サブスク会員100万人を目指す、 Medium のイバラ道:メディア提携を目論む背景

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Medium(ミディアム)は自らをパブリッシャーでありプラットフォームでもあると位置づけている。そして創設者のイブ・ウィリアムズ氏は、同社がこれからもサブスクリプション登録者を増やし続けるためには、社外編集者やほかのパブリッシャーとの提携が欠かせないと考えている。だが、Mediumは2011年に創設されてから、幾度も戦略の方向性を変えてきたため、提携の実現にはパブリッシャーに対する説得力が求められる。

Mediumの収益源は、月額5ドル(約560円)または年額50ドル(約5600円)のサブスクリプションサービスのみとなっている。ここ2カ月で同社は作家のロクサーヌ・ゲイ氏によるポップアップ形式の雑誌やベテラン料理作家のマーク・ビットマン氏による料理の月刊雑誌の掲載、さらにチェダー(Cheddar)との報道記事の掲載も発表しており、Medium上で自らのタイトルを冠した記事を発表したいと考えているパブリッシャーや作家の注目を集めている。

Mediumはこの戦略に多額の投資を行っており、その投資額は2018年で5億ドル(約550億円)近くに達した。ウィリアムズ氏は2019年の投資額はこれを上回るだろうと述べており、新しい目標に向けて着実な進捗を見せているという。同社はベンチャーキャピタルの支援を受けており、同社の事情に詳しい関係者によると2020年までにサブスクリプションの契約者を100万人まで増やすことを目標に掲げているという。ウィリアムズ氏は具体的な数字については社内目標であり公表はしないとしている。

Mediumの売りと現実

Mediumは提携する作家や編集者への報酬関連の契約でさまざまな形式を用意している。Mediumの会員が記事を読むのにかけた時間に応じた支払いのほか、記事1本ごとのシンジケーション、シンジケーション契約による一括料金などだ。サードパーティのパブリッシャーが作成する記事はMedium専用にすることもできるし、複数プラットフォームで同時配信することもできる。提携するパブリッシャーへの支払いは、Mediumでコンテンツが読まれた場合にのみ行われる場合もあり、保証料金が設定される場合もある。

ウィリアムズ氏は次のように語る。「当社のコンテンツ投資については、投資ポートフォリオのように捉えている。ライセンス契約やオリジナルコンテンツか否か、コンテンツを所有するかそれとも運用のみか、独占記事かどうか、といったさまざまな要素が存在する。だが、いずれの方法も、可能な限り付加価値を高めるための手段たりうるものとして捉えている」。

Mediumがサブスクリプション契約者の目標数を達成するためには、今後もメディア各社に根付いた懐疑的な見方を変えていく努力が求められる。現在Mediumだけでなくプラットフォームというもの自体に懐疑的な目が向けられており、パブリッシャー各社はより自社内でビジネスチャンスを実現しようと試みる傾向がある。

パブリッシャーの本音

懐疑的な観測筋のなかには、Mediumはすでに今回に近い取り組みを試みたことがあるとする見方もある。同社は自社プラットフォーム上で掲載するためにバックチャンネル(Backchannel)やキューポイント(Cuepoint)といった自社タイトルを立ち上げ、その後シンクプログレス(ThinkProgress)やリンガー(The Ringer)といったパブリッシャーのプラットフォーム上での掲載用に売り込んだ過去がある。そして、これらタイトルは売却や廃刊することとなり、2017年初頭にMediumの提携パブリッシャーが明かしたところによると、かなり突然な形で同社との契約も打ち切られることになったという。

ウィリアムズ氏は、Mediumへの懐疑論は同社の遂げた進化への誤解から生じていると主張するが、Mediumの動向を追っている元社員らは、本当に誤解なのか確信は持てないと語る。

ある元社員は「私はMediumの成功を望んでいる。だから成功するために過去から学んでほしい」と明かす。「だが現状を見ると過去から本当に学んでいるのか、それとも同じ過ちを繰り返そうとしているのか判断できない」。

どっちつかずの動き

Mediumによるコンテンツ投資でもっとも注目を集めているのが同社のパートナープログラムだ。何万人というライターが同社のプラットフォームで収益を得ている。Mediumを主要な収入源としているライターは少ないが、記事掲載によってかなりの報酬を得ているケースは多い。昨年、Mediumが支払った報酬の大半は、寄稿者プログラムを通じて支払われている。

それにもかかわらず、同社はいまだにパブリッシャーとの関係構築を目指している。ブルームバーグ(Bloomberg)は昨年12月末の報道で、同社によるニューヨーク・マガジン(New York Magazine)の親会社であるニューヨーク・メディアの買収に関する話し合いを報じた。この話はすぐに立ち消えとなったが、買収以外の可能性も模索されていた。この件について詳しい関係者2人によると、両社はブランド提携のコンテンツプロジェクトについても話し合っていたという(ニューヨーク・メディアからはこの件についてコメントは得られなかった)。

Mediumが売り込みをかけたのはニューヨーク・マガジンだけではない。Mediumでコンテンツを掲載しているあるパブリッシャーの社員は、2018年後半にMediumは多数のパブリッシャーに接近していたと語る。対象はデジタルネイティブのパブリッシャーからレガシーパブリッシャーまで多岐にわたり、ブランド提携を行った雑誌の発行について話し合いが行われたとのことだ。

Apple News+同様か

この提案に応じたパブリッシャーの数については不明だが、パブリッシャーがAppleによるApple News+立ち上げ時に抱いたような懸念を覚えたであろうことは想像に難くない。

Apple News+と同様、Mediumに掲載されたコンテンツはMediumのエコシステム内から出ることはない。パブリッシャーからすれば、これではオーディエンスと直接関係を構築してサブスクリプション契約を獲得するのは困難だ。ほかにもApple News+と同様に、広告によるコンテンツの収益化ができないことを問題視するパブリッシャーもいるだろう。

ウィリアムズ氏はMediumがいかに幅広い契約形態に応じているかを強調している。だが複数のパブリッシャーが増収になるだけではだめで、主要事業への明確なリターンや価値がなければMediumでプロジェクトを行う意義はないと口をそろえる。

リソースの奪い合いも

同パブリッシャー社員は、Medium上で雑誌を発刊するには事業目標への寄与が必要であり「自分たちのサイトに割り振れるリソースですら限られており、それ以外に割けるリソースはさらに限定的だ」と指摘する。

また、Mediumへの参入を考えているパブリッシャーは、Mediumが作成するコンテンツとの競争にもさらされている。2月に同社はMediumに掲載する「雑誌」4タイトルへの求人を行った。雑誌の分野は健康、科学、ビジネス、技術、一般ニュースとなっており、Mediumの当時の編集担当VP、シボーン・オコナー氏は「これは始まりに過ぎない」と語っている。

Mediumのパブリッシャーでもありプラットフォームでもあるという現状は、今後変わっていく可能性もある。ウィリアムズ氏は、同社がこれから投資していくコンテンツについて具体的に述べていない。より幅広い視点でサブスクリプション会員にコンテンツを提供していきたいというのが、その理由だ。

新役員の獲得に機会

Mediumが新たな役員を獲得することでパブリッシャーとの関係性が変化する可能性もある。米DIGIDAYに寄せられた複数の情報によると、昨年からMediumは幹部ヘッドハンターに依頼し、「ビジネスパートナー」と題して役員を探している。同社にとって理想的なのは、最高財務責任者や事業拡大に適任な役員だ。ウィリアムズ氏もまた、こうした役職の人材を探していると語っている。

とりわけ著名な人物をこの役職に獲得できた場合、現在や将来にわたって提携企業の獲得において大きな前進となる可能性がある。

エグゼクティブサーチファームのアーノルド・パートナーズ(Arnold Partners)の創設者デイブ・アーノルド氏は、「事業の箔をつけるための動きだ」と指摘する。「もしもMediumに著名な役員が加われば、Mediumへの見方に変化が生じるだろう」。

Max Willens(原文 / 訳:SI Japan)