AI に夢見るマーケター、しかし実現はまだ遠そう

ロボットが人間の仕事を行う時代が確実に近づいている。しかしまだまだ時間がかかりそうだ。

カリフォルニア州のサンタバーバラで、米DIGIDAYが主催したAIマーケティング・サミット(AI Marketing Summit)では、今日では手作業で行われている多くのマーケティング関連の仕事を、人工知能が行うようになるという話を多くのマーケターたちが交わした。しかし、こういった変化はすぐに実現するわけではなさそうだ。

AIはいまだ謎のまま

「サービス産業では、5年から10年以内に人材の大部分が自動化によって代替されると確信している」と、サミットで語ったのはサムスン・エレクトロニクス・アメリカ(Samsung Electronics America)のシニア・バイスプレジデントであるマイケル・ローダー氏だ。

しかし、この発言をした直後に、彼は補足説明を加えている。AIが代替する際には、これらの人材を解雇してしまうわけではない、というものだ。これらの人材は、別の仕事のために活用されると、彼は述べた。彼が言葉を濁したのは、まだまだ先の話だからなのか、それとも近い将来のことだからなのか、どちらか判断するのは難しい。

サミットを通して、参加者たちはAIの短所や実現に向けての障害を語ると同時にその可能性について想像する、ということを繰り返した。多くの人にとってAIはいまだ謎のままであり、参加者たちにとって理想のシナリオとはどのような物であるか、一種のロールシャッハ・テストのように機能していた。人間の労働の価値を下げてしまうのではなく、人間を退屈な労働から解放することができるのでは、というのが彼らの希望のようだ。

未来の姿も曖昧模糊

参加者の一人は「顧客にとって効率的なプロセスをAIの助けで構築できればいい。彼らにとっては摩擦が少ない方が良いし、人事部が関わらないといけない作業が減ることで我々のスタッフの仕事を減らすこともできる」と語った。

プログラマティック広告が登場したときにも似たような状況が起きた。機械が人間を置き換えてしまうのではないか、という恐怖が業界に広まった。そのときにもしきりに言われたのは、人工知能とマシーンラーニングによって、マーケターたちがより高度なタスクをするようになるだけだ、という考えだった(役目が無くなったメディアバイヤーたちに今日、それを言ったらどんな反応をするだろうか)。

人工知能の定義は曖昧だが、それが提示する未来の姿も曖昧だ。現時点で、人間が関わらないといけない作業をこれ以上自動化できるようになるほど、人工知能の性能が向上するかどうかは不明だ。またそれが実現した際に、人間のスタッフがどれほど必要になるかもまた、不明だ。

技術がより発展することで、人間が関わる必要がある物事の数は減るだろう。数年前であれば、アドテクを使いこなすには人間のスタッフが決定的に重要だった。いまでも人間は必要だが、必要な数は減っている。またアドテクのおかげでブランドたちはメディアバイイングを自社で行うことができるようになった。そのトレンドと、ときを同じくして、メディア、広告業界で働く人々の数は2017年に縮小している。業界自体は成長しているのに、だ。

楽観が生まれる理由

サミット参加者たちが抱えていた楽観はどうも、現時点で人工知能の活用が基礎的な物に留まっていることに起因しているようだ。いまのところは、彼らのサイト上でプロダクトを推薦したり、マーケティングキャンペーンをパーソナルな物にする、というのが一般的な活用法となっている。これよりも少し高度な活用例を見てみても、まだまだベーシックな物しか登場していない。

「ときどき、『全部機械にやらせよう』という人がいるけど、それは無理」と、参加者のひとりは語った。

サムスンはカスタマーサービスのアプリ、サムスン+(Samsung+)でAIを活用してチャットボットを運営している。しかし注文のステータスをチェックするといった、決まりきったタスクしか扱うことはできない。デバイスが壊れた、といった複雑な問題に対応するレベルにはチャットボットはまだ到達していない。「そのためには非常に大きな経費と管理が必要になる」と、ローダー氏は言う。問題を特定するための質問をチャットボットが尋ねるのではなく、フリーランスの「ブランドアンバサダー(大使)」へと会話を受け渡すということを行っている。このブランドアンバサダーたちは、質問に対応するためにサムスンに雇われている。

しかし「我々のサポート、サービスのやり取りのほとんどにおいて人間のスタッフと会話をすることがなくなる」日はやってくるだろうと、ローダー氏は言う。その日がやって来るというのは本当かもしれないが、これはかなり遠い未来かもしれない。

Tim Peterson(原文 / 訳:塚本 紺)