バイエル薬品、デジタルメディア購入すべてを「内製化」:2020年までに2カ年計画で

解熱鎮痛薬「アレブ(Aleve)」やペット用ノミ・マダニ駆除薬「アドバンティクス(Advantix)」といった一般向け薬品を作っているドイツの製薬会社バイエル(Bayer)が、すべてのデジタルメディアをインハウス化する2年間のミッションを進めている。バイエルは2017年3月に、プログラマティックの社内運用の構築を開始。現在は10人からなる社内チームが、グループ・エム(Group M)のエージェンシーであるメディアコム(Mediacom)と協力してメディアバイイングに取り組んでいるが、2019年からは、メディアの戦略やプランニングからバイイングや実行まで、すべてを社内で行うため、このハイブリッドモデルをやめてインハウスのマーケティングチームを20人以上に増員する。

バイエルでデジタル戦略とプラットフォームのVPを務めるジョシュ・パラオ氏は、「本当に最先端のマーケターでいたいなら、戦略レベルだけではなく、戦術レベルからの構築について、もっと専門的な知識が必要なのだとわかった」と語る。

パラオ氏がこのことについて最初に話をしたのは、ニューヨークで10月に開催されたプログラマティックI/Oというカンファレンスのプレゼンだった。同氏によると、バイエルがメディアのインハウス化を進めることで成し遂げたい目的は、マーケティングにまつわる社内の専門知識の充実、バイイングのパフォーマンスの向上とコストの削減、エージェンシー料金の除外などさまざまだ。想定している節約額については語ろうとしなかったが、コスト削減その他の分をマーケティングに投じられるだろうという話だった。

「検索の担当者は、検索についてはとても得意だろう。しかし、サポートしている分野やカスタマージャーニーを理解すれば、さらに百人力になる」と、パラオ氏は説明する。「それにはブランドチームに入るしかない。ハイブリッドモデルでは駄目なのだ。検索担当者として良くても、15を超えるブランドにそこまで深く入ることはできない」。

「旧来型はもう機能しない」

すべてのデジタルメディアをインハウス化している会社はまれだが、サービスのインハウス化全般は、人材の問題は残るものの、強力に推し進められている。ANA(Association of National Advertisers:全米広告主協会)の推定では、いまはブランドの78%が何らかの社内組織を構築している(2013年は58%)。

「そうした動きは、おそらくは経済的だろうし、会社のDNAを共有しているぶん、チームが成功するように育てるのは簡単だろう」と語ったのは、コミュニケーションエージェンシーのマルベリー&アスター(Mulberry & Astor)の創業者、クリス・アリエリ氏だ。「旧来型の指定広告会社モデルはもう機能しないと、あらゆる規模の企業が考えるようになっている。コストが高く非効率的だし、ひとつの大きなエージェンシーがいつも最高のチーム、最高の仕事をもたらすというものではないということが多い」と、同氏は話す。

バイエルは2年間の計画に、創業6年目のプログラマティック企業、マイティハイブ(MightyHive)を採用している。パラオ氏によると、インハウス運用開始1年目として2019年1月から戦略、プランニング、分析などを行う人材の採用を開始し、バイイングの実施にはマイティハイブを活用。そのうえで、2年目までにはすべてをインハウス化し、検索からソーシャルの購入まですべてを自社で行う。

「1年目は戦略とプランニングで、2年目は購入とボタンのクリックという物理的な行動を実際に行う。デジタルを隅々まですべて自社で実施する」と、パラオ氏は語る。

移行のためのエージェンシー

パラオ氏によると、バイエルがマイティハイブのような移行のためのエージェンシーを採用する気になったのは、デジタルメディアのインハウス化に伴う苦労の多くを回避できるからだ。マイティハイブはほかのエージェンシーと違い、ある期間打ち込めば自社でやれるようになるとうたっている。

問題のひとつは人材だ。ニュージャージー州北部で働く人を確保するのは簡単ではないかもしれないとパラオ氏は語っている。マイティハイブを使うことで、移行の開始にあたって必要な人材を得られる。「すべてのデータを取り込み、社内のシステムに入れ始めると、チームの処理能力の問題が出てくる」とパラオ氏。「だからマイティハイブのようなところにサポートしてもらうのが重要なのだ」と語る。米DIGIDAYがマーケターを対象に調査を実施し、デジタルメディアをインハウス化する際の最大の障害を聞いたところ、73%が人材の採用だと答えた。

パラオ氏によると、バイエルはたとえば過去に2種類の職を経験していて、それでいてクライアント側で働くことで得られる柔軟性を求めているような専門家を集めるべく力を注いでいる。「エージェンシーやスタートアップでの仕事は大変かもしれない。我々が探しているのは、そんな日々を送り、その上で今度は別の環境で働きたい、創業100年を超える組織で仕事のやり方を変える力になりたいという人材だ」とパラオ氏は語る。

すべてのものに関する鍵

バイエルがマイティハイブを使うもうひとつの理由は、構築するすべてのものについて鍵を渡してもらえるからだ。「エージェンシーと仕事をすると、Googleについてはエージェンシーが担当するし、エージェンシーは担当を譲る必要がない。セットアップと関連するデータは、厳密には普通、エージェンシーの所有になる」とパラオ氏。「これが移行を難しくしている」。

このインハウス化により、2011年から担当してきたグループ・エムのエージェンシーであるメディアコムの仕事はバイエルに移るが、コミュニケーションのプランニングとオフラインのメディアは引き続きグループ・エムが管理する。また、キャンペーンについては、動物ビジネスはオムニコムのプロキシミティ(Proximity)とBBDO、消費者ケアの部門ではレイザーフィッシュ(Razorfish)とアイクロッシング(iCrossing)というように、引き続き外部のクリエイティブエージェンシーを複数使っている。カンター・メディア(Kantar Media)によると、バイエルは2016年、広告に年間約5億ドル(約563億円)を使っている。

Ilyse Liffreing (原文 / 訳:ガリレオ)