このコラムの著者、マーク・ダフィ(55)は、広告業界辛口ブログ「コピーランター(コピーをわめき散らす人)」の運営人。米BuzzFeedで広告批評コラムを担当していた業界通コピーライターだが、2013年に解雇を通達された。今回のテーマは、ブランディングに悪影響を与えるハッシュタグの事例について。
このコラムの著者、マーク・ダフィ(55)は、広告業界辛口ブログ「コピーランター(コピーをわめき散らす人)」の運営人。米BuzzFeedで広告批評コラムを担当していた業界通コピーライターだが、2013年に解雇を通達された。趣味のホッケーは結構うまい。
ハッシュタグには、いろいろな役割がある。社会的な運動への支援を募るために使われたり、スポーツイベントへの注目を集めたり、インスタグラムで#tbt(木曜日に昔の写真をシェアするトレンド:Throw Back Thursdayの頭文字)を使って、好きな写真を見つけたりするのに使われる。情報が溢れるソーシャル上で非常に役立つ。
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その一方で、ブランドのハッシュタグが何かの役に立つということはほとんどない。ハッシュタグ用に作られた微妙なコピーをわざわざソーシャルでシェアして、意味もなくブランドの応援をするとか、ミレニアル世代だってそんなヒマはない。多くの場合、ブランドのハッシュタグはブランディングのことをまったく理解していない「ソーシャルメディアなんとか」なんて肩書のバカが作ったりしてるもんだから、メッセージ性は混雑しているし、だいたいが意味を成していない。ときにはブランド自身が恥をかくキッカケになっている。
ハッシュタグで売上が伸びるわけではない。ハッシュタグは役に立たない。ハッシュタグには(いつもよりさらに)頭が悪く見えるという効果がある。それでもビッグブランドたちがハッシュタグを使い続けるのは、子どもと頭の悪いセレブリティーたちと(あとクリエイティブだと思われたいクリエイティブじゃない人たち)が使い続けるからだ。
今日はタグラインとして、ハッシュタグをまだ使っている頭の悪いブランドを紹介したい。
サブウェイ「#SearchForBetter(より良いものを求めて)」
私自身、サブウェイのサンドイッチ「より良いものを求め」続けてきた。これは実に簡単である。すぐ近くのコンビニかスーパーに行くか、地元のサンドイッチ屋に行くか、それか刑務所(これは服役中の元サブウェイ広報担当ジャレッド氏が証言してくれるんじゃないか)でサンドイッチを頼めばいい。どこだってサブウェイよりもウマいサンドイッチを出してくれる。
サブウェイのハッシュタグとして「より良いものを求めて」が合わないって、何で誰も指摘できなかったのか? 謎である。インターネットでは馬鹿にできそうなネタが転がっていると、大勢がそれに群がるのが習慣だ。このハッシュタグもTwitterで検索するだけで、それが分かる。
サブウェイはTVコマーシャルもなかなかヤバイ。犬を保健所からひきとって救った男の子を背景に流れるタグラインが、「新鮮な肉はもっと美味しい(because fresh means better)」だ。サブウェイに行ったことがある人なら誰でもサブウェイでガラスの向こうに並んだ肉が、どれも新鮮とは程遠い見た目なのを思い出して「ちょっと待て、新鮮な肉ってまさか…」と、ツッコミを入れたくなる。
アメリカンイーグル「#WeAllCan(僕らは皆できる)」
ファッションブランドは広告に意味の無いスカスカなハッシュタグを入れたがる。というかファッションの広告自体がそもそも意味の無いスカスカな物だ。ふわふわしたファッション系の人間たちと、さらにふわふわしたファッション写真家たちによって作られるのだから仕方ない。
アメリカンイーグルが展開した「#WeAllCan」キャンペーンのポスターがこれ。マンハッタンで数カ月前にウェスト4丁目駅で発見したもの。
よく見たら(まったくよく見なくても)分かるが、ジャケットのなかに「I CAN」という言葉が見つかる。彼らの歯が浮くようなプレスリリースによると、広告のなかの人物(えーっと、つまりモデルとかセレブってこと?)にも「できる」んだから(モデルみたいに見た目の良い遺伝子をもって産まれなかった平凡な顔の)消費者の皆も「できる」ってことらしい。
でも、何が「できる」というか。まったくもって意味不明だ。アメリカンイーグルの服を着れば、皆同じ見た目になれるとでも言いたいのだろうか。
家庭内暴力に反対する全国連合「#NotAFan(ファンじゃない)」
ダメダメダメダメ。ダメだ! 広告にルールは存在しない。けれどひとつだけ言っておきたい。スポーツに関係ない広告でスポーツをたとえに使ってはいけない。それは絶対に響かない。元スポーツ記者の言う言葉だから信じて欲しい。絶対に、響かない。
「家庭内暴力のファンじゃない」ってこと、良くわかった。ハッシュタグにしたからって、「ファンじゃない」だけで意味の通じる支援フレーズにはならない。「好きじゃない」のイディオム表現として「ニュートラルゾーントラップのファンじゃない」「リングを11フィートにまで上げる考えのファンじゃない」「アイランダーの真っ黒なユニフォームのファンじゃない」といったスポーツ文脈で使うのは良くても、この広告みたいな使い方はしない。エージェンシー:ブロンド&カンパニー(Blonde & Co.)NYC。
#これでおしまい
Mark Duffy(原文 / 訳:塚本 紺)
Photo by GettyImage