高級ブランドの大半が直面している大きな課題のひとつは、ブランドの高級感を失わずに、若年層へいかにアピールできるかということだ。
ドイツの高級車ブランド、メルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz)にとって、それはつまり、インフルエンサーとコラボしてソーシャル上に魅力的なコンテンツをつくることだ。ブランドのアイデンティティを伝えるとともに、ミレニアル世代へメルセデス・ベンツに興味をもってもらえる。
高級ブランドの大半が直面している大きな課題のひとつは、ブランドの高級感を失わずに、若年層へいかにアピールできるかということだ。
ドイツの高級車ブランド、メルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz)にとって、それはつまり、インフルエンサーとコラボしてソーシャル上に魅力的なコンテンツをつくることだ。ブランドのアイデンティティを伝えるとともに、ミレニアル世代へメルセデス・ベンツに興味をもってもらえる。
パルクール選手と競争
2016年4月、メルセデス・ベンツは、「MBフォトパス(MB Photo Pass)」と呼ばれるプログラムを開始した。これを通してメルセデス・ベンツは、映像作家や写真家、オオカミ犬のロキをはじめとする、約25人のインフルエンサーたちと協働。インスタグラムやFacebook、Snapchat(スナップチャット)、Pinterest(ピンタレスト)、YouTubeなどで、幅広くコンテンツ配信している。
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メルセデス・ベンツとそのエージェンシーであるレイザーフィッシュ(Razorfish)は、YouTubeインフルエンサーでエクストリームスポーツを専門とする映像作家、デビン・スーパー・トランプ氏(チャンネル登録者数は約420万人)とタッグを組み、映像を制作した。障害物コースでパルクール(身体を自由に動かす鍛錬を目的としたスポーツアクティビティー)の選手やラジコンカーと競争する、2017年モデルのメルセデス・ベンツ「Cクラスクーペ」をフィーチャーした動画「The Ultimate Race!(究極のレース!)」は、現在までに230万回以上の視聴回数を獲得している。
「このクルマを欲しい人が増えれば増えるほど、Cクラスクーペは価値のあるクルマになる。ソーシャルのおかげで、メルセデス・ベンツに興味をもってくれる若い消費者が増えている」と、メルセデス・ベンツUSAのマーケティング部門ゼネラルマネージャー、マーク・エイクマン氏は語る。「我々は消費者が『ワクワク』するコンテンツをつくり、彼らのオンライン体験を、まるで実際のショールームに足を踏み入れたかのような、情緒豊かで力強いものにしたいと思っている」。
インスタのアイドル犬と共演
メルセデス・ベンツは高級車とエクストリームスポーツ愛好家の関心を惹くことばかりを追い求めているわけではない。情緒的な訴えでブランデッドコンテンツを作ることもある。
メルセデス・ベンツは2016年3月、制作会社MSPとコラボして、スポーツ・ユーティリティ・ビークル(SUV)「GLS」の2017年モデルに向けて、ブランド初となる360度動画体験を作り上げた。その動画では、インスタグラムで有名なウルフドッグ(狼犬)のロキが、飼い主であるケリー・ランド氏の運転する2017年モデルGLSと並んで、雪と常緑樹に覆われた美しい山々を疾走し、コロラド州のクレステッドビュートの景観をロキの目線で紹介している。
「インフルエンサーは、我々が独力では成し得ないストーリーを伝える力を貸してくれる。たとえば、このキャンペーンで我々が気に入っているのは、ロキとケリーの繋がりだ。我々の商品についての仕様を述べる必要はないと思った。動画がこのクルマがいかに素晴らしいかを示してくれているからだ」と、エイクマン氏は語る。
クルマ好きは少々物足りない
しかし、インスタグラムでは、それだけでは十分ではない。カーレースをこよなく愛する、エージェンシーのキング・アンド・パートナーズ(King & Partners)のCEOトニー・キング氏は、メルセデス・ベンツのインスタグラムは「少し退屈で保守的」だと考えている。
「もっと動画があってもいい」と、キング氏は語る。「私は動いているクルマが見たい。エンジンの音が聞きたい。前輪を斜め45度の角度で駐車しているクルマは、あまり見たくない」。
道路は過大評価されている。@mercedesbenz_deよりメルセデス・ベンツ「Gクラス」
キング氏は、メルセデス・ベンツがフォロワーの生活をより良いものにし、普通なら決して行かない場所にも行けることをクリエイティブで伝えたうえで、商品のクルマについての詳細見せるべきだという。たとえば、フォロワーが関心をもっている人々の発言や動画を用いて、旅行に行くストーリーを制作し、動画の後半で彼らが乗るクルマの詳細な情報を紹介することが出来ればクールだろうと語る。
実際の効果は出ている模様
それでも、デジタルマーケティング会社アモビー(Amobee)によると、1月から現在までの期間、デジタルコンテンツのエンゲージメントにおいて、メルセデス・ベンツは、アウディ(Audi)より72%、BMWより97%高い、インスタグラムとの関連性を示したという。つまり、人々はかなりの頻度で、メルセデス・ベンツとインスタグラムの両方を言及している記事や投稿などのコンテンツを読んでいるということだ。たとえば、そのコンテンツはインスタグラムインフルエンサーによるメルセデス・ベンツをフィーチャーした画像かもしれない。
自動車マーケティング会社ジャンプスタート(Jumpstart)が2016年6月に発表した調査では、メルセデス・ベンツは高級車購買層において全体の関心の13%占有しており、高級車ブランド部門で第2位にランクされている。2015年上期と比較して24%の上昇だ。1位はBMWで、6月の時点で高級車購買層の関心の15%を占有しているが、2015年上期と比較すると7%下落している。
ジャンプスタートで戦略インサイト・分析部門バイスプレジデントを務めるリビー・ムラド=パテル氏は、「現在、メルセデス・ベンツは全セグメントにわたって好業績をあげている。なかでもSUVとCUVが好調だ。我々の調査から、メルセデス・ベンツ購入者の41%が、これら2つのカテゴリーに強い関心をもっていることがわかった」と述べている。
本物のストーリーがそこにある
インフルエンサーに金をかけすぎたと考えるマーケターもいるが、メルセデス・ベンツは今後も継続して「インフルエンサーのオーディエンスによって、ブランドの製品を認知してもらう」つもりだと、エイクマン氏は語る。
さらに同氏は、次のように言葉を続けた。「我々との協働を望み、我々の製品と一緒に自分たちの冒険を共有したいというインフルエンサーを見つけようとしている。メルセデス・ベンツは、その製品とともに語られ、大半のケースにおいてインフルエンサーの視点から語られる、ユーザーの本物のストーリーに常に目を向けている」。
Image from Mercedes-Benz
Yuyu Chen (原文 / 訳:ガリレオ)