iPhone アプリで「プッシュ通知広告」が可能に:Appleの新ルールに期待を寄せるマーケターたち

3月はじめ、AppleがApp Storeのガイドラインを更新した。この改定により、明示的にオプトインしたユーザーを対象に、アプリのパブリッシャーがプッシュ通知で広告やプロモーションを配信できるようになる。ルール改定について最初に報道したテックブログの9to5Macによると、新しいガイドラインは「アプリ開発者は、ユーザーがマーケティング目的のプッシュ通知の受信を解除できるようにしなければならない」とも定めている。従来のガイドラインでは、マーケティングメッセージを含んだプッシュ通知の送信は許可されなかった。

Appleは、非常に広範でプライバシー重視のポリシーを掲げており、その厳格さゆえに、プッシュ通知がアプリ所有者にとって大きな収入源になるとは考えにくいのだが、モバイルマーケティングの関係者は、今回の変更には、アプリへのロイヤルティを底上げする効果があると期待を寄せる。同時に、プッシュ通知の急増は、アンインストールボタンに手を伸ばすユーザーを瞬く間に増やすだろうとも警告している。

「プッシュ通知による死」を警戒すべき

プッシュ通知の開封率は電子メールよりも高い。だが、消費者のエンゲージメントという観点では、プッシュ通知はおおむね、ブランドオーナーと消費者の間に横たわる「未開拓の機会」と言ってよい。そう語るのは、英国ディジタス(Digitas UK)のチーフプロダクトオフィサー、レイフ・ブランドフォード氏だ。この変更で、「収益を生むカスタマージャーニーへの、もっと直接的なリンクが可能になる」と同氏は言っている。

それでも、アプリ所有者は「プッシュ通知による死」を警戒すべきだ。マーケティングコミュニケーションエージェンシーのウェイク・ザ・ベア(Wake The Bear)で、デジタルサービスを統括するジリアン・ベル氏は、そう警告する。「消費者のメリット重視の対極には、『我々には売るべき在庫がある。だからもっと商品をプッシュする必要がある』と考える人々がいる。だが、アプリ環境の消費者は、それほど寛大ではない。ミスが続けば、ドカン。一巻の終わりだ」。

Appleは、コメントの求めに応じていない。

あれこれ試行錯誤する必要がある

デジタルエージェンシーのソモ(Somo)で、最高経営責任者(CEO)を務めるカール・ユミンスキー氏によると、特にフリーミアムモデルを採用するゲームアプリを中心に、新ルールの境界線を探りながら、たとえばプッシュ通知広告を販売したり、有料のバーチャルアイテムを宣伝するなどして、短期的に稼ぐ機会を模索するアプリ所有者も現れるかもしれない(改訂後の「App Store レビューガイドライン(App Store Review Guidelines)」は、ハードウェアまたはオペレーティングシステムに内蔵されるプッシュ通知などの機能を収益化することは「許容されない」行為であると規定している)。

モバイルマーケティングの専門家たちは、新しいポリシーのもとで、Appleがどれだけ厳しい取り締まりを行うかについて、疑問を投げかけた。従来、Appleは、アプリ開発者が「広告、プロモーション、ダイレクトマーケティング」をプッシュ通知に挿入することを禁じてきたが、専門家たちが米DIGIDAYに語るところによると、プロモーションと思われるプッシュ通知をアプリから受け取ることは少なからずあるという。「ドミノ(Domino’s)のポップアップを何度も受け取るうちに、すっかりマヒしてしまった」と、コンサート検索エンジンを提供するライブネイション(Live Nation)で、オーディエンスとデータに関するコンサルタントを務めるステュアート・オースティン氏は証言する。「その間ずっと、基本的に広告であるということに気づかなかった」

「ザ・ヴァージ(The Verge)」の報道によると、以前、Apple自身も、Apple TVの番組「カープールカラオケ(Carpool Karaoke)」「Apple Music(アップルミュージック)」の無料トライアルの宣伝目的で、プッシュ通知を発信していた。

結局のところ、アプリ所有者はプッシュ通知の頻度を注意深く管理しながら、消費者の関心を薄れさせ、オプトアウトを招くことがないように、あれこれ試行錯誤する必要があるだろう。

いつ取り消されてもおかしくない

「ショッピングアプリのセール情報を受け取るなら、おそらくプッシュ通知が最適の方法だろう」と、モバイル広告エージェンシーのモブコイ(Mobkoi)で、チーフプロダクトオフィサーを務めるクリス・デイ氏は指摘する。「反面、プッシュ通知は乱用されやすい。大量に送られれば、邪魔になり、嫌がられ、究極的には、ありがたみが薄れかねない」。

Appleは明示的なオプトインを要求し、マーケティング目的のプッシュ通知を、いつ取り消されてもおかしくない「特権」と位置づけている。デイ氏の言葉を借りるなら、「これが乱用を抑止する効果を発揮するはずだ」。

Lara O’Reilly(原文 / 訳:英じゅんこ)