マーケ部門は、なぜいまもコストセンター扱いされるのか?

最高マーケティング責任者(CMO)は、マーケティングが事業全体にとっていかに重要かを説く。それでも、マーケティングを実際に利益をあげる部門ではなく、コストセンターとみなす風潮は、容易には覆せない。

今年7月末、最高執行責任者(CEO)や最高財務責任者(CFO)がいまだにマーケティングの価値を理解していない最新の証拠を示すかのように、Uber(ウーバー)がマーケティング部門の社員1200人のうち、400人を解雇した。これに先立ち、Uberはマーケティング部門の再編を行い、CMOのレベッカ・メッシーナ氏は退任。在任期間は1年に満たなかった。シリコンバレーの寵児といえる企業の内部でさえ、マーケティング部門はおなじみの課題に直面する。めまぐるしいリーダーの交代(CMOの平均在任期間はわずか43カ月にまで縮まっている)、逼迫する予算、限られたリソース、費用対効果へのアカウンタビリティと責任の増大だ。

マーケティング経費の削減は、2008年の金融危機を受けて苦境に陥ったブランドのお決まりの手法となった。P&G、ユニリーバ(Unilever)、ゼネラル・ミルズ(General Mills)などは、マーケティング予算を削減し、提携エージェンシーを減らし、調達部門に大きな権限を与えてコストを最優先した。このアプローチは常に成功をもたらしたわけではないが(シアーズ[Sears]クラフト=ハインツ[Kraft-Heinz]がコスト削減でどうなったかを見れば一目瞭然だ)、だからといって経営幹部はマーケティングを削るのをやめようとはしない。

一方、いまやマーケティングの付帯業務は、従来の宣伝の範疇をはるかに超えて拡大し、消費者の全体的なブランド体験や、ブランドパーパスにまで及んでいる。これにより、大企業ではCMOの役割が見直され、最高成長責任者へと進化したり、あるいは廃止して代わりに複数のバイスプレジデントを置くようになった。いずれにせよ、マーケティング責任者はブランドの成長と健全性、そしてデジタル改革をマーケティングに結びつけるべく努力してきた。マーケティングをコストではなく、価値を生み出す部門として再認識してもらうことは、彼らの目標のひとつだ。

「ほとんどの企業は、自社をプロダクトやサービスの企業と定義し、マーケティング部門を付属品と見なす。だが、実態は得てして、プロダクトやサービスを備えたマーケティング企業だ」と、ラッチャ・アンド・アソシエーツ(Latcha+Associates)の創業者でCEOを務める、デイブ・ラッチャ氏はEメールで述べた。「偉大なブランドは、人々の生活との関わりに注目し、価値を証明し、それらをサポートするプロダクトやサービスを提供する。この文言の3分の2はマーケティング関連だ」。

マーケティングの価値を理解する

「一般に、マーケティングと経費はイコールだ」と、フォートナイト・コレクティブ(Fortnight Collective)の創業者でCEOも務める、アンディ・ネイサン氏はいう。「マーケティングは支出と見なされている。だから真っ先に切られるのだ」。

ウィー・アー・ロージー(We Are Rosie)の創業者、ステファニー・ナディ・オルソン氏に言わせれば、問題のひとつは、マーケターに取締役会の席が与えられていないことだ。企業がトラブルに陥ったとき、何を残し、何を手放すかの決定の多くは、取締役会でなされる。「部門や責任範囲を代表する人物が文字通り部屋のなかにいない場合、そうした部門が不釣り合いに大規模レイオフの対象になるのは当然だ」と、オルソン氏は指摘する。「取締役会の一員になれなければ、誰しもにマーケティングの価値を理解してもらうのは難しい」。

「役員レベルでは、マーケティングに何の価値があるのかと質問されることが多々ある」と、プランA(Plan A)の共同創業者でCEOのアンドリュー・エセックス氏はいう。同氏は以前、ドローガ5(Droga5)でもCEOを務めた。「実に嘆かわしく、近視眼的な考えだ。(マーケティングは)定量化がきわめて難しく、さまざまなテクノロジーにイノベーションが起きている現在でも、いまだに数値化しにくい。取締役会がブランドの力を軽視するのは昔からだ」。

取締役会に限らず、苦境にある企業では、マーケティング部門が成果を示し、会社の純利益に影響を与えていると証明するのは難しい。

「四半期ごとの結果がすべての現代では、マーケティングは一番に改革の対象となる」と、ダラスに拠点を置くクリエイティブ集団、ゴードゥー・ディスカバリー(GoDo Discovery Co.)でCEOを務める、エリック・ハースカインド氏はeメールで述べた。「マーケティングは自身の価値を数値化して会社に示すことに関して大きく前進したが、依然として企業には、財政難に陥ったときはマーケティングのスイッチを切ったり入れたりすればいいという考えがはびこっている」。

とはいえ、マーケティング業務のすべてが削減対象になるわけではない。マーケティングアナリスト、ABMスペシャリスト、コンテンツライター、ストラテジストは、業務と増益との関係を示すことができるため、概してほかの職種より安全だと、3Qデジタル(3Q Digital)のCEO、デビッド・ロドニツキー氏はいう。「そのほかのマーケター、つまりブランディング、PR、マーケティングコミュニケーションといった分野はコストセンターだ。利益を指向してはいるが、直接効果をもたらすわけではない」と、ロドニツキー氏はeメールで述べた。「こうしたマーケターの価値を軽んじるつもりはない。しかし、企業がコストカットを迫られたとき、最初に目をつけられるのは、コストセンターのマーケターだ」。

マーケティング部門の規模を再考

だが、マーケターがマーケティングの価値を経営幹部に証明できたとしても、アナリストの見解によれば、ブランドが大規模なチームを社内に置きつづけることは困難だ。一部の業務、なかでもデータ集積のように反復の多い単純作業が主体の業務は、テクノロジーの進歩に伴ってAIやボットが運用するようになり、ブランドはこうした職種を廃止するだろうと、エセックス氏はいう。

「臨機応変な者がすべてを制する世界で、1200人体制の即応部隊をもつのは難しい」と、メタフォース(Metaforce)の共同創業者でブランドコンサルタントを務める、アレン・アダムソン氏はいう。「サイズと効率の両立はまれだ。マーケティング部門が大所帯だからといって、マーケティング能力に長けているとはいえない」。

オースティンに拠点を置くイノベーションエージェンシーのT3で最高執行責任者(COO)を務めるクリスチャン・バーナード氏は、今後6~9カ月のあいだ、CFOたちが差し迫った景気後退を心配する一方、主要なマーケターはマーケティング部門の再調整を続けるだろうと考えている。「(Uberとマクドナルド[McDonald]について)今後6~9カ月のあいだに同じような発表が相次ぐだろう。企業は景気後退に備え、マーケティング部門のスリム化を図っている」と、バーナード氏はいう。「この機会にマーケティング能力を適正化し、もっとユーザー体験にフォーカスし、テクノロジーとデータを中心に据えて、費用対効果を最大化しようとするはずだ」。

「市場での舵取りがますます難しくなるなか、社内のマーケティング部門をどう組織化・構造化すれば成長につながるのか、多くの企業は判断に頭を悩ませている。ドン・ドレイパー[訳注:1960年代の広告業界を描いた米ドラマ『マッドメン』の主人公]がどっしり座って『これが我々のコマーシャルだ』というような、古き良き時代はもはや過去のものだ」と、アダムソン氏は述べた。

Kristina Monllos(原文 / 訳:ガリレオ)