激動の2021年も終わろうとしている。年明け1月6日の米議会襲撃事件、(新型コロナウイルスの)複数の変異株の出現、ワクチン接種の開始など、すべて同じ年に起きたとは思えないほどの出来事が相次いだが、そろそろマーケティングトレンドを振り返り、来たる2022年のトレンドについて予想をめぐらす時期だ。
激動の2021年も終わろうとしている。年明け1月6日の米議会襲撃事件、(新型コロナウイルスの)複数の変異株の出現、ワクチン接種の開始など、すべて同じ年に起きたとは思えないほどの出来事が相次いだが、そろそろ(このとても奇妙な1年の)マーケティングトレンドを振り返り、来たる2022年のトレンドについて予想をめぐらす時期だ。
2021年の終わりに、これから何が来るのか、マーケターが何を考えているのかを探るために、米DIGIDAYはエージェンシー幹部やマーケターに、メタバース、プライバシー、CTV(コネクテッドTV)、旅行の復活といったマーケティングのホットトピックが、今後どのような展開を見せると予想しているかを尋ねた。
以下に彼らの回答を紹介する。
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メタバースのその先へ
GUTのソーシャル担当クリエイティブディレクター、サム・ルモイン氏
「2021年は不確実性が続く1年だった。今年を形作ったトレンドのなかで、ブランドコラボレーションとTikTokの盛況は、あらゆる規模のブランドにとって柱となった。ソーシャルプラットフォームは、ファンダムや関心を同じくするコミュニティの急増、クリエイターエコノミーの拡大、そしてメタバースの誕生に伴い、共創のための空間となった。トレンドの融合がみられた一方、それらは将来的にどのような意味をもつのだろうか?」。
「2022年には、かつてない柔軟性の時代が到来する。IRL(In Real Life:現実世界の意)における資産の所有から、デジタルコレクティブルズ(収集品)、メタバース上の場所、ウェアラブルへのシフトが進み、ブランド体験の新たな機会が創出されるだろう。また、ブランド、クリエイター、消費者は、Web3.0によって新たな時代を迎える。ブロックチェーン技術によってプラットフォーム大手の管理から自由になるWeb3.0は、この先コミュニティ構築とクリエイターエコノミーの強力な基盤として発展するだろう。Web3.0によって勢いを得たブランド、クリエイター、消費者は、コラボレーション、コミュニティ、そして公平性によって繁栄する、新しい世界の構築に向けて力を合わせることになる」。
ピュブリシスグループ(Publicis Groupe)のグローバルコンテンツパートナーシップ統括バイスプレジデント、ジェレミー・コーエン氏
「2021年は、暗号資産(仮想通貨)とWeb 3.0エコノミーがトレンドになった。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)よるデジタル消費の急増が消費者の習慣を変え、またそれに伴い、暗号資産が数兆ドル(数百兆円)の経済規模に成長した。来年、仮想通貨はさらに普及するだろう。2022年は、ブランドがメタバース体験を利用して新たなオーディエンスを取り込み、ブランドロイヤルティの概念を再定義することで、イノベーションとイテレーション(短期間で反復しながら行われる開発サイクル)が起きる、素晴らしい1年になるだろう」。
バーチャルワークと対面のバランス
ニューヨーク・タイムズ(The New York Times:以下、NYT)の広告・マーケティングソリューション担当グローバル統括シニアバイスプレジデント、セブ・トミッチ氏
「良くも悪くも、間違いなく定着した変化はバーチャルワークだ。我々は、クライアントへのリーチを広げ、交通・接待費を下げることに大きな成功を収めた。だが一方、直に顔を合わせることで起こる、より深い人間関係の構築能力は失ってしまった。2022年中には、より事務的なミーティングを一部バーチャルに残し、対面式のやり取りを本格的に復活させる予定だ」。
イレブン(Eleven)のCEO、コートニー・ビューカート氏
「(オフィス中心のワークモデルではない)ハイブリッド中心のワークモデルが大きな変化だったが、今後も定着するだろう。このワークモデルが人材の地理的配置、エージェンシーの諸経費やコストの経済性、エージェンシーのアイデンティティに及ぼす影響は非常に大きい。またそれによって、新しいタイプのエージェンシーがクライアントやスタッフにとって、パンデミック以前には考えられなかったほどの魅力的な存在となる機会が、爆発的に拡大しているようだ」。
旅行の復活
CJアフィリエイト(CJ Affiliate)のデータサイエンス・アナリティクス担当バイスプレジデント、ジョシュ・ピーターソン氏
「今年は、在宅勤務にともなう購買動向が衰え、美容、アクセサリー、旅行へのシフトがみられた。2022年は旅行の年になるだろう。海外について知りたいという需要が旅行関連ギフトの増加を促し、旅行関連の衣料、メディア、電子機器などの小売トラフィックを急増させるだろう」。
続くCTVの台頭
グッド・アップル(Good Apple)のメディア担当バイスプレジデント、ヒュン・リー・ミラー氏
「消費者行動の進化を考慮して、ブランドはオムニチャネルファーストな動画マーケティング戦略を打ち出すようになっている。消費者がストリーミングサービスに移行するなか、ブランドは引き続きCTVへの支出を増やすだろうが、ブランドがひとつの動画資産をリニアTV、CTV、オンライン動画、ソーシャルチャネルに使いまわす時代は終わった。ブランドは、TikTok動画を作成するにせよ、あるいはスナップ(Snap)のARレンズを使って、消費者自身にブランド動画を作成してもらうにせよ、それぞれのプラットフォーム体験にフィットした動画体験を作り出している」。
迫るプライバシー関連の大変化とファーストパーティデータ
イノーシャンUSA(INNOCEAN USA)のデータサイエンス・アナリティクス担当バイスプレジデント、デイビッド・ブロスコウ氏
「デジタルフィンガープリントのプライバシー保護。この傾向は、今年に入ってAppleやGoogleで起こった大きな変化をさらに越えて続いていくと予想される。消費者は、マーケターが見返りに価値を提供すると判断すれば、自発的に自らの嗜好や意向を共有するようになるだろう」。
NYTのトミッチ氏:「サードパーティCookieの死が迫るなか、今年はファーストパーティデータが主役に躍り出た。いまだ解決策を待っている段階ではあるが、NYTは購読者数の増加にともない、ファーストパーティデータを活用したプロダクトを構築し、素晴らしい成果をあげている」。
顧客体験(CX)の改革
ピュブリシス・コマース(Publicis Commerce)の米国オンラインマーケットプレイス統括バイスプレジデント、マーゴ・ローガン氏
「オムニチャネルショッピングは今後ますます定着し、eコマースショッピングはいっそう手軽になるだろう。私が予想する来年のトレンドは、ポイントカードと決済システムの統合による、消費者体験のさらなる合理化だ。決済企業は現在、リテールメディアネットワークによる買収が進んでいる。小売店でクリックひとつで簡単に決済し、ポイントを貯められるようになるかもしれない」。
キャンベル・イーウォルド(Campbell Ewald)の最高戦略責任者、ケアリ・シメル氏
「ここ1年、ブランドがブランド体験の創出について改革を迫られる場面もみられた。彼らの多くは、それまでのジャーニーマップを捨てて一からやり直すという、前例のないことをしなければならなかった。その結果、広告とコンサルティングの両方でCXの実践が盛んに行われるようになった。我々はいま、用語の混乱や、クライアントもエージェンシーも成熟していないといった、CXの開拓時代といえる段階にいる。ひとつのやり方で押し通せるとは思わないほうがいい」。
KRISTINA MONLLOS(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:村上莞)