この3カ月間で日本の投資大手ソフトバンクは、ヴオリ、ヴェスティエール・コレクティブ、LTK、ゼペットなどのファッション企業に数億ドルを投入した。
ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズのマネージングパートナー、リディア・ジェット氏によると、これらの投資にはふたつの共通する思想があるという。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。
この3カ月間で日本の投資大手ソフトバンクは、ヴオリ(Vuori)、ヴェスティエール・コレクティブ(Vestiaire Collective)、LTK、ゼペット (Zepeto)などのファッション企業に数億ドルを投入した。
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ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズ(The SoftBank Investment Advisers)のマネージングパートナー、リディア・ジェット氏によると、これらの投資にはふたつの共通する思想があるという。ひとつには、どれもそれぞれの分野で最先端をいく企業であること。17億ドル(約1931億8000万円)と評価されているヴェスティエール・コレクティブは世界最大のリセール企業のひとつであり、ゼペットは立ち上げからわずか3年で200万人のアクティブユーザーを抱える急成長中のメタバースファッション企業だ。そしてもうひとつは、どの企業にもすべて「多大な技術的優位性があること」だとジェット氏は語る。
ウォールストリートジャーナル(the Wall Street Journal)によると、これらの上場投資先の背後にいるソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズは、世界でも最大のテクノロジーベンチャーキャピタルファンドだという。ジェット氏は、ソフトバンクの投資先として昨年からアパレルブランドや企業が一般的になってきたのは偶然ではないと語る。ファッションでは多くの変化が起きつつあり、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SoftBank Vision Fund)はフォーカスエリアとなる産業における次の方向性に基づいて投資を行っている。前進するファッション業界にとって、eコマース、リセール、メタバース、クリエイターエコノミーは最大の成長カテゴリーになるとジェット氏は言う。ソフトバンクは、食品、交通、エネルギーなどの消費者カテゴリーにも投資を行っている。
有望なD2Cのeコマースブランドへの投資
ジェット氏によると、多くの場合、ソフトバンクが投資しているのはすでに一定の地位を確立している企業だ。
「我々はアーリーステージの投資家ではない」とジェット氏は述べた。「テーマを捉えようとして多数の賭けをすることはない。我々が興味を持っている分野ですでに定評のある企業を支援している。だが、このセクターにも追い風が吹いていると信じなくてはならない」。
たとえば、さまざまなリセールプラットフォームに小規模あるいは中規模の投資をするのではなく、ジェット氏いわく、ソフトバンクではその分野における適切なプレイヤーを見つけて、そこにかなり多くの資金を投入するほうを選んだ。その結果、9月にヴェスティエール・コレクティブに4億ドル(約454億1800万円)の投資ラウンドが行われることになった。その直後の10月には、D2Cアスレチックブランドのヴオリに4億ドルの投資ラウンドが行われ、ソフトバンクが有望なD2Cのeコマースブランドへの投資を希望していることを示している。
ジェット氏は、ヴオリとショッピング発見アプリのLTKは、パンデミックの最中の機敏さが印象的だったと指摘する。LTKは、11月にソフトバンクから3億ドル(約340億8000万円)の投資を受けている。
「パンデミックが始まったばかりの頃、業界は本当に動揺した」とジェット氏は振り返る。「他の企業よりずっと早く足掛かりを得た企業があった。そしてD2Cブランドがスケールを拡大するにあたり、ショッピファイ(Shopify)やLTKのような技術ツールが本当に重要になった」。
メタバースにも多くの可能性を見出す
メタバース企業のゼペットは、11月末に1億5000万ドル(約170億4000万円)と、もっとも少規模の投資を受けている。ジェット氏は、まだ初期段階とはいえ、メタバースには多くの可能性を見出していると語る。成功が証明されたあかつきには、ブランドが現実世界で生産を拡大する前にアイデアや美学をデジタルで試すようになり、メタバースが無駄な生産を削減することに役立つのではないかと想像しているという。
ジェット氏はソフトバンクでの自身の独特な立場のおかげで、世界のファッションで何が起こっているのかを俯瞰して見ることができるようになった。
「私はグローバリストだ」と彼女は言う。「このグローバルなグループの一員であることは、私にとって有利に働いている。我々は東京に拠点を置いているが、ヨーロッパ、米国、インドネシア、中国、韓国など、さまざまな場所で事業を展開している。あるカテゴリーにおける未来がどこにあるのか、私には見えている。普及率の点で、米国はほかの国に遅れを取っていることがよくある。それらのうち、デジタル決済やブロックチェーン、デジタルファッションなどの多くが米国ではまだ始まったばかりだが、時間とともに成長していくだろう」。
[原文:Managing partner Lydia Jett on SoftBank’s vision of fashion’s future]
DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)