ギャップ(Gap)やアバクロンビー(Abercrombie)など、有名なモールブランドをぜひTikTokで検索してみてほしい。その結果は、ティーンの若者たちが自分たちで購入したアバクロンビー商品を見せびらかしている動画や、ギャップのフーディーを着て流行りの音楽で踊っている動画であふれかえっているだろう。
こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
※モダンリテール[日本版]は、DIGIDAY[日本版]内のバーティカルサイトとなります
ギャップ(Gap)やアバクロンビー(Abercrombie)など、有名なモールブランドをぜひTikTokで検索してみてほしい。その結果は、ティーンの若者たちが自分たちで購入したアバクロンビー商品を見せびらかしている動画や、ギャップのフーディーを着て流行りの音楽で踊っている動画であふれかえっているだろう。
短尺動画を共有するアプリのTikTokで、#gaphoodieは現在930万回再生されている。一方で、#abercrombieはTikTokで1億9770万回、#abercrombiejeansは5370万回再生されている。再ブランディングの取り組みに加えて、ティーンがずっと前に忘れ去られたファッションの流行を2000年代から掘り出してくれているおかげだ。いくつかのモールを拠点とする従来型の小売業者は、新たに見つけたTikTokでの評判を利用して、これまで何年にもわたって失ってきた若者層の顧客による支持を取り戻そうとしている。
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エンプリファィ(Emplifi)のソリューションマーケティング担当ディレクターを務めるダニエリー・ネットー氏は次のように述べている。「TikTokでは、多くのものがルネッサンスを迎えており、ブランドもそれに含まれる。これは各ブランドが、自社ブランドがTikTokでどのようにメンションされているかに注目していれば、非常に大きな機会となる」。
アバクロンビー&フィッチ(Abercrombie & Fitch)のイメージは、米国消費者満足度指標によって米国でもっとも嫌われる小売業者として名指しされた2016年において大きく傷ついた。そして数年にわたり、ギャップとアバクロンビーはどちらも、パイパー・サンドラー(Piper Sandler)が半年ごとに行っている米国のティーンに対する調査で、高所得層のティーンが着なくなったブランドのトップ10に名を連ねていた。
「すばやく、楽しく、愉快に」
これらのブランドは、今度こそアプリでの評判を逃すことなく、バイラル化の機会をつかもうとしているようだ。たとえば昨年、ギャップの茶色のフーディーは、インフルエンサーのバーバラ・クリストファーソン氏が投稿したあとでバイラル化。その結果として商品への需要が急増し、このフーディーはリセールサイトに約300ドル(約3万4500円)で並びはじめた。その後、ギャップはクリストファーソン氏とのパートナーシップのもと、昨夏にこのフーディーの限定版を再リリースし、同氏によってTikTokでの勢いが維持された。
一方で、アバクロンビーの最近の人気は同社の巨大なロゴや、過度にセクシュアル化されたマーケティング戦略を破棄し、より落ち着いた色合いや包括的なメッセージングを採用したことによる、膨大な再ブランディング作業の結果でもある。
TikTokは、ジェネレーションZの消費者からの注目を望むブランドにとって主要なツールとなった。このプラットフォーム上でバイラル化した商品、たとえばケイト・スペード(Kate Spade)のハート型のバッグ、オーシャンスプレー(Ocean Spray)のクランラズベリー(Cran-Raspberry)飲料、エアリー(Aerie)のハイウエストのレギンスなどは、そのあとで売上が急増した。アパレル小売業者のエアロポステール(Aeropostale)は2016年に連邦倒産法第11章の適用を申請したが、昨年TikTokプラットフォームで同社の「タイニートップ」がバイラル化したあとで、アプリでのメンションが増加したことの恩恵を受けた。
ネットー氏は次のように述べている。「60秒という短い形式の動画なので、コンテンツクリエイター、すなわち企業は、優れた創造性を発揮し、このごく短い時間に強い印象を与えるストーリーを盛り込む必要がある。ほかのソーシャルプラットフォームでは、各ブランドがさまざまな方法で自社を位置づけ、各種のストーリーを語ることができる。しかしTikTokでは、すばやく、楽しく、多くの場合は愉快なものの必要がある」。
万能のソリューションではない
一方で、自社のマーチャンダイジングの決定、たとえばどのような商品をリリースするか、どのインフルエンサーと提携するか、どの商品を再販売するか、などを通知するためにこのアプリを使用する小売業者は増え続けている。
ジューシークチュール(Juicy Couture)は、かつて同社を象徴するトラックスーツが高級デパートで販売されていたが、2014年に店舗を閉店した。同社は2020年にウェブサイトを再開したとき、マーケティングの多くをTikTokとインスタグラムに集中させた。同アプリで#juicycoutureは2億2560万回再生されている。一方でホリスター(Hollister)は5月に、ソーシャルツーリスト(Social Tourist)という新しいブランドを立ち上げるため、デキシー・ダメリオ氏やチャーリー・ダメリオ氏などのTikTokのスターと提携した。
しかし、TikTokはすべての小売業者の抱える財務的な問題を解決できる万能のソリューションではない。最新の決算発表によれば、アバクロンビーの純売上は会計年度2020年よりも10%、2019年よりも5%増加したが、ギャップは依然として財務的に苦闘している。ギャップの第3四半期の純売上は2020年よりも1.3%、2019年よりも1.4%減少した。
Z世代の求めるものを理解する
ヒューズクリエイト(Fuse Create)のクリエイティブ戦略担当ディレクターであるジャッキー・コサック氏は、ジェネレーションZは高度に調整されたマーケティング方式をあまり好まないため、消費者が共感できるクリエイターとの協力が不可欠だと語る。結果として、多くのブランドは従来型のモデルとの協力を捨て、マイクロインフルエンサーと提携するようになってきている。「これらの人々はピアツーピアの交流や、それと似た形式の推薦やレビューを非常に重視している」。
ウォルマート(Walmart)などの小売業者はすでに、ピアツーピアの交流を活用して良い結果を得ている。同社は2020年後半に、マイケル・リー氏などのインフルエンサーを招いてライブストリームイベントを開始。このイベントは大きな成功を収め、予測の7倍も再生されたため、同社は3カ月後にアプリで別のライブストリームを開催することを決定した。同社は2020年の秋以降、自社の従業員をマイクロインフルエンサーに転換するプログラムも実験している。
先述のコサック氏は、ジェネレーションZが商品の製造方法の透明性、包括性、地球に優しいイニシアチブなどについて、自分たちの信念と一致したブランドを支持する傾向があるとも述べている。
「何が起きているか真に理解を」
各ブランドは、TikTokをどのように使用するかを理解するため多少の時間を要したと、調査および助言企業のジェネレーションZプラネット(Gen Z Planet)の創設者で、「ジェネレーションZのすべて:文化、仕事、コマースの不可避な変化への対応(Gen Z 360: Preparing for the Inevitable Change in Culture, Work, and Commerce)」の著者であるハナ・ベン・シャバット氏は語る。一部のブランドは、TikTokが自社のマーケティング戦略に不可欠な部分であると考えるようになってきたが、ほかのブランドは依然として対応が遅い。場合によっては、ブランドはすでに過ぎ去ったトレンドに飛びつくこともある。
同氏は次のように述べている。「ジェネレーションZに語りかけたいなら、彼らがいる場所にいる必要がある。したがって、TikTokのような場所にいる必要があるし、TikTokになんとなく投稿すればいいわけではない。重要なのは、そこにいて、何が起きているのかを真に理解することだ」。
ブランドが商品をバイラル化させる方法について、確実なプレイブックは今のところ存在しない。ベン・シャバット氏は「正直なところ、それは答えを得ることが難しい究極の質問だ」と述べている。
[原文:Mall-based brands like Gap and Abercrombie are having a ‘renaissance’ on TikTok]
Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:長田真)
Image via Gap