オンデマンド倉庫を提供するD2Cブランドのメイクスペース(MakeSpace)は、小売の拡大を図るべく、体験型マーケティングの実験に力を入れている。その皮切りとなったニューヨーク市フラットアイアン地区の、メイクスペースストア(MakeSpace Store)は、2021年2月にオープンした。
オンデマンド倉庫を提供するD2Cブランドのメイクスペース(MakeSpace)は、小売の拡大を図るべく、体験型マーケティングの実験に力を入れている。その皮切りとなったニューヨーク市フラットアイアン地区の、メイクスペースストア(MakeSpace Store)は、2021年2月にオープンした。インスタ映えするこのポップアップストアは、梱包用品やシュレッダーや預けた荷物の引き取り予約、それに加えて瞑想のスペースを消費者に提供している。
これは、デジタル広告予算を増やす広告主が増え、ほかの企業も参入することでコストが押し上げられるなか、ますます競争が激化するデジタル広告エコシステムにおいて、確固たる地位を築くための動きだ。メイクスペースは実験的空間を利用して、体験型マーケティング復活の先駆者を目指している。
パンデミックがまだ続いていることを考えると、これは妙なタイミングだ。とはいえ、メイクスペースのマーケティング担当 シニアバイスプレジデントを務めるミリアム・ケンドール氏によると、この空間は、パンデミックの予防策を念頭に置いており、コロナ対策の安全指針(マスク着用やソーシャルディスタンスの徹底、そして1時間に来店客はひとりという予約制限)を踏まえて、設計されたという。
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「正気ではないと大勢から思われている」とケンドール氏は述べつつも、この判断は顧客の意見に基づいたものだと付け加えた。「なぜ小売活動が停止しているときに、実店舗をオープンするのか? 都市が沈滞しているときに、なぜニューヨーク市に進出するのか? 進出するとしても、なぜ世界的なパンデミックの時期に行うのか? さまざまな疑問や意見があるだろう。だが、我々の発想は異なる」。
さらなる拡大を予定
メイクスペースは、ニューヨーク市を拠点とするデザインスタジオ、HUXHUXデザイン(HUXHUX Design)と協力し、ネオングリーンでインスタ映えするポップアップ空間を作った。HUXHUXデザインの創設者、ジャスティン・フクソール氏によれば、この空間は「パンデミックの状況に対応するよう特別に設計された」という。
フクソール氏は、建物がパンデミックに対して安全であるための取り組みは、いまも継続中だと認めつつ「いくつかの基本的だが、効果的な設計技術を採用しており、それがこのプロジェクトの核となるコンセプトになっている」と述べる。
また、メイクスペースストアのスタートまでには約6週間かかったが、好意的な反応を得ることができた。そのため、同社はほかの主要市場でも、より大きな店舗を検討しているという。
先行した取り組み
メイクスペースは、当初からこのポップストアをインスタ映えするスポットにしようと考えてはいなかったという。だが、ロックダウンの実施とリモートワークの普及により、オンラインショッピングを利用する消費者が増加。これを受け世のマーケターたちは、消費者たちを追ってメイクスペースのデジタル広告エコシステムの柱でもある、Google検索のようなプラットフォームに広告費を投下しはじめた。すると競争が激しくなり、メイクスペースのマーケティングコスト費用もかさむようになってきた。
「それでポップアップストアの戦略が変わったわけではない。しかし競合他社や、同じ広告スペースを求めて競争している他者を、より意識するようになった」とケンドール氏は語る。
米DIGIDAYによるレポートによると、2020年の3月頃はイベントの中止や延期が多くなり、体験型マーケティングを実施する企業に、壊滅的なダメージを与えた。しかし、新型コロナワクチンの接種者数が増え、より多くの消費者が外出しはじめようとするなか、メイクスペースは先行しているのかもしれない。
人々はリアルな体験を求めている
レナ・ピーターセン氏は、2021年のオンライン開催のコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)など、イベントをオンライン化した経験があるコンサルティング企業、メディアリンク(MediaLink)で、最高ブランド責任者を務めている。同氏によると、メイクスペースの動きは道理にかなっており、今後予想される体験型マーケティングの復権の一部になると予測している。
「人々はマスクを付けていても、実際に何かに触れ感じたがっている」とピーターセン氏はいう。「少なくとも私は、リアルな体験を放棄したいとは思わない」。
ピーターセン氏によると、体験型マーケティングの人気は、パンデミック前においては上昇傾向にあったという。また同氏はこの人気について、2021年第4四半期までに飛躍的な増加が見込まれるワクチン接種により、再び盛り上がるだろうと予想している。
コロナ後の見通し
パンデミック期間中には、デジタルアクティべーションを取り入れた体験型マーケティングを推進するブランドが見られた。2020年秋、ウォルマート(Walmart)は、会員制プログラムのWalmart+(ウォルマートプラス)の売り込みのため、体験型マーケティングに広告費を投下。また、2021年のスーパーボウルでは、ベライゾン(Verizon)が、フォートナイト(Fortnite)とデジタルアクティべーションに乗り出した。ピーターセン氏によると、新型コロナウイルス感染症が収束するにつれ、テクノロジーとバーチャル体験が、対面イベントに組み込まれることを期待しているという。
「興味をそそるアクティビティがなければ、協力なイベントにはならない」と、ピーターセン氏は述べる。「体験型マーケティングは、その設計が重要だ」。
KIMEKO MCCOY(翻訳:矢倉美登里/ガリレオ、編集:村上莞)