VR への熱が冷めたマーケター:注力の対象を AR へ移行

広告主たちは、仮想現実(VR)では収益を上げることはできず、拡張現実(AR)の可能性を認めはじめている。

VRヘッドセットの売上の伸びは鈍化した。VRヘッドセットの売上は期待を裏切り、昨年は100万台弱となった。スーパーデータ(SuperData)によると、オキュラスゴー(Oculus Go)を除けば、主要なヘッドセットの売上は2018年の前半期において50%減少したということだ。その結果、広告主はこの技術への投資をためらうようになった。レゴ(Lego)の新興プラットフォーム担当統括者であるジェームズ・ポールター氏は、この技術は現時点で成果に結びつけるには高価すぎると言った。

「現在はまだ、VRデバイスを常に鞄に入れて持ち運べない」と、ポールター氏は言う。「オキュラスゴーの登場でこれは変わる可能性があるが、VRはいまのところ、町中で利用できるようなものではない。VRは、私たちにとって将来的には興味深い領域だが、大規模に利用するには、ほど遠い出来栄えだ。一方で、ARは、実際に製品を手に取らなくても試用してもらえる、もっとも没入できる方法のひとつだ」。

レゴもARアプリと無縁ではない。同社は、まだ数は少ないものの、すでにARの独自活用を開始している。最近は、この技術をノベルティに活用した。それはAppleデバイスのアプリとして開発され、現実世界をスキャンし、ARゲーム内に取り込めるものとなっている。ポールター氏は、ローンチに先立って、このアプリの詳細については語らなかったが、彼の率いるチームはARを活用して購買体験に変革を起こしたいと考えていると打ち明けてくれた。

Facebook参入のインパクト

特にソーシャルメディアにおいては、ほかの広告主もARがもたらす新たな効果を活用しはじめた。Facebookが、ARにおけるSnapchatの牙城を脅かしつつあるからだ。その結果、競争が起こり、ますます多くの広告主がこの技術の魅力に惹かれている。

マイケル・コースは6月、Facebook上でこの効果を利用。ニュースフィードにおいてARを使用する大きな試みの一環として、自社製サングラスの着用を仮想体験できるようにした。この試みは、数多くのブランドが現在、広告と取引をもっと緊密に結び付けたいと考えていることを端的に象徴している。ARならこれが可能だ。VRでは実現できない。

「ARを活用すれば、広告主はクリックスルーを販売につなげる、あるいは顧客を近隣の小売店へと誘導することができる。しかも、これらのすべてのデータを分析できる」と、AR広告とVR広告を販売する企業アドバートリィ(Advertly)の主任収益担当者、アダム・ヘミング氏は語る。「現在、VRの活用では、購入や申し込みなどの段階へ、顧客を導けるように格闘している最中だ」。

VR支持者もARへ鞍替え

VRの可能性を信じている支持者でさえ、ARの成長度合いの高さゆえ、VRに関するプランを棚上げしている状態だ。

パブリッシャーのUSAトゥデイ(USA Today)は、AppleやGoogleがこの技術を採用した昨夏頃まではVRを支持していた。そして、2017年の残りの期間をこの技術のテストに充て、3月にはフロリダトゥデイ(Florida Today)と提携して最初のARアプリである321ローンチ(321 Launch)を発表した。このアプリは今年フロリダ州のケープ・カナベラルで予定されている30件のロケット打ち上げを体験するものだ。

ユーザーが自分のスマートフォンの画面上で、飛行パターン予測などの情報を表示できるとともに、上空へのロケットの打ち上げを見られるようにするアプリに今後、スポンサーを立てることも計画されている。さらにUSAトゥデイは最近、ARに関するストーリーもアプリに盛り込んできた。同社は、すぐにARを大規模に利用してもらうというよりは、まずPRを行い、市場に投入し、ARに関する知識を持ってもらうことを狙っている。

「VRを諦めたわけではなく、今後も注視し続けるが、(現在)活用の機会に富むのはARだ」と、USAトゥデイ・ネットワークの新興技術ディレクターであるレイ・ソートー氏は語る。「VRを活用すれば、ユーザーをできる限り長くVR体験に留められるようなコンテンツの制作に集中できる。一方で、ARでは、顧客が喜ぶとても小さな体験の構築を積み重ね、その体験を友人と共有もできるようにすることを狙っている」。

それぞれの長所と短所

ARはまだ広く導入されているわけではないが、成長途上にあり、広告主はそれを知っている。ボストンコンサルティンググループ(Boston Consulting Group)によると、アメリカにおけるARのユーザー数は今年、2017年から36%増加し、5120万人となると予想している。しかし、ARは新しい媒体であり、レゴをはじめとする多くのブランドがここまで成長してきたことを嬉しく思っているが、指標や専門知識の普及など解決すべき問題はまだある。たとえば、Facebookは、広告主が各社のAR効果に関する基本的なパフォーマンスデータにアクセスできるようにするまでに7カ月を要した。

技術エージェンシーのイニッション(Inition)は昨年、VRへの投資から手を引いた。一方で、クリエイティブエージェンシーのラルフ(Ralph)によると、クライアントのうちの数社がVRを活用し、イベントにおいてウインターワンダーランドのような没入体験を提供していたという。VRは、広告主からすると、また、実際に多くの消費者にとって、少し没入の度合いが過ぎる場合もあり、つまるところ、誰もが利益を享受できるものとは言い難い。

「VRを利用する傾向が強いメディア主は、OOHベンダーだ。つまり、大抵の場合、この種の広告は体験的活動向きであり、その用途にはやはり制限があるということだ」と、スターコムワールドワイド(Starcom Worldwide)の戦略的イノベーション統括担当者であるエイミー・キーン氏は言う。「仮想現実の広告を継続的にたくさん制作して良い仕事をしたいと思っているが、それが常に実用的とはいえず、映画製作者やゲームデザイナーに任せるのが最適な場合もある。広告業界がこれを認め、従来のメディアにおける既存の広告制作のレベルを上げるのも悪くない」。

5Gの登場でVRの時代に

現在、VRはどこでも利用できると、実際よりも誇張されていることもある。だが、この技術が広告主にもたらすであろうと予想できるものに対する期待は、これからも続く。

「5Gが登場すれば、VRに変化が起こるだろう。なぜなら、5Gは4Gよりも100倍高速になり、それによってモバイルでも体験できるようになる可能性があるからだ」と、カラ・グローバル(Carat Global)のメディアの未来部担当統括者であるダン・キャラダイン氏は語る。「5Gは2020年までに発表される予定だ。そのときまでにVRヘッドセットはより安価に、より洗練され、より高速になるだろう」。

Seb Joseph(原文 / 訳:Conyac