フォレスター(Forrester)の新しい報告によると、グローバル企業の77%が、現在何らかのかたちで社内にエージェンシー機能を保有、つまり内製化を行っているという。2018年の数字は68%だった。
マーケティングの内製化が、再び注目を集めている。
米DIGIDAYが11月第3週に報じたように、P&Gは同社のマーケティングに手を加え、現在はパーソナルヘルス、ベビーケア、ファブリックケアの各ブランドに関するメディアプランニング業務の内製化を推進している。同社の動きは他社に先駆けたものであり、それは業界最大の広告主としては当然のことである。だが、パンデミックをよそに、各種マーケティング機能を社内に移しているのはP&Gだけではない。フォレスター(Forrester)の新しい報告によると、グローバル企業の77%が、現在何らかのかたちで社内にエージェンシー機能を保有しているという。2018年の数字は68%だった。
パンデミック初期においては、マーケターは目の前の問題に対処に専念する必要があった。そのため、内製化の動きは減速するか、停滞するかのように思われた。また、予算やメディアミックスが絶えず変化するなか、メディアエージェンシーの専門知識が必要とされていたため、外部のエージェンシーが恩恵を受けるだろうと考える人もいたと、フォレスターの主任アナリスト、ジェイ・パティソール氏は説明する。こうした見方は、確かに一部のブランドのあいだでは現実となった。「しかし、だからといって内製化の動きが失速することはなかった」。
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CMOの44%が内製化を推進する考え
マーケター、エージェンシー幹部、業界アナリストによると、パンデミックを通して一部のマーケターのあいだで続いていた内製化の動きが、このところ広範に活発化しているという。実際、フォレスターの調査では、2022年により多くの業務を社内に移そうと計画しているCMOは44%にものぼる。
特に、メディアの内製化はマーケターにとって魅力的だ。データに対する主導権と、マーケティング予算に対するコントロールが増大する。メディアシェルパ(Media Sherpas)の創設者であり、4A’s(アメリカ広告業協会)の元会長でもあるナンシー・ヒル氏は、「継続的に試行、学習しては可能な限りはやく修正できるよう、データをなるべく近くに置いておくことの必要性を、マーケターは明確に理解している」と話す。
ヒル氏は次のように続けた。「コロナ禍ではすべてが棚上げにされていた。ここ20カ月は、通常通りのものなんて何もなかった。いまは保留されていた多くの施策について、動きが見えてたように思える」。
人材市場にも影響が?
こうしたなか、内製化の新しい波で、広告主がエージェンシー人材の引き抜きに乗り出し、厳しい人材市場が一層厳しくなる可能性もある。ある広告代理店幹部は、マーケターはエージェンシーに支払う金額を増やして、エージェンシーが従業員に払える報酬を増やせるようにする気はないが、エージェンシーから人材を引き抜いて、エージェンシーより多い報酬を払う気はある、と指摘する。
2022年、マーケターたちはどれほどのスピードで内製化を進めていくのか、人材市場の競争がどれほど激化するのかは明らかではない。
とはいうものの、内製化は何年も前から話題に上ってきていたことだ。「すぐにすべてが内製化される、という劇的な変化が起きているとは思わない」とヒル氏は語る。「その企業の事業内容、顧客への対応方法、サービスの提供方法、文化などによって、その状況は異なると思う」。
KRISTINA MONLLOS(翻訳:SI Japan、編集:村上莞)