米国を中心に成長を続けているマーケティング・オートメーション(MA)市場。日本でも拡大傾向を示すデータが出ている。2015年の米MAソフトウェア市場の規模が36億5000万ドルに上り、19年まで年率8%超の拡大傾向だ。
矢野経済研究所が2015年12月15日に発表したマーケティング・オートメーションなどに関する調査では、2014年のMAサービスの市場規模は事業者売上高ベースで168億円で、2015年の同市場規模を前年比31.0%増の220億円(同ベース)と見込んでいる。
米国を中心に市場規模を急伸させているマーケティング・オートメーション(MA)。ハブスポット、マルケト、セールスフォース、アドビ、オラクルなど新興、巨大企業が新しい市場を競い合う。
「リードスコアリングやセグメンテーション、リードナーチャリング(見込み客育成)、マーケティングの根幹部分を『自動化』できる」と言われるMA。購買者優位のマーケットで、従来型のマスマーケティングを代替する存在になるのか。
国内外の動向を追い、急伸するマーケティング・オートメーション市場を知るための5つのトレンドを紹介する。
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1. 前年比31.0%増の220億円見込み
矢野経済研究所が2015年12月15日に発表したMAなどに関する調査。2014年は事業者売上高ベースで168億円だったMAサービスの国内市場規模は、2015年に前年比31.0%増の220億円(同ベース)になると見込んでいる。
MA、DMP市場ともに拡大傾向と予測(出展:矢野経済研究所)
同研究所は国内市場の拡大傾向について「企業におけるマーケティング活動の費用対効果が強く意識されるようになったことや、顧客の詳細なニーズに基づいてパーソナライズされたコンテンツを提供する必要性が増したこと、チャネル別に入手したデータの急増によりMAがなければ、マーケティング業務に支障をきたすようになったことなどから、MAを導入する機運が高まっている」と指摘。
さらに「製造業を中心に日本企業の海外売上比率が高くなり、海外営業を支援するためのグローバルなマーケティングプラットフォームが必要になっていることや、引き合いを待つビジネススタイルからの脱却といった目的で MA を導入する動きが活発化している」と加えた。
2. DMPも拡大「15年は52億円」
同調査は2014年のデータ・マネージメント・プラットフォーム(DMP)サービスの市場規模は事業者売上高ベースで40億円。2015年の同市場規模を前年比30.0%増の52億円(同ベース)になると予測。
同研究所は背景について「消費者のニーズが多様化している昨今、広告会社に頼るだけではなく、企業が自社や第三者が保有するデータを活用して生活者の行動要因を突き止め、自社のマーケティング活動を最適化することへの意識が高まっていることなどからDMP構築、利用の動きが加速している」と説明する。
3. 米マーケター、リード育成が目的
米国での状況はどうだろうか。米調査会社レガリクス(Regalix)による「マーケティングオートメーションの現状2015年(State of Marketing automation 2015)」では、B2B事業を行う回答者の82%が、MAの主要目的に、リードナーチャリングを挙げた。マーケターの79%がMAに投資すると語っている。B2B営業の現場では、リードがもっとも重視されているのが透けて見える。
4. 段階的・部分的な活用が主流
eマーケター(eMarketer)がMAに関してまとめた記事(2015年2月)では、カリドゥス・クラウド(CallidusCloud)の調査によると、「営業プロセスの75%以上をMA化した」B2B企業は13%以下。「25%以上75%未満をMA化した」が合わせて54.1%、25%未満は33%、と部分的な利用が大多数だ。フォレスターコンサルティング(Forrester Consulting)によると、米国のデジタルマーケター・カスタマーインサイト専門家のうち57%が、オンラインでのオーディエンスターゲティングを進展させるDMPのような技術への投資を実施している。
5. 米日で市場拡大傾向
マーケットサンドマーケッツ(MarketsandMarkets)は2014年10月、2015年の米MAソフトウェア市場の規模が36億5000万ドル(約4460億円)に上るとし、年平均成長率8.55%で、2019年には55億ドル(約6720億円)に上ると推計する。MA市場の定義はさまざまだが「市場は米国を中心に年率50%以上の勢いで成長している」とする提供企業もあるほどだ。
2013年から現在まで、以下のようなM&A(買収・合併)があった(digitalmarketingdepot.comまとめ)。関連産業が、MA企業を買収して業界に参入・事業拡大するケース、MA企業がデータ関連企業、マーケティング企業を買収するケースがあった。2013〜2014年に各社が拡大する新興市場へ矢継ぎ早に投資したことがわかる。
矢野経済研究所は国内市場は2020年まで拡大傾向が続くと予測。2020年のMAサービス市場規模(事業者売上高ベース)は420億円に達すると見込んでいる。今後はMA企業の事業拡大、キャンペーンがより活発化するとみられる。
Written by 吉田拓史
Image by Thinkstock/GettyImage