最近、ジェンダー規範などおかまいなしに、SNS上で何百万人もの美容マニアの注目を集める男性ブロガーが増えている。そんななか、化粧品ブランド「カバーガール(CoverGirl)」は、はじめて「カバーボーイ」を起用した。ニューヨークの高校生、ジェームズ・チャールズ氏だ。こうした流れが持続的なものなのか考察する。
先日、化粧品ブランド「カバーガール(CoverGirl)」は、はじめて「カバーボーイ」を起用した。ニューヨークに住む17歳の高校生、ジェームズ・チャールズ氏だ。アカウント開設以降、同氏のインスタグラムには64万3000人のフォロワーが殺到。大胆でクリエイティブなメイクが皆を魅了している。
チャールズ氏だけではない。ジェンダー規範などおかまいなしに、SNS上で何百万人もの美容マニアの注目を集める男性ブロガーが増えている。かつてマイスペース(MySpace)の寵児だったジェフリー・スター氏は、オリジナルの口紅を次々に発売している。メイクアップアーティストの マニー・グティエレス氏や パトリック・シモンダック氏も忠実なファン層を抱え、インスタグラムだけでもフォロワー数は合わせて520万人に上る。
メイク業界にはいつでも男性がいたが(1990年代にパイオニア的仕事をした、メイクアップアーティストのケビン・オーコイン氏やウェイン・ゴス氏など)、新世代の彼らは、オンラインで膨大なオーディエンスを集めている。
Advertisement
「メイクはみんなのもの」
英国のティーンエージャー、ルイス・ボール氏が美容にはじめて興味をもったのは14歳のときで、当時ハウツー動画は女子による女子のためのものばかりだった。まわりに自分のような男の子は少なかった。はじめてドラッグストアのブーツ(Boots)に入ったときは本当にびくびくしたという。
「ドギマギして色もろくに確かめられなかった。ユーチューバーが話していた商品で目に入ったものをとにかくひっつかんだ」と、同氏は言う。昨年、自分でメイク動画の制作をはじめ、その発言は徐々にオンラインで影響力をもつようになった。同氏によると、今年は美容男子にとって「最高の一年」で、それに伴いブランドとの提携も活気づいている。
「たくさんの才能ある素晴らしい人々がメイクアップスキルを認められ、インパクトのあるコラボでブランド提携を大成功に導いた。メイクは女子だけのものじゃなく、みんなのためのもの。そうブランドが気づいたんだと思う」と、同氏は言う。
チャンネル登録者8万6000人を抱える17歳のボール氏は、最近、芸能事務所のグリームフューチャーズ(Gleam Futures)と契約した。英国トップクラスのインフルエンサー、ゾーラやジム・チャップマンが所属する事務所だ。ボール氏はすでに、セフォラ(Sephora)などのブランドと、YouTube、インスタグラム、Snapchat(スナップチャット)上で多数のコラボレーションを行っている。
もうひとりのインフルエンサー、マーク・ザパンタ氏は、「美容業界での男性インフルエンサーの役割は急速に劇的に拡大していて、業界内での競争も激しくなっている。ソーシャルメディアで男子のメイク姿は珍しくて目立つので、みんなが注目するようになってきたんだと思う」と述べている。同氏は大学生で、ここ2年間動画の制作を続けている。
「賢い一手」
グリームフューチャーズの最高経営責任者(CEO)、ドミニク・スメイルズ氏は、ボール氏やサパンタ氏のような中性的な若いインフルエンサーは、競争の激しい美容業界で抜きんでる存在として注目に値すると話す。「彼らのオーディエンスは拡大中で、エンゲージメントも活発だ。(カバーガールの男子起用は)賢い一手で、業界中が大いに注目している。他のブランドも追随するだろう」。
Z世代と呼ばれるミレニアル後の世代に、美容業界の多くのマーケターが 注目し、予算をつぎ込んでいる。この層は、かつてないほどジェンダーに関する考え方が柔軟だ。81%が「昔と違ってジェンダーはその人を規定しない」と 回答し、「”they”などジェンダーを特定しない人称代名詞を(heやsheの代わりに)使う人を知っている」と回答した人は56%に上る。
カバーガールの発表以前にも、ロレアル・パリ(L’Oréal Paris)が英国ブロガー、プラスティックボーイ(The Plastic Boy)ことゲイリー・トンプソン氏を「トゥルーマッチ(TrueMatch)」ファンデーションの キャンペーンに起用している。ベネフィット(Benefit)、セフォラ、タルト(Tarte)、メイベリン(Maybelline)などのブランドも、ソーシャルメディア内外で、男性ブロガーと積極的に提携を行ってきた。
「多様性を擁護するのは、美容業界では目新しいことではない」と、オグルヴィ(Ogilvy)でLGBTに特化したブランドコンサルタント部門を率いるサム・ピアース氏は言う。
「現在、ブランドは10年前には想像もできなかったような形で、LGBTの人々をブランドアンバサダーとして起用している。論争がなくなったわけではないが、LGBTインフルエンサーが『建前』として起用されることは少なくなってきた」と、ピアース氏。
抵抗勢力
誰もがこの流行に乗っているわけではない。ファッションメディアのハバスラックスハブ(Havas LuxHub)でのグローバルマネージングディレクターを務めるタミー・スマルダース氏によると、コスメ企業は誰がもっとも進歩的で革新的かを競い合うゲームに囚われていて、それが称賛と広告枠を獲得できるか否かの指標になっているという。男性インフルエンサーに関しては、ジェームズ・チャールズ氏のようなスポークスパーソンが増えることはないというのがスマルダース氏の予測だ。美容用品の消費者が求めているのは真似できる人であり、「男性はその役割に適任ではない」と、同氏は言う。
「私の調査では、外見や身だしなみに関心をもつ男性は増えているけれども、メイクにまでは及んでいない。メイクをする男性は全体からすればごくわずかだ」
化粧品を買い、メイクをする男性が実際にどれだけいるのかは明らかではない。グルーミング用品市場の活況(と、男性の脱毛ブーム)は多くのデータが裏付けているが、メイクに挑戦する男性たちについては情報不足だ。しかし、男性向け商品は存在するし、MMUKなど男性向けブランドもある(韓国は この分野の先進国だ)。
ビューティーボーイ(The Beauty Boy)という名でも知られるジェイク=ジェイミー氏は、バイラルで広まった「#MakeupIsGenderless(メイクに性別はない)」キャンペーンを仕掛けたブロガーだ。同氏によると、女性だけをフィーチャーした広告のせいで、多くの男性は化粧品を使い、メイクをして公の場に出ることについて、肩身の狭い思いをしているという。
「いまは2016年で、我々はモダンな世界に生きている。メイクをしている男性は大勢いて、長年それを続けている。でも会員制秘密クラブのように、誰もが極秘事項扱いしているんだ!」
2016年最大のトレンドは、すっぴん風メイク(No Make-up Make-up)! @iconic.london(アイコニック・ロンドン)のクリームコンターキットを使ったら、顔に陰影と立体感が出て、しかもすごくナチュラルで使いやすい! もう最高! 超クリーミーで、超合わせやすくて、超ゴージャス! ブラシ:アイコニック フェイスセット スプレー:ボディショップ(Body Shop) ビタミンE保湿フェイスミスト パウダー:メイクアップフォーエバー(Makeup Forever )HDプレストパウダー 曲:フィフス・ハーモニー(Fifth Harmony) – ワーク・フロム・ホーム(Work From Home) #iconiclondon #creamcontour #iconicbae #bodyshop #makeupforever #mufe #hd #vitaminehydratingfacemist #hdpowder #bblogger #bbloggers #lblogger #lbloggers #youtube #youtuber #youtubers #brian_champagne @brian_champagne #mensmakeupmay #makeupforwomenandmen #beautyblogger #mua #makeupartist #tutorial #contourandhighlight #makeupisgenderless
ブームの持続性
ベネフィットコスメティックス(Benefit Cosmetics)は、マニー・ムアなど男性美容ブロガーと提携しているが、ソーシャルフォロワーの95%は女性だという。しかし、同社のデジタルマーケティング責任者、ミシェル・ストゥードリー氏は、男性の購入者層は公表されている以上に厚いかもしれないと考えている。女性が代わりに買ってあげている可能性もあるからだ。とりわけ、化粧下地「ポアフェッショナル(porefessional)」は男性に大人気のため、担当チームは(現在は女性のイラストの)パッケージのユニセックス化を検討中だという。
「ブログ業界が成長するにつれ、ブレイクするチャンスはますます多くの人々に開けてきている。カメラの前でキレイでさえあれば、ジェンダーは関係ない」と、ストゥードリー氏。
「我々が提携した男性インフルエンサーのなかには、非常に忠実で熱心な男女両方のファン層を抱える人物もいる」と、ベネフィットコスメティックスの米国マーケティング担当バイスプレジデント、ニコール・フルシ氏も言う。
@mannymua733(マニー・ムア)と@patrickstarr(パトリック・スター)に会おう! 化粧品見本市「ジェネレーション・ビューティー #GenBeauty」でのアンバサダーとのミート&グリートは、日曜午後1時~2時、ベネフィットのブースで開催。そして、列に並ばずに参加できるチャンス! あなたの写真と、マニーとパトリックに会いたい理由をSnapchatでアカウントBenefitBeautyに送るだけ! コンテストは明日の朝8時(西海岸標準時)まで! 参加規則:bit.ly/GenBeautyMG
とはいえ、男性用化粧品の市場は依然として規模が小さく、ムア氏、チャールズ氏、ボール氏のようなインフルエンサーをフォローしているのは、男性だけではない。彼らのファン層は、ジェンダースペクトラム全体に満遍なく存在する美容マニアたちだ。チャールズ氏が言うように、美容業界が本当に ジェンダーレス化へと勢いを増しているのか、それともブランドは結局これまでと同じ層、つまり若い女性を追い続けるのかという疑問は残る。
ブランドとインフルエンサーを仲介するエージェンシー、ウェイラー(Whalar)のニール・ウォーラー氏は、このトレンドに長持ちする口紅以上の持続性があるかどうかを判断するのは時期尚早だと考えている。「個人的には、息の長い本物のコラボレーションであってほしい。ジェームズ・チャールズ氏と(カバーガール)のコラボが半年続いたら、疑念は消える。同氏が降ろされたら、ただの色物だったということだろう」。
Grace Caffyn(原文 / 訳:ガリレオ)