにあたって、ブランドの友人でインスピレーショナルな女性を起用し、今回のローンチのマーケティングを行っており、10月にはブランドのインスタグラムでもキャンペーンを展開する予定だ。
ディキンソン氏は「顧客の声に耳を傾け、ある程度の失敗を覚悟し、そこから学ぶことも必要だ」と付け加えた。
2024年春、メルシーは小売パートナー向けに、まだ検証されていない未知のデニムカテゴリーを購入する際のリスク低減を中心としたプログラムを導入する。このプログラムでは、60日以内であれば注文したデニムの一部を返品することができる。「同時に、このプログラムによって私たちがほしいフィードバックも得られるだろう」とディキンソン氏は述べた。「それは世界のメイシーズ(Macy’s)やノードストローム(the Nordstroms)ではできないことだ」。
[原文:Mersea launches denim in bid for customer loyalty]
ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)