eメールマーケティングの扱いは難しい。大量の受信メール群や迷惑メールフォルダのなかに紛れ込んでしまいがちだからだ。だが、そんないわゆる「ノイズ」のなかを抜ける方法を見いだしたブランドもおり、eメールキャンペーンを巧みに利用して、実店舗よりもオンラインでの買物に時間を割くようになった消費者とつながっている。
eメールマーケティングの扱いは、ひと筋縄ではいかない――永遠に止みそうもない大量の受信メール群と、つねに大量の迷惑メールフォルダのなかに紛れ込んでしまいかねないからだ。だが、そんないわゆる「ノイズ」のなかを抜ける方法を見いだしたブランドもおり、eメールキャンペーンを巧みに利用して、実店舗よりもオンラインでの買物に時間を割くようになった消費者とつながっている。
たとえば、子ども服ブランドのジョアラヴ(Joah Love)は2020年、コロナ禍によって実店舗での買物が壊滅同然の状態に追い込まれるなか、戦略をeメールマーケティングに切り替え、D2Cブランド化を加速させた。1年も経たないうちに、1万8000人だったeメールサブスクライバーが10万人を越え、それに伴いeメールを起因とする売上が増加したと、同ブランド創業者アイヨン・ストーバー氏は言う(氏は、具体的な数字は明かしていない)。
「我々のブランドにとって、消費者との直接的つながりがいかに重要か、そしてそのつながりの維持にeメールサブスクリプションがいかに有用か。今回ほど強く実感したことはない」とストーバー氏は言う。
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今後、極めて重要なチャネル
eメールマーケティングは以前から有用な戦略と見られていた。だが、Cookieを禁止し、それに代わるデータ追跡策も認めないとするGoogleの計画発表を受けて、ファーストパーティデータはいま、かつてないほど重要視されている。実際、ブランドマーケター、エージェンシー幹部、eメールマーケティング専門家の三者ともに、オンラインショッピングに移行する消費者の増加に伴い、eメールマーケティングの比重が確実に増していると指摘する。
「Googleが最近発表した広告の方針変更、そして消費者のプライバシーを巡るFacebook対Appleの言い争い――eメールのようなオプトインチャネルは今後、オンラインマーケティングの成功にとって極めて重要になるし、その点をリテーラーはいまこそ認識する必要がある」と、eコマースeメールマーケティング&SMSプラットフォーム、オムニセンド(Omnisend)のコンテンツ部門ディレクター、グレッグ・ザコウィツ氏は断言する。
現在、ジョアラヴは自動eメールキャンペーン、高コンバージョンウェルカムメッセージ、ユーザーの行動に基づくeメールのほか、サイト離脱メッセージも積極的に配信している。ウェブサイトを去ったオンラインショッパーにメールを送り、閲覧したアイテムへの再訪を促し、購入に繋げる戦略だ。同社広報によれば、サイト離脱メッセージは現在同社の自動eメールによる収益の35%を占めるという。
ストーバー氏によるとコロナ禍以前、ジョアラヴは創業から約13年間、小売業者と百貨店にフォーカスしていた。デジタルマーケティング予算はゼロに等しく、新製品の発売や大規模セール用に多少取っておく程度だった。だが2020年、同社はデジタルマーケティングへと大きく舵を切り、Facebookおよびインスタグラム、Google、そしてもちろんeメールでの有料広告に注力した。さらに最近は広告支出の多様化を図り、SnapchatとPinterest(ピンタレスト)でも有料広告を打ちはじめている(具体的な予算額は不明)。
ユーザーベースが大幅増
一方、クッキーブランドのレニー&ラリーズ(Lenny&Larry’s)の場合、eメールマーケティングには以前から戦略の一環として力を入れていたと、マーケティング&イノベーション部門VPメガン・クロスランド氏は言う。だが、コロナ禍で小売店とコンビニエンスストアが軒並み閉店するなか、同社は消費者とオンラインでつながるべく、自社ウェブサイトにShopifyプラットフォームを立ち上げた。
現在、レニー&ラリーズは顧客ごとにターゲットを絞ったeメールを2、3日おきに配信している。クロスランド氏はマーケティング予算、メディア支出額ともに明かさなかったが、eメール戦略にフォーカスして以来、ユーザーベースが5倍に増えたうえ、「ハイティーン層の開封率は安定している」と断言する。eメールソフトウェア企業のキャンペーン・モニター(Campaign Monitor)によれば、2020年の平均開封率は18%だった。
「フォーカスの対象をShopifyプラットフォームに切り替えて以来、オンラインショッパーの増加もあり、新プラットフォームに消費者を誘うべく、eメールマーケティングになおいっそう力を入れている」と、クロスランド氏は言う。
同社がeコマースプラットフォームを立ち上げた狙いは、オンラインショッパーベースの拡大にある。今年度の目標は100万人増であり、その達成に向けてeメールマーケティングを大いに活用していく予定だ。
「それには、ダイレクトマーケティングから始めるのが有効であり、eメールキャンペーンを通じて我々がすでに実施してきたことでもある」とクロスランド氏は語る。「したがって、今年から来年にかけて、引き続きこれまでの戦略を徹底していく」。
eメールマーケティングは双方向的
アフィリエイトマーケティングネットワーク、CJアフィリエイト(CJ Affiliate)のパブリッシャーデベロプメント部門VPケリー・マーケル氏によれば、eメールマーケティングへのフォーカスは今後も続くと予想する。コロナ禍によるロックダウンとオンライン時間の増加が続くなか、社会はすでにeコマース界に移住しており、eメールは「消費者との重要な、頻繁に実施できる、直接のコミュニケーション方策」だと指摘する。
「コロナ禍による重圧が増すなか、現在パフォーマンスベースのマーケティングへの関心が非常に高まっており、eメールは我々のパブリッシャーパートナーの多くが頼りにする中核的存在だ」と、マーケル氏は言う。
鍵を握るのは、消費者が本当に読みたいメッセージの配信だとマーケル氏は指摘するとともに、eメールマーケティングは双方向的だと言い添える。正しく行なえば、eメールマーケティングパブリッシャーは消費者にクーポンや最新情報という形で利益をもたらすことができる。ブランド側はファーストパーティデータ、ウェブサイトトラフィック、目標とする売上を獲得できるからだ。
「この明確な理由に基づく投資増、それに伴う顧客価値の上昇はつまり、チャネル内におけるeメール配信の効力が今後も継続されることを意味する」と、マーケル氏は指摘する。
[原文:As consumers migrate to e-commerce, marketers are increasing email marketing efforts]
KIMEKO MCCOY(翻訳:SI Japan、編集:分島 翔平)