- インフルエンサーマーケティング業界が成長を続けるなか、マーケターが提携前に慎重な調査を行う傾向が高まっている。マーケターやエージェンシーの幹部は、「2023年は2022年より厳しく、この半年は特に厳しい」と口を揃える。
- マーケターは自社のオーディエンスを深く理解し、適切なインフルエンサーを選定することが重要になってきた。大きなヒットの可能性があるなか、大きなリスクもありえるからだ。
- インフルエンサー自身も、将来のブランドのプロジェクトに関して調査に時間を費やすことが増えており、双方向のコミュニケーションが大事になっている。ブランドのコアバリューとの一致が強調され、提携においてコンテンツの適合性が重要視されている。
成長を続けるインフルエンサーマーケティングにおいて、波及効果が見え始めている。マーケターが、インフルエンサーやクリエイターと提携する前に、対象者を吟味する時間が増えているのだ。
この1年ほど、インフルエンサーエージェントのプレゼンでは、マーケターからインフルエンサーへの質問に増加傾向が見られるようになった。質問の内容はブランドによってさまざまだが、インフルエンサーマーケティング企業の経営陣はこの状況を、この業界に多くの予算が投入されるようになり、インフルエンサーマーケティングが一目置かれるようになってきたと楽観的に見ているだけでなく、2023年4月の「バドライト」問題に見られるような微妙な問題も抱えていると考えている。
インフルエンサーマーケティングに着手したばかりのブランドは、「このクリエイターなら、ひょっとしたらうまくいくのではないか」という直感に依存したビジネスから、もっと徹底してインフルエンサーを調査するビジネスへと動き出している。
一方、経験のあるブランドなら、表面的な指標を脱却して、もっと奥深いデータや詳細情報を求めていくことも可能だ。そうした詳細情報やデータが何なのかはブランドや状況によって違うが、今後はフォロワーだけではなく、フォロワーのコホートタイプにも注目が集まるだろう。さらに、対象インフルエンサーに政治的志向があるか、ほかのブランドについてどのように話しているのかといった内容も注視される。
シビアにインフルエンサーを選定する時期に
マーケターやエージェンシー経営陣によると、現在のところ、インフルエンサーマーケティングの取り組みは全般的に、マーケターの事前調査がこれまでよりもしっかり実施されているという。彼らは皆、口を揃えて、「2023年は2022年より厳しく、この半年は特に厳しい」と話す。
「インフルエンサーの選択は難しくなり、顧客が求めるインフルエンサーの情報量も増えている」。そう話すのは、インフルエンサーマーケティングエージェンシーのスウェイ・グループ(Sway Group)を創業したCEOのダニエル・ワイリー氏だ。「ブランドは、今すぐ提携したい相手に関して、とにかく好みがうるさい。たとえば、特定の場所から20マイル(約30キロ)以内にいる人でなければならないとか、ある店舗のショッピング体験を話していたことがあるとか」[続きを読む]
- インフルエンサーマーケティング業界が成長を続けるなか、マーケターが提携前に慎重な調査を行う傾向が高まっている。マーケターやエージェンシーの幹部は、「2023年は2022年より厳しく、この半年は特に厳しい」と口を揃える。
- マーケターは自社のオーディエンスを深く理解し、適切なインフルエンサーを選定することが重要になってきた。大きなヒットの可能性があるなか、大きなリスクもありえるからだ。
- インフルエンサー自身も、将来のブランドのプロジェクトに関して調査に時間を費やすことが増えており、双方向のコミュニケーションが大事になっている。ブランドのコアバリューとの一致が強調され、提携においてコンテンツの適合性が重要視されている。
成長を続けるインフルエンサーマーケティングにおいて、波及効果が見え始めている。マーケターが、インフルエンサーやクリエイターと提携する前に、対象者を吟味する時間が増えているのだ。
この1年ほど、インフルエンサーエージェントのプレゼンでは、マーケターからインフルエンサーへの質問に増加傾向が見られるようになった。質問の内容はブランドによってさまざまだが、インフルエンサーマーケティング企業の経営陣はこの状況を、この業界に多くの予算が投入されるようになり、インフルエンサーマーケティングが一目置かれるようになってきたと楽観的に見ているだけでなく、2023年4月の「バドライト」問題に見られるような微妙な問題も抱えていると考えている。
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インフルエンサーマーケティングに着手したばかりのブランドは、「このクリエイターなら、ひょっとしたらうまくいくのではないか」という直感に依存したビジネスから、もっと徹底してインフルエンサーを調査するビジネスへと動き出している。
一方、経験のあるブランドなら、表面的な指標を脱却して、もっと奥深いデータや詳細情報を求めていくことも可能だ。そうした詳細情報やデータが何なのかはブランドや状況によって違うが、今後はフォロワーだけではなく、フォロワーのコホートタイプにも注目が集まるだろう。さらに、対象インフルエンサーに政治的志向があるか、ほかのブランドについてどのように話しているのかといった内容も注視される。
シビアにインフルエンサーを選定する時期に
マーケターやエージェンシー経営陣によると、現在のところ、インフルエンサーマーケティングの取り組みは全般的に、マーケターの事前調査がこれまでよりもしっかり実施されているという。彼らは皆、口を揃えて、「2023年は2022年より厳しく、この半年は特に厳しい」と話す。
「インフルエンサーの選択は難しくなり、顧客が求めるインフルエンサーの情報量も増えている」。そう話すのは、インフルエンサーマーケティングエージェンシーのスウェイ・グループ(Sway Group)を創業したCEOのダニエル・ワイリー氏だ。「ブランドは、今すぐ提携したい相手に関して、とにかく好みがうるさい。たとえば、特定の場所から20マイル(約30キロ)以内にいる人でなければならないとか、ある店舗のショッピング体験を話していたことがあるとか」。
「以前なら、インフルエンサーに関しては口コミ中心で選んでいたマーケターもいただろう」と、インフルエンサーマーケティングエージェンシーのオブビアスリー(Obviously)創業者でCEOを務めるメイ・カーワウスキ氏は話す。単に「この人が気に入ったから」「うちの子がこの人をフォローしているから」といった基準で提携相手を選ぶこともあり得たというのだ。
しかしながら、今のマーケターはもっとシビアに決断を下しているとカーワウスキ氏は言う。マーケターは「この世界は大きなリスクがあれば、大きなヒットもある。その事実をしっかりと認識しなければならない」ということを認識しているようだ。「そうなると必然的に、『なぜこの人物と提携しているのか。オーディエンスに関するデータを見せてほしい。適切なセグメントにヒットできているのか』という質問も出てくる」。
「自社のオーディエンスを知り、それに即してマーケティング戦略を調整することは極めて重要だ」と、インフルエンサーマーケティングエージェンシーのザ・ブレッドウィナーズ・クラブ(The Breadwinner’s Club)の共同創業者でCEOを務めるワリド・モハメド氏も話す。さらに、ブランドが「こうした状況でリスクを避けて、時間と労力を追加投入し、インフルエンサー候補者を探し出すのは理に適った行動だ」とも述べた。
重要なのは自社ブランドのバリューとの合致
その一方で、インフルエンサーのなかにも、将来のプロジェクトで提携の可能性があるブランドの調査に時間をかけるようになった者もいる。「必要なのは双方向の会話」とオブビアスリーのメイ・カーワウスキ氏は話す。「この手のインフルエンサーは、オーディエンスの規模が大きく、影響力も強い。だから、彼らのフィードバックをもらうのは極めて重要だ。ブランドはその事実にようやく気づいた。もはや、やってもらいたいことをインフルエンサーに伝えるだけでは成り立たない。彼らと提携するのなら、コンテンツがそのインフルエンサーに即したものでなければならないのだ」。
インフルエンサーマーケティングエージェンシーには、調査を厳しくするとなると、これまで以上に配慮が必要だと考える経営陣がいる一方で、ブランドは自社のコアバリューを明確化し、インフルエンサーのマーケティングプランもそのコアバリューに見合うものでなければならないと考える経営陣もいる。
たとえばレイン・ザ・グロース・エージェンシー(Rain the Growth Agency)で有料SNS&インフルエンサーメディア部門のディレクターを務めるエリン・パーティンスキ氏は、「今後もブランド各社は、自社のコアバリューとマッチしたインフルエンサーと協働すべきだし、提携したインフルエンサーが、誰もが賛同するとは限らない問題に賛同の立場を取った場合も想定して、しっかり備えなければならない」と話す。「自社のコンテンツであれインフルエンサーのコンテンツであれ、自社ブランドのバリューと合致していないのであれば、流行りやホットな話題に飛びつくのは避けなければならない」。
Kristina Monllos(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)