1月初めに仕事に戻ったとき、楽しい家族の集まり(とごたごた)の前に人々が話していたことを思い出すのは難しいかもしれない。そこで、来たる新年にマーケターが何に注力しようとしているかを今のうちに確認しておくため、2023年に重視するテーマについてCMOに話を聞いた。
年末になると、休暇前に仕事を終わらせようと慌てるのが常だが、今年も例外ではない。1月初めに仕事に戻ったとき、楽しい家族の集まり(とごたごた)の前に人々が話していたことを思い出すのは難しいかもしれない。
そこで、来たる新年にマーケターが何に注力しようとしているかを今のうちに確認しておくため、2023年に重視するテーマについてCMOに話を聞いた。
仮想世界
「バーチャルとリアルの世界が日々ぶつかり合う『ニュー・アブノーマル』が定着しつつある」と、マスターカード(Mastercard)のCMOであるラジャ・ラジャマナー氏は話す。「トレンドの発信源としてそこに注目している」
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ラジャマナー氏はこう続けた。「AR(拡張現実)が台頭している。近年、VR(仮想現実)のほうが注目度でまさっているように思われたが、AR技術は支持を拡大している。おそらく、より具体的なユースケースが存在するためだろう。さらに、高価なヘッドセットではなく、既存のデバイスを使用できるためアクセスしやすく、いち早い導入に適している」。
コミュニティの構築
「コミュニティの重要性についてよく考える」と、婚礼サービスのゾラ(Zola)のCMO、ビクトリア・ベインバーグ氏はいう。「ゾラでは、アプリ内、そして年初にはウェブ上でのコミュニティを開始した。そこには何千組ものカップルが積極的に参加している。我々のビジネスに限らず、Web3の世界とは一体何かと考えたとき、それは究極的にはコミュニティだ」。
ベインバーグ氏はさらに、ブランド資産の上にコミュニティを構築することは、関心を同じくする人々とのつながりを育むだけでなく、ブランドが対象とするコミュニティへのインサイトを深めることにつながると話す。同氏は、「これは素晴らしいツールだが、同時に我々にとっては、製品へのフィードバック、文化的な知識、結婚式の変化など、カップルが何を求めているかを聞き取るための優れた手段でもある」と述べている。「重要なのは、消費者にできるかぎり近づくこと。コミュニティそのものが、私にとっての最優先事項だ」。
成長とファーストパーティデータ
独自に得たインサイトを、ブランドの成長促進策の発見に活用しているのはゾラだけではない。ナショナルホッケーリーグ(NHL)もまた、オーディエンスを増やす方法を見つけるために独自のデータに目を向けている。
NHLのCMOであるハイディ・ブラウニング氏は、「ファンを増やし、ファンを知ることに重点を置いている」と話す。「成長の観点から、我々はファンベースの拡大と多様化を重視し、女性、多文化、若いオーディエンスに焦点を当てている。成長するためには、現在のファンについてもっと知る必要がある。我々は、ファンに関するファーストパーティおよびゼロパーティのデータから得られるインサイトに基づき、集約、分析、活性化を行っている」。
リテンションのインセンティブ
顧客に再び利用してもらう方法を見つけることは、どんなときも重要だが、とくに景気が停滞する局面では不可欠だ。そのため来年は、通常のリテンション戦略を超えた取り組みがブランド間で広まりそうなことは驚くに当たらない。
フィットボディー(Fit Body)アプリのCMO、リア・ハーバーマン氏は、「リテンションとリエンゲージメントに重点を置くつもりだ」と話す。「これまでの解約を減らすための取り組みは、解約理由の調査、呼び戻しキャンペーン、離脱防止のインセンティブなど、ごく標準的で自動化されたものだった。現在では、解約を検討しているすべての加入者に積極的に働きかけ、引き留めを図っている。解約しようとしている理由を掘り下げ、その人に合った引き留めのインセンティブを提供している。目下の経済状況を考えれば、顧客を一人残らず維持し、取り戻さなくてはならない」。
ブランド価値
近年、ブランドがさまざまな問題について発言し、立場を表明することが増えている。マーケターたちは2023年もこの流れは続くと見ているが、ただしその問題は、ブランドの専門分野とより密接に関連したものになりそうだ。
ゾラのベインバーグ氏は、「我々の場合は結婚尊重法案について積極的に声を上げてきた」と話す。「ブランドが自らの持ち場を知ることは重要だ。世の中で起きているあらゆることに何かいう必要はないと思う。我々には我々の明確な企業価値とブランド価値がある。我々が正しいと思うことを支援するために、使える力を発揮し続けることを今後も重視していく」。
Kristina Monllos(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:島田涼平)