カリフォルニアのサンディエゴコンベンションセンターで9月27日、TwitchCon(ツイッチコン)が開催された。TwitchConといえば毎年恒例のゲームコンベンションだが、今年は思いもよらぬブランドが展示を行った。それがマックコスメティックス(MAC Cosmetics)だ。
カリフォルニアのサンディエゴコンベンションセンターで9月27日、TwitchCon(ツイッチコン)が開催された。TwitchConといえば毎年恒例のゲームコンベンションだが、今年は思いもよらぬブランドが展示を行った。それがマックコスメティックス(MAC Cosmetics)だ。
エナジードリンクやインディーのゲームスタジオといった馴染みのスポンサーに混じって、マックコスメティックスは展示ホールでおよそ幅6m奥行き9mのブースで展示を行った。TwitchConはAmazonが有する生配信動画プラットフォームのTwitch(ツイッチ)が主催するイベントで、2015年から毎年3日間開催されている。昨年の参加者は5万人を超える大規模イベントだ。ガートナーL2(Gartner L2)によればTwitch自体も毎日1500万人が訪れており、ユーザーあたりの平均滞在時間は95分となっている。マックコスメティックスのブースは3日間を通して開かれ、メイクアップのサービスやプレゼントが提供された。また、28日には同ブランドのメイクアップアーティストリーディレクターのロメロ・ジェニングス氏がメイクアップ講座の「ストリーム・レディ・メイクアップ(Stream Ready Makeup)」が開催された。さらにトップ女性ゲーマーであるイメイン・エニース氏(ユーザー名:Pokimane[ポキメイン])とクリステン・ミカエラ氏(ユーザー名:KittyPlays[キティプレイズ])の2人を迎えて交流会が開かれ、両氏はブースでゲームの生配信も行った。
ゲームに接近するブランド
マックコスメティックスはTwitchConで展示を行った初の美容ブランドだ。現在、ほかにもさまざまなファッションブランドや美容ブランドがゲーム業界に接近している。
Advertisement
マックコスメティックスのグローバルコミュニケーションおよびコンテンツ担当バイスプレジデントのディードリック・コーンダース氏は「消費者の行動と、ゲームに対する受け止められ方も変わった」と語る。「ゲーム業界は成長を続けており、女性ゲーマーも表に出る機会が増えている。ゲームはもはや家でひとり楽しむだけのものではなく、ライフスタイルとなった。この変化に大きく寄与したのが、世界中のユーザーが行っている生配信だ」。
ファッション小売ブランドのホリスター(Hollister)やシェービングブランドのジレット(Gillette)といった大手ブランドも、今年Twitchにマーケティング予算を割いている。マックコスメティックスはTwitchのインフルエンサーに商品をプレゼントする取り組みを続けてきた。Twitchで5万5600人のフォロワーを有するユーザー名、Seum(シウム)もそのひとりだ。それぞれ340万人と110万人のフォロワーを有するPokimaneとKittyPlaysもまた、同ブランドから商品を受け取っている。コーンダース氏によれば、マックコスメティックスは2016年からTwitchに注目していたという。そして、いまはTwitchのオーディエンスからどう受け止められているかを見定めようとしており、ゲーム分野のインフルエンサーに使用している化粧品を訊ねている。2月にはゲームの「ストライク・オブ・キングス(Strike of Kings)」と商品コラボを行っており、同ゲームの女性キャラクターをイメージした5種類のリップスティックをアジアで発売。同ブランドのアジア圏のECサイトによれば、リップスティックは1週間と経たず売り切れたようだ。また同社によれば、アリババ(阿里巴巴)傘下のTモール(天猫)では1時間以内に完売したという。
主目的は「試して学ぶ」こと
マックコスメティックスのシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのフィリッペ・ピナテル氏は「マックコスメティックスはただの美容ブランドではなく、あらゆる点でカルチャーブランドなのだ」と語る。「Twitchはコミュニティにおける自己表現と個性を奨励している。当社にとっても参加する意義は大きい」。
コーンダース氏は、TwitchCon参加の主目的は売上を伸ばすことではなく、TwitchConの取り組みと同じく「試して学ぶ」ことにあると明かす。成功の尺度は、#macattwitchconのハッシュタグや送られてくるメールの数、参加者とメイクアップアーティストの会話内容などで判断される。マックコスメティックスは、メイクアップを受けた訪問者にオンライン販売の2割引クーポンを提供した。またインフルエンサーにも、フォロワーと共有できるクーポンコードを渡している。
コーンダース氏は男女の両方にリーチしようとしているため、性別による断絶の心配もないと語る。インフルエンサーマーケティングエージェンシーのメディアキックス(Mediakix)によると、Twitchユーザーの81%は男性で55%が18歳から49歳となっている。一方マーケティングプラットフォームのヒットワイズ(Hitwise)によればマックコスメティックスのカスタマーはほぼ女性で、35歳から44歳だ。
「参加は1回限りではない」
ブランドは現在、知名度とカスタマーエンゲージメントの向上のためにユニークな方法を模索している。マックコスメティックスとTwitchやTikTok(ティックトック)などの実験的プラットフォームとの提携(TikTokとはニューヨーク・コレクションではじめて提携)も、こうした流れのなかで捉えることができる。コーンダース氏は、美容分野では新しいブランドが雨後の筍のように登場しており、いずれもインスタグラム(Instagram)を積極的に活用していると指摘する。同氏は既存のブランドはそれゆえより積極的な努力をしなければならないとしており、既存や新規のカスタマーの声に耳を傾け、彼らが何に関心があるか、何に時間を費やしているか、どうすればブランドが参加できるかを考え続けなければならないと語る。TwitchConのような大規模イベントやTikTokとの実験的キャンペーン、年間を通じてさまざまな小規模イベントでメイクアップアーティストを配置するといった取り組みが同ブランドのマーケティング予算の25%を占めている。
同氏はTwitchConで「今回の参加は1回限りではない。長期的な視野で取り組んでいきたい」と語った。
EMMA SANDLER(原文 / 訳:SI Japan)