これまでメディアバイヤーの間で「お試し」的に使われてきたTikTokが、2021年にはいよいよソーシャルメディアにおける中心的な存在になりそうだ。実際、TikTokへの広告出稿量は大きく増加傾向にある。 米中対立のなかで […]
これまでメディアバイヤーの間で「お試し」的に使われてきたTikTokが、2021年にはいよいよソーシャルメディアにおける中心的な存在になりそうだ。実際、TikTokへの広告出稿量は大きく増加傾向にある。
米中対立のなかで米国における立場が危ぶまれていたTikTokだが、オラクル(Oracle)による買収が承認されたことでこの懸念が解消したことも、好材料として作用している。また、オンライン販売機能の強化もバイヤーから歓迎されている。TikTokはショッピファイ(Shopify)との提携や、現在βテスト中のダイナミックカタログ広告など、EC用の広告フォーマットの整備を進めている。
OHパートナーズ(OH Partners)で広報およびソーシャルメディア担当アソシエートディレクターを務めるマデリン・ライドン氏は「2020年は、広告主はTikTokの不安定な状況に懸念を抱いていた」と語る。「今後が分からない状況で投資するのはリスクが大き過ぎる。一方で、米国ではFacebookよりもTikTokのほうが利用時間が長くなっていて、広告主にとってTikTokへコンテンツ提供する重要性は日に日に増すばかりだった。もたついていれば、置いていかれてしまう」。
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「ほかの大手SNSに肩を並べる存在」
不安定というリスクはあったものの、TikTokの認知度は過去12カ月で劇的に変化し、それに伴いメディアバイヤーや広告主からの印象も大きく変わった。メカニズム(Mekanism)のメディア責任者のキャリー・ダイノ氏は「2019年、2020年のTikTokはいわば『お試し』で予算を投じる対象だったが、2021年になって、広告主が望む形のソーシャルメディアになりつつある」と語る。
メカニズム(Mekanism)の共同経営者でありCSO(chief social officer)のブレンダ・ガーハン氏は、「以前は『ユーザーにとっては楽しいが、実験的なプラットフォーム』という見方が大半だったが、今やほかの大手SNSに肩を並べる存在と見なされている」と語る。「その結果、現在進めているコンテンツ戦略に組み込む形で多くの計画が立案されている。ハッシュタグチャレンジやインフルエンサーとの提携といった単発のキャンペーンではなく、コミュニティの醸成といった長期プランが進んでいる」。
同氏は「TikTokには勢いがあるが、今のところインスタグラムやFacebookほどの『定番』になるには至っていない」と指摘する。「とはいえ、近いうちにそれに比類するプラットフォームになるまで成長する可能性も十分にある」。
「若者を狙う企業からの関心は高い」
TikTokへの広告支出額はブランドごとに異なるが、今のところSNSへの支出額に占める割合は少ないところが大半だ。パフォーマンスマーケティングエージェンシーのデジショップガール(Digishop Girl)のCEO、カチャ・コンスタンティン氏によると、同社が現在提携しているD2CブランドのSNS予算のうち、およそ5%をTikTokが、75%をFacebookおよびインスタグラムが占めているという。
だが、TikTokは、より効果的に購入に結びつくような広告やECのフォーマットの導入を進めており、広告主の今後の予算編成の呼び込みにつながる可能性がある。コンスタンティン氏は、「オンライン販売を狙う新たな広告ユニットにより、TikTokに目をつける広告主はさらに増えるだろう」と語る。
「TikTokへの予算がこの12カ月と同じペースで増え続ければ、同プラットフォームへの広告支出額の割合は現在の5%から20%程度にまで増える可能性がある。とりわけ、若い消費者をターゲットにしているブランドからの関心は高い」。
TikTok専用のコンテンツ制作が肝
2021年も、引き続きTikTokへの広告出稿量が増えることが想定される。「Facebookやインスタグラムへの過度な依存を問題視し、より幅広いチャネルへと支出を分散させたい」という広告主の意向も、この流れを後押しすると想定される。
このように順調に伸び続けているTikTokだが、注意すべき点もある。TikTokの熱心なユーザーは、TikTokに合わないフォーマットのコンテンツを避ける傾向がある。そのため、TikTok専用のコンテンツ制作が肝になってくる。これは確かに手間がかかる。だが、ユーザーの利用時間が伸び続けており、アップアニー(App Annie)によれば、月間アクティブユーザー数は12億人に達する見込みのTikTokは、それを補ってあまりあるほど魅力的だ。
ハバス・メディア・グループ(Havas Media Group)のEC担当責任者のジェス・リチャーズ氏は次のように述べる。「TikTokは、化粧品の売上に大きく貢献しうるプラットフォームだ。開封動画やバーチャルメイクアップ、ランウェイ動画の配信など、多くの可能性を秘めている。ユーザーが生み出すこういったコンテンツにブランドが入り込むことで、価値のある本物の体験を提供できるはずだ」。
KRISTINA MONLLOS(翻訳:SI Japan、編集:長田真)