LAを拠点とするCEOのデディ・シュワルツバーグ氏が考案したブランド、アディクテッド(Edikted)は、ブランド設立から1年しか経っていないのに、ハッシュタグ#ediktedはTikTok で1億8360万回も再生されている。何がバズる原因になっているのか。新たなファストファッションブランドにすぎないのか。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。
アディクテッド(Edikted)など聞いたこともないという人もいるだろうが、Z世代は間違いなく知っている。ブランド設立から1年しか経っていないのに、ハッシュタグ#edikted はTikTokで1億8360万回も再生されている。
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では、何がバズる原因になっているのだろうか。そしてこれはまた別のファストファッションブランドにすぎないのだろうか。
トレンド主導のアイテムを理解し、Z世代への訴求力に秀でている
そもそもアディクテッドとは、LAを拠点とするCEOのデディ・シュワルツバーグ氏が考案したブランドだ。シュワルツバーグ氏は別のファッション企業アディカ(Adika)で10年間一緒に働いていたチームとともにこのブランドを立ち上げた。シュワルツバーグ氏は同社の急成長について詳細な説明は避けたものの「最初の1カ月(2021年1月)で、我々のKPI(重要業績評価指標)は予想の10倍となった」と述べている。
シュワルツバーグ氏が言うように、このブランドを支えているチームは単純にZ世代への訴求力に秀でているのだ。
「Z世代はとても複雑な世代で、これまでのどの世代ともあまりにも違う」と彼は指摘する。「我々の世代とは異なり、この世代はボタンひとつで何でもできるようなテクノロジーとともに育っている。Z世代はトレンドに非常に敏感で、トレンドの移り変わりはかなり速い。トレンド主導のアイテムへの需要を理解するようになるにつれて、そうしたトレンドをすばやく提供する方法を我々は学んできた」。
シュワルツバーグ氏は、同ブランドがLAのファッションシーンからインスピレーションを得ていると述べている。「(さらに)我々はソーシャルメディア、セレブリティやストリートスタイルのファッション、ファッションショーを常にモニタリングしており、ファッションの分野で何が新しく刺激的でトレンドになりそうかをチェックしている」。
従来のファストファッションとは異なる生産方法
彼はこのブランドをファストファッションとは差別化しており、「ゼロウェイスト」だと主張する。同ブランドの主力である「トライ&リピート」方式について、「手頃な価格のファッションをいち早く生産しているが、従来のファストファッションブランドとは非常に異なる生産方法を採用している」とシュワルツバーグ氏は説明した。「新しいスタイルを発表する際、最小限のユニット数しか製造しない。顧客の需要だけを基準に生産を拡大する」。
同社は2回目の投資ラウンドを終了したばかりだというが、具体的な内容は明かしていない。アディクテッドは現在、計画よりも2、3年先に進んでいるとのことだが、それについても詳細は語らなかった。
ブランドを成長させる上でもっとも重要なのはTikTok
生産時間の速さに加えて、Z世代関連のほとんどのサクセスストーリーで最終的な要因となっているのがソーシャルメディアの機敏な活用であり、アディクテッドはそれをマスターしている。TikTokのインフルエンサーに金を払うことはないが、その代わり積極的なプレゼントとソーシャルメディア上の有料広告で成功を収めている(たとえば、同ブランドをよく着ているがタグ付けはしていないインフルエンサー(アディソン・レイ氏など)にアディクテッドは製品を送る。その後、アディクテッドは同ブランドの服を着ているレイ氏を再投稿することができる)。アディクテッドのCMOであるデーナ・イスラエリ氏によると、TikTokはブランドを成長させる上でもっとも重要なものだという。「コロナはソーシャルメディアの世界の何もかもを変えた。TikTokは、エンターテインメントの側面から、ほかの動画プラットフォームよりも人気となった」。
昨年、#TikTokMadeMeBuyIt がバイラルになった際、アディクテッドはその瞬間をとらえ成功を収めたとイスラエリ氏は言う。ピンクのパッケージが人目を引いたのも成功の要因のひとつだった。「私たちはインフルエンサーや顧客に働きかけ、アイコニックなピンクのパッケージを写した商品紹介や開封動画を製作するよう依頼し始めた。数週間後、それがTikTokのいたるところでバイラルなトレンドとなった。顧客もこのムーブメントやコミュニティの一員になりたがっていて、こちらから依頼をしなくても、みんなが参加してくれた」。
インスタグラムのDMで24時間のカスタマーサービスを提供
何百万ものそうしたTikTokをスクロールすると、スタイルだけでなく、典型的な顧客像がとても似ていることに気づく。18歳から25歳くらいの若い女性で、とてもやせていて従来のような魅力があり、腹筋を強調するビスチェのトップスを着てカメラの前でダンスをするのを厭わない。現在流行っている2000年代の美学を好む。たとえば、ブリトニー・スピアーズ氏を彷彿とさせるような、脚にスリットが入ったパンツや、「Shit just got real(マジやばい)」 といったフレーズが印刷されたTシャツなどだ。多くの人がアディクテッドについて投稿する際に独自の割引コードを提供しているが、アディクテッドによると、これはアフィリエイトコードではない。
「私たちはアフィリエイトプログラムは持っていない。インフルエンサーやコンテンツクリエイターとコラボレーションする際、フォロワーにクーポンコードを提供したいかどうかを尋ねている。希望しなけれは、それはそれで構わない。そのコードを使用するのは友人やフォロワーに何かプレゼントできるおまけみたいなものだ。クーポンコードの投稿は必須ではない」とイスラエリ氏は説明した。
アディクテッドはTikTokを優先することに加えて、Z世代の顧客がいる場に存在することで、確実にブランドと簡単につながることができるようにしている。「インスタグラムのDMを経由して24時間のカスタマーサービスを提供している」とイスラエリ氏は言う。彼女は多くの質問にみずから答えているが、アディクテッドの成長に伴い、さらに多くのメンバーをチームに加える予定だという。現在、チームのメンバーは約60人だ。「全体として、私たちは常にフォロワーや顧客と関わり、どんな質問にも答えている。カスタマーサービスに関しては相手の話をよく聞き、パーソナルであることが非常に重要だと考えている」。
一方でシビアな試着動画を公開する若者も
アディクテッドについて調査するなか、23歳のコンテンツクリエイター、キャシー・ダイアモンド氏(YouTubeのフォロワー数73万3000人)が2021年11月初旬に投稿した23分間の動画を見つけたが、その情報量と公平なレビューに感銘を受けた。その動画には「アディクテッドの秘密を暴露! 本当に価値があるの? アディクテッドの紹介とレビュー!」という、内容にふさわしいタイトルがついている。
ダイアモンド氏に連絡を取り、なぜこのブランドがこうした詳細な動画に値すると判断したのかを尋ねた。ダイアモンド氏はこの動画では報酬を得ておらず、紹介した服は自分で購入したという。「私は自分が宣伝するものに関してはかなり慎重であろうとしている」と彼女は言う。このブランドとの出会いについて聞いてみると、次のような答えが返ってきた。「ほとんどなんだか幻みたいなもので、どこからともなく現れた。『これ何?』と思っていたら、ある日突然、インスタグラムの広告やらTikTokの広告なんかに出てきて、いたるところで見かけるようになった」。何人もの仲間のインフルエンサーがこのブランドを宣伝しているのを目にするようになり、自分でもチェックしてみたくなったと彼女は言う。「こうした企業の多くは互いにつながっている」と彼女は述べ、アディカ(インスタグラムのフォロワー数85万4000人)について指摘した。これをふまえ、彼女は次のように動画を紹介している。「またしてもインスタグラムのターゲット広告のアパレル企業。資本主義の爪が私を再び引きずり込む。我が友よ、資本主義に乾杯」。
ダイアモンド氏の動画でいちばん面白いのは、彼女が「ED」という文字がプリントされたスウェットパンツを試着するところだ(14分40秒頃)。「EDは何かの略だと思う」と彼女は言い、コオロギの鳴き声が流れる画面に切り替わる。そして「意味をググってみよう……はい、みんな! これは私の勃起機能不全パンツだって! じゃあ、返品してこよう」。
品質や多様性に関しては疑問点も指摘されている
アディクテッドだけでなく、その競合ブランドについても、ダイアモンド氏は「本当にかわいい」と言う。「でも、どうして40ドルも出して3回着ただけで文字通り破壊するようなトップスを買うというのか」。また彼女は「プラスサイズ(のモデル)や様々な人種、バックグラウンドを持つモデルがあまりいない点も気になる」と指摘している。
イスラエル氏によると、同社では品質に関する苦情を受けた場合、「顧客に連絡を取って謝罪し、どうすれば改善できるかを尋ね、製品の再送を提案している」。
「サプライチェーンでしっかり品質管理をしているため、そのようなことはめったにない。商品は市場にあるほかのファストファッションブランドに比べればはるかに高品質で、だからこそ高いプライスポイントになっている」とイスラエル氏は述べている。価格帯は3ドル(約344円)から120ドル(約1万3760円)だ。
アディクテッドは、現在44.50ドル(約5100円)で販売されているルナ・フレア・フォーレザージーン(Luna Flare Faux Leather Jean)がバイラルになったことで多くの人に知られている。ダイアモンド氏も一着持っている。そして「アディクテッドのルナ・フレア・フォーレザージーンのスタイリング」とラベルのついた彼女の投稿に、TikTokerの@quinnoel_が「@edikted sponsor me」というキャプションを使用している。明らかに、TikTokはアディクテッドの流行に乗りたいのだ。
トレンドのサイクルはかつてよりも短くなっている。「2カ月くらい」とダイアモンド氏は言い、何もかもが速いことは精神衛生にも影響を及ぼすと付け加えた。「TikTokでバイラルになっているパンツを見て、自分と他人をつい比べてしまう」。アディクテッドのアリーメッシュコルセットトップ(Aly Mesh Corset Top)もヒットしている。サイズ展開はLサイズまでだ。
ファストファッションは変化しているかもしれないし、以前よりもサステナブルになっているかもしれない。だが明らかに、死んではいないのだ。
[原文:Meet Edikted, Gen Z’s new favorite brand]
SARA SPRUCH-FEINER(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)